なぜオタク専用婚活が必要なのか 勘違いされやすいオタクの恋愛観

「オタクはモテないから、多くの男性は独身で一生を終える」なんてことが、まことしやかに囁かれていますが、そんなオタクの皆さんに画期的なはずのサービスが誕生し、話題になっています。
同人誌などの漫画関連ショップを展開する「とらのあな」が、オタク向けの婚活に特化した結婚相談サービス「とら婚」を立ち上げたのです。
確かにオタクの心をわかっている会社が運営する婚活サービスなら、オタクの皆さんも安心して身を任せられそうです。しかし、中の人のつぶやきを見ていくと、どうも不穏な空気が漂っているのです。


オタク同士の婚活に必要なことは、オタ趣味以外の「付加価値」なのか?


物議を醸したのは、とら婚の公式Twitterが発した。婚活を始めるオタク向けへのアドバイスです。以下の3パターンのオタクがいた場合、婚活市場で選ばれるのは2と3であると 、アカウントは発します。

1:オタク趣味しかない人
2:オタク趣味を持つけど他にもいろいろやっている人
3:オタク趣味を持つけどなんらかのスペックが高い人


そのため、オタク趣味以外のことやステイタスなど、自分自身に「付加価値」をつけ、広く目をむけることが大切と、ツイッター上ではアドバイスが展開されます。
これに反発したのが、多くの独身オタクたち。
「それなら最初から『オタク婚活』に頼らなくてもよい」など、もっともな意見が飛び出します。
とら婚のアカウントは、「我々は趣味を否定しませんが、お客様の成婚を考えて、時に胸に突き刺さるような言葉を投げることもあります」とコメントしていますが、これでは両者に見えている景色が一致するとは思えません。

これを見て、元にわかオタクであった筆者は思いました。「付加価値をつけることも大切だけど、そもそもオタクの心理を理解した人がおこなう婚活サービスは、非常に有効だ」ということを。
なぜなら、オタク以外の人からすると、オタクへの理解というのは、非常に偏りがあり、それにより付加価値をつけようが、オタク同士が出会う場を設けようが、ミスマッチが起きてしまうからです。
今回はオタク趣味以外の「付加価値の有無」についての指摘もさることながら、もっと前段階の話として、一般的に勘違いされがちなオタクの気質と、それによりおこるミスマッチについて考えます。



「オタク」を誤ったまま理解し婚活をする危険性


オタクカルチャーに対する偏見と無知は溢れています。極端な例をあげると、「アニメ好き」「アイドル好き」と公言する人を全員オタクに認定する人がいるくらいです。これが一般の結婚相談所のスタッフの考えだったら。はたまた、あなたに異性を紹介しようとする人の価値観だったら、ゾッとしませんか。そこで他にも、一般人が勘違いしがちな「オタクの考えや生態」をご紹介していきます。

1:オタクはみんな趣味をわかってほしいと思っている
オタクといっても性格が異なるように、いろんなタイプの方がいます。社交性のあるオタ、狭い人間関係を大事にし、生活のすべてを趣味に捧げるタイプなど、求める幅は異なります。

しかし一般人からすると、意外とこの辺は理解しておらず、「趣味が大事ってことは、その良さがわかる彼女がほしいんでしょ?」と乱暴に片付ける人も。
実際問題、オタの中には、パートナーが趣味を放置してくれればOKの人や、にわか知識でパートナーが無理に関わってくることを良しとしないこだわりのあるオタクもいます。
これら求める共感度を理解せずマッチングさせようとすると、必ずといっていいほどミスマッチが起きるので注意が必要です。

2:オタク同士は会えばみんな上手くいくと思っている
これもある種の偏見だと思うのですが、たとえば同じサッカー好きだとしても、価値観が違えば仲良くなりにくいのと一緒で、オタク同士も、趣味や好きな作品が同じでも、関わり方が異なるとやはりうまくいかない場合が多くあります。
以前筆者が遭遇した例だと、女性の方はBL(ボーイズラブの略)などの趣味をひっそり楽しむ隠れオタク。男性はアニメオタで、Twitterの本アカウントでもオタクを公言する、比較的社交的なオタクでした。

2人をある人が出会わせたところ、アニメなどの共通点はないわけではないものの、どうも話がかみ合わない。
そもそも「BL」と「アニメ」という、同じように見えて全く異なるものをぶつけ合ったのも悪いのですが、彼女としては男性にBLを理解してもらい、一緒に語るのは全く望んでいなかったのだとか。
ほどなくして、この2人のご縁は自然消滅したわけですが、2人をくっつけようとした人は「うまくいくと思ったんだけどな」とボヤいていました。うーん、私には、上手くいくようには見えなかったぞ。

3:「オタクは趣味さえあれば良いんでしょ?」と思っている
何度も言いますが、オタクといっても、趣味との関わり方は千差万別です。そもそも凝り性だからオタクになっているという性格的な性質を無視している人は、オタクではない人の中には非常に多い。

その最たる言い分が「オタクの人は趣味が命なんでしょ? 趣味さえあればいいんでしょ?」とハナから決めつけてかかることです。
確かに、趣味のためなら極貧生活もOKという鉄オタも筆者の周りにはいましたが、趣味と同時に愛する猫との時間や美味しいご飯は欠かせないというゲーオタもいましたから、一概にくくるのは違います。

取り急ぎオタクではない人が勘違いしがちな3つの思い込みを解説しましたが、オタクに特化した婚活というのは、これらのオタク同士で起こる細かいミスマッチを理解し、対応できるものであると考えます。
それであれば、一般の結婚相談所と同じような価値観を語っていても、きっと存在意義があると思うのです。


オタクが婚活を成功させるために振り返っておくべきこと


オタクの婚活というと、「趣味を1番に~」というフレーズですべて完結されがちですが、個人的には結婚相談所を利用するにしても、“オタクとしてのマインド"の振り返りをしておくことは、とても大切だと考えます。
では、婚活で理解しておきたいオタクとしてのマインドを、以下にご紹介します。

・自分は趣味を異性に共感されたいタイプか、それとも放置してほしいのか
・相手の趣味にどの程度あわせる気があるか?
※「休日の興味のない場所への外出デートにちゃんと対応できるのか」など、具体的に金銭や時間なイメージを持つとベター
・家族やパートナーを持ったとき、どの程度の金銭や時間的な比重を割けるか
※たとえばパートナーに「将来を考えて貯蓄を増やそう」と言われた時に、それなら結婚はいらないと思うかなど

少なくとも、上記3点については、とても大切なことなので、自己理解をしておくことが必要です。その結果、「彼女はオタクじゃなくてもいいけど、趣味に口出ししない人」など、新しい選択肢が生まれることもあります。
まとめると、しっかり考えて動く&協力を得るならしっかり理解してもらわないと、こだわりが強いぶん婚活は難しいでしょう。
でもせっかく関心が向いた婚活ですから、個人的にはその凝り性な性格を活かして、ぜひ婚活を楽しみながら制覇していただきたいものです。
(おおしまりえ)