
現金に代わる支払い方法の多様化が世界各地で進行中だ。日本でもキャッシュレス化は進む方向にあるが、実は他国と比べると日本はまだまだ現金社会と言える。
BIS(国際決済銀行)の調べによると、日本の現金流通残高(対国内総生産GDP比率)は直近のデータでも20%と、他国と比べて極めて「現金社会」だ。しかし、現在が現金社会であるため、日本は今後のモバイル決済市場への転換の伸びしろが、非常に大きい市場でもある。

アメリカは、これまでもクレジットカードや小切手の使用も多くキャッシュレス化の歴史は長い。現金以外での決済方法に対する抵抗感が少ない社会だった。従って、モバイル決済への転換に対する抵抗感も低い。今回は、そんなアメリカのモバイル決済マーケットの一角でもあり、成長を続けている決済アプリ「LevelUp(以下、レベルアップ)」がどのように使われているかを紹介しよう。
ポイントカードとしての役割も
レベルアップは、2011年にマサチューセッツ州を起点とするスタートアップが立ち上げたモバイル決済アプリだ。ユーザーは自分の支払い情報(クレジットカードなど)をこのアプリに連動させることで、自分専用のQRコードが作成できる。
レベルアップに加入している店舗には、専用のスキャナーがレジに設置されており、ここに自分の携帯をかざすことで支払いが完了する。もちろん財布は不要。チップを支払いたい時には、アプリからチップの金額を指定できる。何よりユーザー側にとってありがたいのは、同アプリが実質的にポイントカードの役割も果たしていることだ。
例えば、ある店舗で累計50ドル(約5500円)の買い物をすると、10%にあたる5ドル(約550円)分のクレジットが自動的に付与される。
店舗側にとってもメリットは大きい。レベルアップはこのプラットフォームを介した顧客の購買行動のデータの分析ツールを、店舗側に提供している。このため店舗は顧客のリピート率や、購入商品とその顧客の購買傾向(同時に購入する商品や、来店頻度など)をマーケティングの材料にできる。また、店舗側でもレベルアップのアプリを介して自由にプロモーションを設定できるため、プロモーションと併せた購買行動の分析も容易だ。

今後も拡大を続けるレベルアップ
こうしたアプローチが飲食業界とユーザーに受け入れられ、レベルアップはサービス開始から6年がたった今でも成長を続けており、今年5月には5000万ドル(約55億円)の資金調達に成功した。
今年9月には、大手オンラインフードデリバリーサービス「delivery.com(デリバリー・ドット・コム)」と業務提携を開始。デリバリー・ドット・コムと提携する約1万2000店のレストランに対して、ユーザーがレベルアップを介して食事をオンライン注文、決済できるようになった。また、レベルアップは新たに、加入店舗ごとのアプリケーションのプラットフォーム提供も開始。カフェやレストランがレベルアップ対応のQRコードに対応した店舗独自のアプリを簡単に制作できるようになった。
ニューヨーク市内マンハッタン地区だけでも53店舗を構える(2017年12月3日現在)大手カフェチェーン「Pret a Manger(プレタ・マンジェ)」もレベルアップのプラットフォームを利用したアプリケーションを2017年10月に導入した。ニューヨークでプレタ・マンジェは、東京におけるスターバックス程度の存在感を誇っており、ニューヨーカーへの影響は大きい。
(迷探偵ハナン)