
昨年12月、パリ・モンマルトルにあるライブハウス「ル・トリアノン」にて、日本のポップグループJAM ProjectとT.M.Revolutionが出演した音楽イベント「JAPAN MUSIC PARTY」が開かれた。前半をT.M.Revolutionが務め、後半をJAM Projectが締める2部構成。
海外でライブを開くということは、言葉・文化の違いによる意思疎通のハンデがあるなか、日本の知名度に頼らず観客を楽しませねばならないということ。演者にとって、そこには日本と海外で違いはあるのだろうか。T.M.Revolution西川貴教さんに、今回の同イベントと海外公演について聞いてみた。

――西川さんは2003年に米ボルチモアで開かれたアニメイベント「OTAKON」での公演を皮切りに、今まで海外各所でライブをしてきました。日本国内の会場と海外公演では違いを感じますか?
基本的に大きな違いはないと思っています。強いて違いを挙げるとすれば、やはり言語の壁ですかね……。なるべく、MCなども現地の言葉で伝えたいなと思うので、準備や勉強はしていくのですが、アクセントなど難しい部分は多少あります。ですが、それを乗り越えられるのも音楽ですし、想いが伝われば大きな問題ではないと思っています。
――海外では慣れない会場ということに加えて、普段とは違う段取りで行うこともあると思います。海外公演に臨む際に、何か特別に気をつけていることはありますか?
国内でも海外でも常に自分の持っている限界を越えよう、ファンのみんなの期待を良い意味で裏切りたいという想いで臨んでいます。海外ではハードなスケジュールになることが多いので、時差や気候などで体調を崩さないよう特に気を遣っています。
――慣れない現場での公演は、予想外のことが起きることもあると思います。海外公演で今までに大きなトラブルに遭遇したことはありますか?
ブラジルのサンパウロでの公演の際、飛行機がサンパウロに着陸せず、手前のブラジリアに下りてしまったことがありました。機械系統や物理的なトラブルではなく、人為的な理由(乗務員のストライキ)だったので、とても驚きました。飛行中にストライキが起こるなんて日本では絶対に考えられないので、信じられませんでしたね。

日本と海外では盛り上がる曲が変わる
――観客のノリやライブでの習慣などは、海外各国で変わってくるのでしょうか? それとも、そこまで変わらないものなのでしょうか?
とにかく思い切り楽しもうという熱量は、言葉や習慣を超えて同じなのだと強く感じています。どこの国や地域へうかがっても、楽しみに待っていてくれるファンのみんながいてくれることは、本当にうれしいです。
――海外で日本人アーティストの公演が開かれると、海外公演と言いつつも蓋を開けてみれば、日本人が詰めかけていたりする場合も多いです。しかし「JAPAN MUSIC PARTY」は、ほぼフランス人でした。そうすると、会場もよりフランスらしさが出ると思います。フランスのファンにどういうイメージを持たれましたか?
フランスのファンのみんなは、凄く大切に1曲1曲を聴いてくれている印象です。日本と距離もあって頻繁に公演ができない分、1回の公演をまるごと全部楽しもうとしてくれて、本当にうれしいです。
北米やアジア圏に比べると、ヨーロッパでの公演はまだまだ少ないので、待ち望んでくれていた気持ちがとても嬉しかったですし、フランス国内に留まらず、ヨーロッパ各地からお越しいただけるので、もっとパフォーマンスできる機会を作りたいと思いました。
――日本国内での公演と海外公演では、盛り上がる曲は変わりますか?
日本でも話題になったアニメ作品やその主題歌が盛り上がるのは世界各国共通ですが、日本で苦戦した作品が海外では大人気になっていたりするので、日本国内でのセットリストと海外でのセットリストはそこを考慮して組むようにしています。

海外公演はもっと増やしていきたい
――仕事で海外に行くとなると、スケジュール上どうしても駆け足の滞在になってしまうと思います。そのような中で、何か現地で新しいインスピレーションを受けることはありますか?
最終日の出発までの時間や本番前の時間など、できるだけ街を散策しました。パリの街並みや、歴史ある雰囲気を短い時間でしたが味わうことができて、本当に幸せでした。インスピレーションを具体的に表現することは難しいのですが、今回のパリも間違いなく西川貴教が経験した時間ですので、パリで感じた様々なモノや空気が、今後の作品や思考などにどう反映されていくのか、自分でも楽しみです。
――「JAPAN MUSIC PARTY」での観客の盛り上がり具合を見ていると、フランスのファンは、もっと西川さんが来仏することを望んでいるようにも思います。もしフランスに長く滞在できる機会があれば、どんな生活を送りたいですか?
前回が2009年のabingdon boys schoolでの公演だったので、そう言っていただけて心からうれしいです。だからこそ必ずまたパリを訪れたいと思っていますし、できるだけ早く実現させたいと思っています。
もともとパリはいつか長期で訪れたいと思っていたほど大好きな場所でした。いつかルーブル美術館だけに毎日通って3カ月とか、のんびり滞在してみたいです。
――これからも海外公演は増やしていきたいですか? そして海外で今後やりたいことがあれば教えてください。
そうですね。もっともっと頻繁に海外でアピールする必要があると思っていますし、積極的に海外のイベントやコンサートにも参加したいと思っています。
(加藤亨延)