
人懐っこい笑顔と“おバカ”なキャラクターで人気のタレントとして、また、確実に目を引く大きな存在感を示す役者として活躍を続ける上地雄輔。多方面で才能を開花させる彼は音楽においても魅力を発揮。
そして、多忙な中にありながら、毎年大規模なツアーも開催。9月に行なった大宮公演で自身のツアーとして200公演を達成した。足掛け8年弱で到達した200本のライブを振り返り、遊助は自身のブログにこう記している。
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昔への自分への、やったぞ!って、ちょっとした誇りと。
きっと知らない所で俺のフォローやカバーをしてくれたり、泣かせてしまったみんなへのゴメンねと。
楽しかったより苦しかったが多いリハや想いと。
それを支えてくれた仲間やクルーの声と。
ここまで信じて付いてきてくれてありがとうと。
まだまだここは通過点でガンガン行くからまたいつでもかかってこんかい!と。
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この文章やテレビの向こう側からも伝わってくるように、遊助は人一倍サービス精神が旺盛で、人一倍、人を気遣うことができ、人一倍、おそらく人が好きなのだと思う。

2017年の遊助のツアーのテーマは「星」。全21公演を終えて、東京国際フォーラム ホールAで追加公演が行われた。星のごとく黄色いライトが筋を描いて流れる宇宙を思わせるセットに「今から始まるのは、星の世界での出来事」というアナウンスが響く。さあ、いざ遊助が誘う星の世界へ――。
無重力空間を浮遊するようなステップでパフォーマーたちがステージに歩を進めると、中央にレーザー光線に囲まれた遊助が登場。そのレーザー光線の一つが横一線に伸び、それを遊助が手でつかみ、『スター・ウォーズ』に登場するライトセーバーのように操る。背後には、地球が回転する映像と、この上なくワクワクするオープニングだ。
オープニングナンバー「KNIGHT」に続いて、ここでいきなりのスペシャルなサプライズ! ツアーファイナルの大阪公演でのみ披露された「ルーレット」のイントロが東京国際フォーラムに鳴り響くと、場内は大きな悲鳴に包まれた。
「スペシャルな夜にようこそ!」(遊助)
Mummy-D(RHYMESTER)を遊turing(客演の“フィーチャリング”を遊助が自らの名前をもじって命名)したこの曲はcrew(遊助のファンの呼称)に大人気のナンバーだ。ちなみに大阪公演のあと、遊助にこの曲を聴けた喜びを伝えると、「『ルーレット』が入ると、やっぱり“締まる”よね」と言っていたことを付け加えておきたい。
続く「V」でステージを右へ左へと疾走すると、crew一人ひとりを見るように客席に目をくばる。MCでは「今日、世界一楽しみましょう。自分で作った言葉、一曲一曲、大事に皆さんに伝えていきますので。“一対みんな”じゃなくて、“一対一”だと思ってやりますので、最後までよろしくお願いします」とも。“遊助の歌”が彼の元を離れて、聴く人“それぞれの歌”になっていることを理解しての優しい言葉だ。
次のスペシャルは6曲目「Brother」。深い友情関係にあるSHOCK EYE(湘南乃風)を客演に迎えたこの曲は二人で呑みながら作ったのだという。<肩 組み><拳 合わせた>という歌詞を再現するかのように熱いパフォーマンスを展開する二人に大歓声が贈られた。
星になったおじいちゃんの手作りのブリキの人形をモチーフに繰り広げた“芝居”のコーナーでは、「ブリキ」と「流れ」の2曲をパフォーマンス。おじいちゃんの形見として遊助(演じる人物)の傍らで人生を共にしてきた人形が突然しゃべり出し、遊助と絶妙なやり取りを見せる。
「檸檬」では「頑張っている人」をテーマに事前に集められたcrewやその周辺の人たちの“頑張っている”写真がスクリーンに映し出された。「みんなが主役」だと遊助が最初のMCで触れた通り、人の数だけそれぞれの人生があり、それぞれの人生の主役は、この会場にいる一人ひとりだ。
“DANCE SHOW CASE”も毎ツアーの見どころの一つ。遊助が初めてツアーを行った2010年から、一つずつ積み重ね、一人ひとりと関係を築き上げて作ってきた“チーム”の精鋭たち。遊助が心から信頼し、遊助を心から慕うパフォーマーたちによるダンスタイム、今年は先の“ブリキの人形”を受けて、掃除道具を手にユーモラスなロボットダンスを披露した。
