
地球で一番モテる酒飲みが、ソウルの怪獣とシンクロ!
主人公グロリアは執筆した記事が炎上してクビになった元WEBライター。ニューヨークで彼氏のティムと同棲していたものの、いつまでたっても無職な上に酔っ払ってはトラブルを起こしまくり、しまいにはティムに愛想を尽かされて追い出されてしまう。住むところがなくなったグロリアは、仕方なしに生まれ故郷の田舎町に戻ってくる。
まずこのグロリアのキャラクター造形が眼福だ。グロリア役のアン・ハサウェイが『プリティ・プリンセス』のお姫様役でブレイクしたのも今は昔。酒に飲まれては予定をすっぽかし、彼氏の家で無職生活を満喫する正真正銘の酒クズ役をノリノリで演じている。酒を勧められればガンガン飲み、ノリも良いけどなんだかだらしない元WEBライター・現在無職のアン・ハサウェイ(めちゃくちゃ顔がいい)……おそらく地球で一番モテる酒飲みである。絶対一緒に飲みたい……。
唐突に故郷に戻ってきたグロリアを巡り、一気に地元の人間関係が動きだす。ベッドもない家で寝るためマットレスを担いで帰るグロリアは幼馴染のオスカーと偶然再会し、彼が経営するバーで働くことに。店の常連客ガースやイケメンのジョエルとも知り合い、なんとかやっていけるかも……?となった次の日、世界を揺るがす大事件が。なんと韓国の首都ソウルに巨大な怪獣が出現。街に甚大な被害をもたらした後に虚空に消えたのである!
世界中が騒然とする中、怪獣の動きが自分の頭をかくクセやマットレスを担いで歩く動きと一致していることに気づくグロリア。
調子に乗ってソウルに甚大な被害をもたらしたことを猛反省し、怪獣とシンクロしてソウルの地面に巨大なハングルでお詫びを書くグロリア。もう二度とあの公園に踏み入らないことを誓うグロリアだったが、一方のオスカーは巨大ロボットとシンクロしたことを大喜びで受け入れる。オスカーはなぜロボットとのシンクロにこうまでノリノリなのか、そもそもなんで2人はソウルの怪獣とロボットにシンクロしちゃったのか……謎を孕みつつ、事態は急展開を迎える。
酒クズシンクロコメディの底には、意外に深い問題意識が
とにかく能天気でノリがいい酔っ払いのグロリア。対照的に常識人で堅実な田舎のバーの主人……という感じだったのがオスカーである。しかしこのオスカー、実はけっこう複雑な人物であることが劇中で明かされる。都会でフラフラとWEBライターをしつつ飲んだくれていた女グロリアと、親がやっていた地元の飲み屋を継いで地味に暮らしていた男オスカー。小学校の同級生である両者の間に広がる溝は、実はけっこう深くて広い。
『シンクロナイズドモンスター』は中盤以降、そのへんの対立軸全部に切り込んでいく。都会対地元、浪費対堅実、女性対男性、横文字職業対家業の飲み屋……それら全てにまつわる対立軸が「怪獣対ロボット」という荒唐無稽な肉弾戦への伏線となっていく構成は見事としか言いようがない。
というふうに書くとなんだか小難しい映画に聞こえるけれど、基本的には(ソウルに甚大な被害が発生するものの)よくできたコメディであり、なによりアン・ハサウェイがめちゃくちゃいいのでそれ目当てでも見に行ってほしい作品だ。見終わった後は「絶対にあのアン・ハサウェイと飲みたい」と「飲みすぎはよくない」という相反するふたつの気持ちの板挟みになることは間違いない。やはり顔がいい酔っ払いは……最高……。
【作品データ】
「シンクロナイズドモンスター」公式サイト
監督 ナチョ・ビガロンド
出演 アン・ハサウェイ ジェイソン・サダイキス ダン・スティーヴンス オースティン・ストウェル ほか
11月3日より全国ロードショー
STORY
彼氏に振られ、地元に戻ってきた無職のダメ女、グロリア。偶然再会した幼馴染オスカーのバーでの仕事をゲットするも、突然韓国のソウルに現れた怪獣と自分の動きがシンクロしていることに気づく。
(しげる)