「慶應ニューヨーク学院」の出願者数が増加しているワケ

近年、慶應義塾大学へ推薦で入学できる学校の中でも、ニューヨークに存在する慶應義塾ニューヨーク学院(高等部)の人気が高まっているという。いったいどんな学校なのだろうか。
そしてどれくらいの英語力があれば入学できるのか。慶應ニューヨーク学院への合格率は英語塾の中でもトップを誇り、14年間で400人以上の合格者を輩出している英語塾キャタルの塾長に話を聞いた。

慶應義塾ニューヨーク学院(高等部)とはどんな学校か


「慶應ニューヨーク学院」の出願者数が増加しているワケ

慶應義塾ニューヨーク学院(高等部)(以下、慶應NY学院)は、1990年、アメリカ合衆国ニューヨーク州のマンハッタンから1時間の郊外にあるパーチェスに開校された高等部の慶應義塾一貫教育校である。卒業生は、学院長の推薦により、慶應義塾大学に設置されている各学部のうちいずれかに推薦進学できる。

もともとは、海外に駐在する日本人の子が通うための学校だったそうだが、2000年以降、日本から出願することもできるようになった。日本ではなく、ニューヨークにある高校の環境がどのようなものなのか気になるところ。慶應NY学院に詳しい英語塾キャタルの塾長である林洋介氏は次のように話す。

「男女共学で、生徒数は全部で350人前後。生徒の99%は日本国籍の日本人です。アメリカの高校と同じ4年制で、アメリカの高校卒業資格も得られます。
寮があるので日本から子どもだけを留学させるような形が基本ですが、親がアメリカ国内やヨーロッパ諸国、アジアなどに駐在している家庭もあります。将来、日本に帰ることを想定し、子どもに日本人としてのアイデンティティも持ったバイリンガルになってほしいという思いで通わせています。授業は約6~7割、アメリカ人の教師が英語で行います」

そして年々、出願者数が増えているという。
それにはどのような背景があるのか。

「2015年で創立25周年を迎えて話題になったこともありますが、一番は日本における英語熱の高まりにあると考えます。2020年から大学入試が新しくなることもあり、中学、高校のうちから英語全般に対して取り組み方を変える必要が出てきています。英語教育をメインに、現代文・古典などの国語の授業にも力をいれている、バイリンガルな授業・バイカルチュラル(※1)な教育を行うニューヨーク学院は、英語を取得させたいという希望を持つ親が、留学することで一番懸念する『日本語能力の低下』『日本の大学進学への不安』を払拭できる制度がメリットととらえられ、人気が高まっていると思われます」

※1バイカルチュラル
2か国の言語・習慣・道徳などを、その国の人と同レベルに身につけているさま。また、理解できるさま。(引用:小学館「デジタル大辞泉」)


学生は慶應NY学院でどんな体験ができるのか


「慶應ニューヨーク学院」の出願者数が増加しているワケ

慶應NY学院へ進学すれば、将来は慶應大学への進学はもちろんのこと、アメリカの大学への進学も可能であるため、将来の選択肢が増えるという。また、当然、英語力は日本で生活して大学に通うよりも格段にアップできそうな環境だ。林氏は、それ以外にも学生たちにとって大きなメリットがあるという。

「一つは、シーズンスポーツ選択制と、アメリカの学校との試合や連携チームなどがあることがメリットではないでしょうか。ラグビー部はフレンチアメリカンスクールと合同チームでステート優勝(※2)しましたし、学院にないクラブ活動も、地元のクラブや現地校のチームに参加することもあると聞いています。野球やバスケなどをアメリカの高校生と共に行い、戦うことで技術アップと自信が付きます」

※2ニューヨーク州のBinghamton大学にて行われたState Championshipsにて。
「慶應ニューヨーク学院」の出願者数が増加しているワケ


「もう一つは、寮生活が非常に楽しいということ。90%以上の生徒が寮で生活しています。
寝ても覚めても友達が周りにいて、あらゆることを自分たちで行う。親元を離れ、自主性・主体性を持って活動できる力が培われます。慶應NY学院では、すべての体験が子どもたちにとって成長になります。また、いろんな個性を持っている学生たちが一緒になって、それぞれの違いを理解しながら、学園祭、ボランティア活動や現地コミュニティとの交流などのさまざまな活動をすることで、絆や友情がより一層深まるのも魅力だと思います」


慶應NY学院への入学で求められる英語力


子どもの成長にとって好条件がそろう慶應NY学院。林氏によると、入学試験は、日本からの出願の場合、書類審査通過後に英語・国語・数学の入試と、面接で行われるそうだ。
いったい、どれくらいの英語力が求められるのか。やはり幼い頃からの英才教育が必要になるのだろうか。

「幼い頃からの英才教育が必要かといえば、必要ではありません。一般的な中学生でも対策をすれば受かります。合格するのに求められる英語力は、英検2級を基準としています。入学後にはそれ以上の英語力が求められるためです。英語の授業は、日本のように講義形式ではなくディスカッション形式ですし、リサーチペーパーという英語の論文の提出とプレゼンテーションやスピーチが頻繁に求められます。また、帰国子女や海外からの受験者は、英検準1級保持者が増えてきています。
ただ、英検だけではスピーキング力やライティング力はまかなえないため、例えば英語4技能『読む・聞く・話す・書く』が問われるTOEFL iBTのスコアも重要になってきます。ちなみにTOEFLは入学後に必ず受けることになります」

林氏によると、書類選考において英語資格以外にも、志願者が行ってきたスポーツ・芸術・ボランティアなどの活動について提出することで有利になるという。

慶應NY学院へ入学するためのポイント


慶應NY学院の入学試験に合格するには、何を意識して勉強をすればいいのか。

「合格するために最も重要なのは、国語と英語の論文力です。特に英語では、『英語で自分の考えをロジカルに伝える力』が求められます。英語の試験の一つである『Essay(エッセイ)』は、まさに論文力が問われる問題です。対策は、英語力の高い人に添削してもらいながら繰り返し書くことに尽きます。書けば書くほど書けるようになるので、子どもにとっても成長しているという実感があり、それがモチベーションになります」

これまで合格者を多数輩出してきた中、慶應NY学院へ合格する子どもたちには次のような傾向があるという。

「将来への明確なビジョンを持っていて、自己表現力がある、自立して学習できる、そして文武両道で積極的に活動し、リーダーシップがある、ということが共通しているように思います。英語力や学力全般だけでなく、面接では人間性も見られます。入学後も学院のさまざまな活動に貢献できる人が求められています」

林氏は、慶應NY学院へ入学するためのポイントを次のように話す。

「日本からだけなく世界中からの受け入れも強化していることから、今後ますます競争率が激しくなっていくでしょう。
今後、慶應NY学院を目指すには、『グローバルで活躍したい』という強い思いを論文や面接で表現できることが重要になってきます。
また、英語業界全般で変化を遂げている『4技能』を押さえつつ、さらにグローバルな価値観や自立心を育てる家庭での教育を含めた対策が必要となります」


取材協力・画像提供
英語塾キャタル 塾長 林 洋介(はやし ようすけ)さん
英語塾キャタルの取締役であり塾長。
中学1年の13歳から高卒業までの6年間、アメリカのボストンに単身留学してバイリンガルになった経験を元に、代表三石とキャタルを創業。慶應ニューヨーク学院対策コースの責任者、海外留学担当として14年間で400人以上の留学を実現してきた。2児の父。


(石原亜香利)
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