第11週「われても末に」第66回 12月16日(土)放送より。
脚本:吉田智子 演出:保坂慶太

連続朝ドラレビュー 「わろてんか」66話はこんな話
いよいよ、団真(北村有起哉)が「崇徳院」を披露するとき、団吾(波岡一喜)が颯爽と現れて・・・。
兄弟弟子愛
主題歌からはじまって、今日はノンストップでいきまっせという気合を勝手に感じた。
なにしろ、兄弟弟子がいよいよ共演しそうな気配を匂わせているからだ。
本番、直前。鏡前で緊張の団真。出囃子に乗って高座に上がる。
だが、客はかなりまばら・・・。
そこへ、トレードマークの赤い人力車に乗って団吾がやって来る。するとたちまち、客席がいっぱいに。
夕(中村ゆり)もやって来た。
おもむろに団吾が踊り出し、観客はノリノリ。あげくに「崇徳院」をやると言い出して、なんだか立場のない団真。
団吾は、団真の晴れ舞台の邪魔をしに来たのか? と思わせて・・・前座をつとめ、客席を温めるという寸法だった。
客たちに団真を紹介して、去り際、団吾は、仲が良かった時代、やってもらっていたまじないを団真にする。
これも扇子を使ったもので、団真、団吾のエピソードでは、終始一貫して、扇子が団真たちの落語人生の“魂”として描かれた。
花形の影響力を実感
枕から落語に入る流れがなめらかで、さすが、北村有起哉、巧い。
羽織を脱いで、団真がすっかりリラックスして、マイペースになったこともよくわかる。
すべては団吾の援護射撃のおかげだ。
リリコ(広瀬アリス)が61話で、てん(葵わかな)に語った、突出した花形が、ほかの芸人の力も底上げするのだという話を実証した形でもある。
団吾と団真の兄弟弟子の因縁話は、これまでの66話中、構成がかなりしっかりした、名エピソードであるといえるだろう。
なにがけったいだったのか
こうして、団吾も風鳥亭に出ると言い出した。
その理由のひとつが「けったいなおなごもおるしな」。
けったいなおなごとはてん(葵わかな)のことだ。一生懸命、団吾に寄席に出てもらおうと、彼の元に通っていたが、その何がけったいだったかといえば、62話で披露した、あの踊りではないだろうか。
葵わかなが、くるっとまわって首をかしげたときのおぼつかない様子がわたしも忘れられない。
兄弟弟子も、てんと藤吉、団真とゆう、二組の夫婦もわれてもすえにあえたというハッピーエンドで、ほっとした週末であった。
そして、結局、波岡一喜は天才的な落語を披露しないまま煙に巻いた形。
こういうのも、天才の成せる技ということか。
現実的に考えると、波岡一喜が巧い俳優であっても、天才芸はいくらなんでも再現できないから、見せないことでその凄さを脳内補完させる、「ガラスの仮面」の紅天女方式だろう。
はたして、12週以降、披露されるのだろうか。
(木俣冬)