【インタビュー】打首獄門同好会、コウペンちゃんとのコラボMVは「前々からお誘いしていた」

「日本の米は世界一」「歯が痛くて」「肉食べたい」といった、誰しも一度は感じたことのある“日常あるある”を本格的なラウドロックサウンドに乗せて歌うバンド、打首獄門同好会。生活感溢れるユルい歌詞を乗せた独特のスタイルから“生活密着型ラウドロック”という新ジャンルを確立し、結成13年を越えた今なお、着実にファンの心をつかみ続けている。そんな打首が2018年に「日本武道館ワンマンライブ」を宣言。現在も「目指せ武道館!!2017-2018 戦獄絵巻」と名付けた一年計画で、日本全国で奮闘している。そこで今回は、大澤会長(Gt/Vo)に1月24日よりリリースされる新曲『冬盤』の制作秘話や3月に公演を控えている日本武道館単独ライブについての心境を訊いてみた。

――四季連続リリースの3枚目『冬盤』の発売と、日本武道館公演を控えた今の心境をお聞かせください。

とりあえず、疲れてます(笑)

――ははは。お疲れ様です。

ありがとうございます(笑)。リリース的には四季連続リリースの折り返し地点が過ぎて、47都道府県を回るツアーもほとんど終わり、日本武道館公演に向けた企画『目指せ武道館!!2017-2018 戦獄絵巻』のゴールが見えてきたな、という心境ですね。今回の『冬盤』リリースが一番スケジュール的に切羽詰まっていたんですよ。

――『冬盤』の制作はいつ頃から始まっていたんでしょうか。

夏フェスの稼働が9月頃までピークだったので、実際に作曲に取り掛かったのが10月から。11月からは全国ツアーが始まって、毎週日本中を飛び回っていたので、どこか行っては、帰ってきた次の日にレコーディングして、またその次の日にどこか行って、みたいな。“あれ? 休みってなんだっけ?”という状態でした(笑)。

――かなりのハードスケジュールだったんですね。Twitterでも冬盤が完成した際に『激闘の日々だった』とツイートされていましたよね。


そうですね。作曲が難航したというより、スケジュールがかつかつで。秋盤の制作が終わり、「さあ、冬盤いつ作るんだ!」とカレンダーを確認した時に「空いている日なくない!?」という(笑)。かろうじて空いていた日を見つける度に、スタジオを抑えていく感じで。順調に行ったらリリースに間に合うけど、何かトラブルがあったら間に合わなくなるぞ、と。加えて、まだ作詞も始まっていない状況だったからヤバいぞ、という感じでした。

――制作は特にトラブルもなく?

スムーズに進みましたね。ただ、喉が心配で。ライブとレコーディングを連続でやっていて喉休める日がないから、一度痛めたらずっと傷んだままでやるしかないという。そこでかなりのプレッシャーを受けながらも、進めていきました。

――これまでの『夏盤』『秋盤』と比べて、『冬盤』は詳細情報の解禁があまりなかったようですが、怒涛の制作スケジュールが関係していたりするんでしょうか?

これは“あえて”解禁していなかったんです。2017年12月22日に冬盤のジャケ写と詳細、MVを一斉に公開したんですが、これまで解禁しなかったのはその3曲目に収録されている『布団の中から出たくない』のミュージックビデオ(以下、MV)の完成を待っていたからなんです。

――いま話題の“コウペンちゃん”じゃないですか!

そうなんですよ。このMVができるまで、「あ、コウペンちゃんなんだ~!」というのをネタバレしたくなかったんです。作者の、るるてあさんが実は打首のこと好きだと言ってくれいて、3月の新木場のワンマンライブに来てくれたという話をTwitterに載せていたんです。それを見て、「一緒に何かやりませんか?」と声をかけていたんです。

――そうだったんですね。

これまでもLINEスタンプでお馴染みのナガノさんにミニアルバムのジャケ写を書いてもらったりしていて、こういったキャラクターと接点を持つ足がかりはできていたので。ただ、夏場にペンギンを出してもしょうがないので、「冬盤の時にぜひ」とお誘いしていたんです。

――これ、間違いなく話題性抜群ですよね(※1月23日時点でYouTubeの再生回数が104万回突破)。

Twitterでコウペンちゃんのイラストが投稿されるだけで毎回1万リツイート近くされますもんね。実はこの曲、打首で初めてMVありきで作ったんですよ。曲中にコウペンちゃんが突然『寒い―! 寒いー!』と叫んでいるシーンも、映像ありきで見てもらいたくて。

――確かに、「布団の中から出たくない」の歌詞に<ストーブ、えらい>とコウペンちゃんを彷彿させるフレーズがありますよね。

そうなんですよね。このMVではコウペンちゃんが3分間半にかけて、ぬるぬる動き続けるので見てほしいです。

――この楽曲が『冬盤』で一番冬が感じられる楽曲ですよね。

むしろこれしか冬じゃないです(笑)。実は“布団の中から出たくない”が『冬盤』のリード曲なんです。ただ、CDの流れ的には1曲目の曲ではないので。やっぱり打首の1曲目は激しいラウドナンバーかなと思って。
【インタビュー】打首獄門同好会、コウペンちゃんとのコラボMVは「前々からお誘いしていた」
ジャケット写真もるるてあさんの書き下ろしイラスト

――なるほど。確かに1曲目の『スマホの画面が割れた日』はこれまでの「デリシャスティック」や「ニクタベタイ」などに並ぶラウドロックナンバーですよね。こちらは実体験でしょうか?

