低所得世帯の子供たちが塾代に使える“スタディクーポン”のクラウドファンディングが、支援総額660万円以上を集めている。親の所得格差から起こる子供たちの教育格差(塾代格差)を是正するためのプロジェクトに対して、さまざまな声が寄せられている。
支援総額660万円、パトロン数350人達成
公益社団法人チャンス・フォー・チルドレンやNPO法人キズキによって運営されるプロジェクト「スタディクーポン・イニシアティブ」は、親の所得格差が子供たちの塾代にかけられる費用に直結し、結果として将来の可能性にも影響を与えてしまう“不平等の連鎖”を問題視している。そこで子供たちの教育格差を是正すべく考案されたスタディクーポンとは、寄付金を元手にした、低所得世帯の子供たちが自ら選んだ学習塾に通うためのクーポンだ。賛同教育事業者、つまりスタディクーポンを利用できる場として、Z会や家庭教師のトライ、栄光ゼミナール、ベネッセといった教育サービスが名を連ねている。
10月12日にクラウドファンディングサイト「CAMPFIRE(キャンプファイヤー)」で支援募集ページが立ち上げられ、10月26日時点で、支援総額660万円、パトロン数350人を達成。目標金額は1,000万円に設定されているため、まだこれからのところではあるが、立ち上げから2週間ほどでこの額を集めてしまうとは、それだけ子供たちの教育格差、不平等の連鎖というテーマに考えるところのある人が多かったということだろう。なお、スタディクーポンは第1弾プロジェクトとして、渋谷区と連携して実施することが発表されている。
“塾前提”の受験システムがそもそも問題?
数々のメディアにも取り上げられて話題になっている同プロジェクト。ネット上では、「素敵な取り組み」とビジョンに賛同する声が続々と上がっている一方、塾を前提とした受験システムに疑問を投げかける声も上がっている。スタディクーポンでは、受験に全力で取り組みたいのに経済的な問題で塾に通えない子供を問題視しているが、そもそも学校に加え塾にも通わないといけないような受験の構造自体を解決すべきではないかというのだ。
確かに難関校を受けるとなると、塾に行かず学校の授業だけで合格するのは、なかなか難しいことだろう。「それでも学校の勉強だけで合格している人もいるのだから」という反論もあるだろうが、「スタディクーポン・イニシアティブ」が問題視しているのは、裕福な家庭の子供は塾に行ける一方、貧しい家庭の子供は“学校の授業だけ”という不利な条件を強いられる構造なのだ。そのため渋谷区が連携していることを、「塾前提の受験システムを区が認めた」というふうに受け取り、違和感を覚える人々は多いらしい。
また、「スタディクーポン・イニシアティブ」が問題視する“不平等の連鎖”や“教育格差”には、「勉強なんて必要ない」という親の価値観も関わっているのではないかという指摘もある。
いくつか課題はあるものの、スタディクーポンの試みが意義深いものであることは疑いようもない。クラウドファンディングが盛り上がり、どんどんプロジェクトが広がっていくことに期待したい。
(HEW)