初ツアーから専属DJとして参加しているDJ N.O.B.B(餓鬼レンジャー)は、これまでに多数の楽曲を遊助と制作し、“カップルか!”と突っ込みたくなるほど相思相愛(N.O.B.Bの片思い?/笑)の相棒。遊助にいじられ続け、すっかり“笑わそうとしているわけじゃないのに、なんだかメチャクチャ笑いを取っちゃう人”、もしくは“真面目にやってるのに、なんかメチャクチャ面白い人”としてcrewには知れ渡っているが、今回のツアーでは彼のミュージシャンとしての顔を大々的にフィーチャー、DJタイムが設けられた。N.O.B.B本来の顔を見せたこのパートだったが、どうしても、昨年のツアーで着物姿で扮した“乙姫”の姿が脳裏に浮かんでしまうのは、それほど毎ツアー、強烈な存在感を示しているということだろう(笑)。
そして、毎年、遊助がハードな特訓を経てツアーで初披露するパフォーマンスも。今年、遊助がチャレンジしたのは“ドラム”! ツアー前のインタビューで、「俺がやっているところをまだ誰も見たことがないもの。ん~……そこから!? みたいなやつかなぁ。
ここからは壮絶な体力勝負のラストパートへ。「Hop Step Japan」「Yellow Bus」「ミツバチ」、そして銀テープが勢いよく発射された「チャンピオン」とノンストップで畳みかけ、遊助もパフォーマーもcrewもお互いの持てるすべての力を出し切るかのように全力で挑み、楽しみ、「かかってこいや!」(crew)、「いけるの!?」(遊助)と高めあい、すべてが終了した時、この上ない幸せな気持ちと達成感、そして一体感で会場が満たされていた。
本編ラストは「History V」。歌に入る前にcrewに届けられたのは、遊助の嘘偽りのない、心からの言葉。
「来年で10周年目を迎えることができるんですけども、羞恥心から始まって、あのときはまだ3人組で、元々もっとバカだったんですー(笑)。バカとかアホとかみんなから指差されてきたのですが、そんな男を支えてくれて、『楽しければいいじゃん』『一生懸命汗をかければいいじゃん』って作り上げたものを毎年楽しみにしてくれて、類は友を呼ぶって言いますけど、こんなアホみたいな笑顔をくれるみんなが大好きです。本当にありがとうございます」
遊助は“3.11”を奇しくも初めての日本武道館公演で経験した。これまでに感じたことのない大きな揺れに、すぐにこれはライブどころじゃないと感じ、座長として状況を把握しようと周りを見渡した時、パニックに陥るスタッフやダンサー、crewたちの姿を目のあたりにしたという。「自分の運命を呪うというか、初めて武道館のステージに立つ日に、365分の1の確率で遭遇する?って」(遊助)と驚くと同時に、人前に立って表現する者として覚悟が決まりもしたという。
自身の身の上をアルバムを発表する度に描いていくこの「History」、「3月11日は原点を忘れずにみんなに届けていこうと思える大事な日だから、これを曲に残しておきたかったんです」(7thアルバム『あの・・いま脂のってるんですケド。』リリース時のインタビューより)と語ってくれたが、この日のライブでもその思いを口にして届けた「History V」に、crewたちも自身の思いを重ね、じっと聴き入っていた。
最後の最後に、スペシャルはまだ用意されていた。アンコールでは、なんとお笑い芸人の品川祐がステージに登場し、遊助とマイクを前に並んで漫談を披露。ボケまくる品川に、ツッコミまくる遊助(笑)。生き生きと、じつに楽しそうな遊助の姿に爆笑が起こり、笑みがあふれた。さらに「怪盗MAGNUM」ではSHOCK EYEが再び登場、贅沢にも、この日二度目のスペシャルなコラボを展開してくれた。
テレビや映画のスクリーンの向こう側で活躍する「上地雄輔」の姿しか知らない人には、ぜひ「遊助」のステージを体感してほしい。始めはステージと客席の双方から放たれる圧倒的なエネルギーに、ちょっとたじろぐかもしれない。でも、遊助の笑顔に導かれ、crewたちの同じ空間にいる誰をも受け入れてくれるような温かさに身をあずけてみたら、「“心から楽しい”とはこういうことか」と、気づけば笑顔がこぼれているはず。ライブ会場には、遊助がデビューの頃に夢見たという、老若男女が黄色いタオルを手に、笑顔で遊助の歌を一緒に口ずさむ幸せな光景が広がり、遊助が全力であなたを楽しませ、明日への活力をくれるのだ。
(取材・文/田上知枝)
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