あ、バレました?(笑) 少し前に車に乗っていたとき、運転中に足の間に置いていた携帯を降りるときにスマホを落として画面割れちゃって。「うわーーー!」って言いながら書きました。

――そのせいなのか、この曲から悲壮感というか、かるく怨念も感じます(笑)。でもメロディもすごくライブで盛り上がりそうな曲展開ですよね。

ライブ映えはめちゃくちゃしますね。この曲で盛り上がる人は、だいたい画面が割れている人(笑)。

――ははは。なるほど。続いて、2曲目の『忘れらんねえですよ』はイントロのギターのリフがめちゃくちゃかっこいいんですけど、<トイレットペーパー>という歌詞が冒頭で出てくるのが打首っぽいなと。いわゆる、忘れ物注意喚起ソングなのですが、大澤さんは結構忘れっぽいんでしょうか?

いや、俺はあまり忘れないですね。うちのマネージャーがひどいんです(笑)。打首はVJ兼マネージャーなので、マネージャーにVJ機材を任せているんですが、そのVJ機材を忘れて来ることが多くて。例えば、新しく購入した機器を満を持して“このライブハウスで使おう”と思って、「あれ出して!」って聞くと「忘れました」って(笑)。

――え―!

「なんのために買ったのか!! なんで持ってこなかったのーー!」っていうことがあった1~2週間後のライブで、またそのVJ機材を使える機会が巡ってきたんです。だけど、マネージャーが一言、「忘れました」と。「この前の出来事からもう忘れる? 早いよね?!」という出来事がつい11月にありました(笑)。

それにしても、打首の楽曲は日常のいろんなネタが楽曲になっていきますよね。そういった“あるあるネタ”を歌うバンドが近年で増えてきていますが、個人的に気になっていたり、今はこれが面白いと思うバンドはいますか?

あるあるネタで面白いのは、ヤバイTシャツ屋さんや岡崎体育とか。そういう笑いの取り方は、西のバンドの方が上手い。うちはどちらかというと、ただ投げっぱなしというか、シュールな共感型かな。「こんなのあるよねー」って、ただ、自分のエピソードを話しているだけ。ただ、肉が美味しいと言っているだけ。

――確かに、西のバンドは共感型に加えて、さらにそこから観客を巻き込むような楽曲が多いかもしれないです。

そんな中で個人的に注目しているのは、「おめでたい頭でなにより」ですね。ラウドなサウンドのなかにシュールな歌詞を入れてくるような、同じ匂いがするバンドだなと。こちら側から出てきたなという意味では、西とは少し違う匂いがしているんで、今後どんな切り口をやっていくのかなという楽しみはありますね。

――なるほど。さて、日本武道館公演についてお聞きしていきます。いい意味で武道館公演まったく予測がつかないです。現時点でどんなライブを考えていますか?

そうですね。大まかな構想は見えているんですけど、皆さんに楽しんでもらえるようなライブを考えています。
【インタビュー】打首獄門同好会、コウペンちゃんとのコラボMVは「前々からお誘いしていた」

――ここ最近のフェスや対バン、ワンマンなどの打首のステージを見ていると、獄Tシャツの人たちをいろんなところで見かけるようになって、武道館までの道のりがファンにとっても視覚的に実感できたのはあったと思います。

フェスに出る回数が今年に入ってグッと伸びて、いろんな会場に出演していくなかで、「このステージで人が集まるのかな」、タイムテーブル見ると「あのアーティストと被ってる~」ということがあったんですが、結果的にたくさんの人が集まってくれたり、後ろまで満員だったということがあって。一番驚いたのは、『SATANIC CARNIVAL'17(幕張メッセで行われたパンク/ラウドロック/ハードコアの祭典)』の時、打首のフロアが入場規制かかっていて。「えー!? このイベント、うちの色ちゃうやん!」ってなったとき。気になる人をファンまで引き込むのはフェスきっかけが多いので、フェスでそういった機会をたくさんいただけたのは嬉しかったですし、こういった手ごたえは感じることできましたね。

――改めて、2017年の活動を振り返っていかがですか?
【インタビュー】打首獄門同好会、コウペンちゃんとのコラボMVは「前々からお誘いしていた」

忙しかったですね。47都道府県のライブツアーでは、初めていろんな土地に行ったんですが、実は意外な県がいいところばかりで。一番ヒットしたのが山陰の鳥取・島根。人口が少ないためにライブの動員数も少ないのですが、実際にライブをしてみると、本人たちも<ライブハウスに集まる人が少ないけど、俺たちはどんな状況でも全力で楽しむ>という意識を持っている人ばかりだから、みんな全力でかかってくる。もうね、ためらいがない。精鋭揃いなんですよ。人数的な比率でいうと、大都市の半分くらいなんだけど、フロアからの声の圧は同じくらいのパワーがあって。それがすごく好印象として残っています。

――そうだったんですね。全国からの打首の精鋭たちが集う武道館公演はすごいライブになりそうです。最後に読者へメッセージをお願いします!

まず打首知らない方は、コウペンちゃん出演のMV見ていただければ、どんなバンドか掴んでいただけるのではないかなと思っています。打首を知ってくださっている方はぜひ武道館を楽しみにしていてほしいと。ご期待に添えるように頑張りますので。

取材・文/日野綾