
ウェブサイト「ほんのひきだし」で、夢眠が理想の書店「夢眠書店」の開店を目指し、本にまつわるさまざまな人や場所をたずね、話を聞く連載「夢眠書店開店日記」を、一冊にまとめたもの。
本が手元に届くまでを追いかけて
「本が好きといっても、たいていは、本屋さんで手に取ったところで終了する短い距離での話になると思うのですが、そこまでに至る旅みたいなもの、本というものを取り巻くものを知ることで、もっと本のことが好きになれるんじゃないかと考えました」
夢眠ねむが、連載と本書について語る。

本書では、人気書店の裏側やPOP名人の極意、本の流通センター、漫画雑誌編集部、装幀、校閲など、さまざまな現場でさまざまな角度から、本に関する仕事を学んだ。
「サイトの運営が書籍・雑誌流通の日販さんなので、流通とか、本が手元に届くまでを追ってみたいねというところから始まりました。だから、作家さんに聞くというよりも編集や流通、宣伝などの本にまつわる興味ある話を聞いてみたいと思いました」
三重県伊賀市生まれ。小さなころから本が大好きだった。
「親が、本ならなんでも買ってくれるという教育方針だったこともあり、気が付いたら日常的に本屋に行って、日常的に読書をして、という感じでした。学校に入っても、自然に行くのは図書室。アルバイトをしたのも本屋さんでした。本との出会いの場所としての本屋さんがとても好きなんです。欲しいと思っていた本が本屋さんになかったときに、流通センターや出版社に問い合わせたりして、それで手にすることができたことで、一生物の出会いになるかもしれない。だけど、そもそもそこで取り次いでもらえなかったら、その出会いそのものが生まれないかもしれない。電子書籍やウェブの文章も、もちろんそれぞれのよさがあるのですが、手にすることができる紙の本は、一番慣れ親しんできたものですし、モノとしてもずっと愛してきたものなので、その魅力を知って、お伝えできたらいいな、と思っているんです」
目指したのは本好きがうなる本
装幀家に装幀について学び、書籍書き下ろしのパートでは、本書の装幀に自ら挑戦した。海外文学風のイメージも取り入れ、フランスの仮綴じ本をイメージしたカバーに。手触りや質感にこだわった。
「私、『ジャケ買い』というか、『装幀買い』をすることも多いんです。本って、家でどっしりと読むだけじゃなくて、カフェや通勤電車で読むことも多いですよね。軽さや持っててカッコいいということもとても大事だと思っています。本好きにひびく本、本好きがうなる本にしたかった。というよりも、そもそも『私が好きそうな本』ということになっちゃうんですけれども(笑)」
本書を通じて、「本」にますます興味がわいた。
「たとえば本屋さんでも、ただ機械的に並べているのではなく、その並べる人の思いがあって並べられている。さらに、ここに入れると『棚が締まる』というような存在の本もある。そういった職人芸というか、それぞれのプロでないと分からない感覚があることにも衝撃を受けました。もともと最終的には『夢眠書店』という本屋さんを作りたいという目標があるので、そういったことを学んだり、盗んだりしてみたい。だから、またバイトしたほうがいいんじゃないかとか思ったりもしてます(笑)」
一言で「本好き」といっても、さまざまな「好き」がある。
「雑誌をたくさん読む方だっているし、漫画ばかりの方、本屋さんが好きという方もいますし、いろんな『本好き』のかたちがあると思います。逆に、本を手にしない方ももちろんいらっしゃいます。
でんぱ組を“いい意味で”利用
夢眠が所属するでんぱ組.incは、約1年間、ライブなどグループとしての活動は控えていた。
「その間に、それぞれの活動をたくさんやらせていただき、それでできた本でもあります。アイドルだから、でんぱ組.incのメンバーだからお話を聞かせていただけたこともたくさんあるはずです。でんぱ組であることをいい意味で利用して(笑)、本のよさ、面白さを伝えていけたらいいなと思っています。2018年は、たくさんライブをやれるかなと思っています。ライブの空き時間には、全国各地の本屋さんをまわりたいですね(笑)」
(太田サトル)