その意外すぎるキャスティングに日本中が「マジかよ!」と叫んだことだろう。
映画『ドラえもん』の主題歌&『3年B組金八先生』が好き過ぎて、当然、武田鉄矢も大好きになっているボクですら、「どう考えてもムチャがあるだろ!」と思ったくらいなので……。
そんなこんなで遂にはじまった武田鉄矢の『水戸黄門』(BS-TBS・水曜7:00〜)はどうだったのか!?

鉄矢版水戸黄門の特徴は「性格の悪さ」!
多くの日本人の脳に、確固たるイメージが刻まれているドラマ『水戸黄門』。
地味な色合いの衣装にヒゲなしという、異色の黄門像を目指して見事にコケた石坂浩二版『水戸黄門』という例はあるものの、基本的には同じ衣装に、同じキャラクター。ストーリー展開もだいたいお約束通り……というのが『水戸黄門』だ。
一方、どんな役を演じていても強烈な「鉄矢っぽさ」がにじみ出てしまう武田鉄矢。その武田鉄矢が水戸黄門を演じるとなったら、どうなってしまうのか!?
結果的には、従来のイメージから大きくはみ出すことはなく、とはいえ、鉄矢ファンの期待にも応える程度の鉄矢エキスもまぶしてくれているという、なかなかいいバランスで新・黄門像を作りあげていた。
事前の番宣番組で鉄矢は、水戸黄門の役作りについて「たい焼きのようなもの」と語っていた。外見が決して「鯛」以外の魚に見えてはいけないので、中身の餡で勝負するということだ。
今回の『水戸黄門』において、餡となっているのが「性格の悪さ」。
従来の水戸黄門のイメージといえば、優しい人格者のおじいさん……といったところだろう。鉄矢の黄門様も、人格者ではあるのだろうけれど、どうにもこうにも面倒くささ、性格の悪さがにじみ出ているのだ。
第1話では、副将軍を引退し、念願の「大日本史」の編纂を進めながらも、趣味で寺子屋を開いたり(先生!)、農作業をやったりと気ままな生活を送っている様子が描かれていたが、そんな面倒くさいジジイの思いつきに毎度付き合わされている助さん(財木琢磨)は不満がたまっているようで、ちょいちょい黄門様のことを「あのじいさん」呼ばわりしていた。
前の副将軍なのにイマイチ尊敬されていない、「イヤなジジイ感」こそが鉄矢版水戸黄門の特徴なのだ。
従来だと「カッカッカッ……」みたいなカラッとした高笑いをしていたのに、鉄矢版では「フハッフハッハッハッ」と、ちょいと湿った気持ち悪い笑い声になっているあたりも性格の悪さを物語っている。
金八先生とその息子の再会に涙
とはいえ、全般的にはスタンダードな『水戸黄門』を踏襲しており、従来のファンもそれほど違和感を持たずに見ることができるだろう。
逆に鉄矢の熱狂的なファンにとっては、鉄矢の「アク」が少なくて若干物足りなさを感じてしまうくらいなのだが、その鉄矢不足を補ってくれるのが、『3年B組金八先生』からのゲストだ。
まずは水戸藩の農民役でチョロッと出演していたのが、金八のパート2で放送室に立てこもった生徒・加藤優を演じていた直江喜一だ。
そして、シリーズ全体のキーとなってくる重要な役を演じたのが、金八シリーズで金八の息子・幸作を演じた佐野泰臣。パート6で小児ガンになって入院していたあの子ね!
この幸作……じゃなかった、佐野泰臣が演じていたのが八戸藩士の大川新太郎。
江戸で将軍に仕えている八戸藩主・南部直政(石黒英雄)に代わって藩政を任されている城代家老・梶川修理(石橋蓮司)の悪政を直政に知らせるために江戸に向かっていたのだが、その途中で忍者に襲われて重傷を負い死んでしまう。
金八……じゃなかった、黄門様は新太郎の遺志を継いで、梶川修理を暴くために八戸に向かって旅立つ決意をする。
あの金八が、死んでいった幸作のために旅に出るという……金八ファンだったら胸が熱くならずにはいられないシーンだった。
今後もちょいちょい金八の生徒役がゲスト出演してくれると、金八ファン的には嬉しいのだが。
お色気要員が誰なのかも気になる!
金八要素抜きにしても、色々と小ネタが仕込まれていて楽しく見られるドラマだった。
泊まった宿で腰に下げた印籠を見られて大騒ぎになってしまい、以降は格さん(荒井敦史)に預けることにしていたのだが、悪者との格闘中に、逆にその印籠の威力を利用しようと思いつく……という、『水戸黄門』におけるお約束シーンの誕生が描かれていたり。
「日本で最初にラーメンを食べたのは水戸黄門」というトリビア(史実かどうかは微妙らしいが)を再現したような、黄門一行がラーメンを食べるシーンがあったり。
そして『水戸黄門』といえば外せない、由美かおる、雛形あきこが演じてきた「お色気要員」がまだ登場していないのも気になるところだ。
ここは金八つながりで、杉田かおるか三原じゅん子、『昼顔』でセクシー演技を開眼した上戸彩あたりでどうだろう!?
(イラストと文/北村ヂン)
『水戸黄門』キャスト、スタッフ、主題歌
武田鉄矢 財木琢磨 荒井敦史 津田寛治 袴田吉彦
長谷川純 篠田麻里子 中村嘉葎雄
脚本:尾西兼一 ほか
監督:矢田清巳 ほか
音楽:木下忠司
主題歌:「あゝ人生に涙あり」(作詞:山上路夫/作曲:木下忠司/歌:財木琢磨・荒井敦史)
製作:C.A.L