背わたのないエビ、増えてない? 真偽を日本海老協会に聞いてみた
エビの背ワタ取り、地味に大変ですしね(画像はイメージ)。

炒めても焼いても揚げても、グラタンやカレー、シチューに入れても、どんな調理法でも間違いなく美味しくなる食材・エビ。唯一の問題といえば、家で調理するとき、背わたをとる処理がちょっとだけ面倒くさいことくらい。


しかし、最近、背わたをとろうとすると、「あれ? 背わたがどこにもない……」と感じることが増えた。あるとき数えてみたところ、スーパーで購入した「むきエビ(大)」一袋の中で、背わたが確認されたのは、3尾だけ。
もしかして背わたのないエビが増えているのだろうか。


背わたのないむきエビが現在は主流に!


気になってネットで調べてみると、自分と同じく、背わたがないエビのことが気になっている人はいるよう。
「養殖時に化学肥料を与えることで、背わたがなくなる」説や、「頭をとるときに一緒に背わたもとれる」説、「エサを与えないと背わたがなくなる」説など、様々な憶測が囁かれていた。

「もともと背わたのないエビ」が作られていると考えると、なんだか怖いけど……。

真偽を一般社団法人 日本海老協会に聞いた。

「『背わたのない海老』についてですが、天然むきえびは、お客様が使用する際、手間がかからないように背わたを抜いてあるものが最近は主流になっています」(広報担当者 以下同)
やはりむきエビでは「背わたのないエビ」が主流になっていたのか! とはいえ、「もともとない」のではなく「抜いている」ということで、なんとなく一安心。
「天然、養殖エビともに、背わたはあります。天然エビは、加工段階で、背カットまたはピン抜きにより、背わたを除きます。養殖エビは、水揚げ前の約1週間前から餌止めをしているため、腸間に食物が残っておらず、背わた抜きしなくても目立たないと思われます」

「エサを与えないと背わたがなくなる」説については、「なくなる」わけではないものの、「目立たなくなる」ということで、半分(?)正解だったよう。

ところで、そもそも「背わた」って何? なぜ黒いのか。
「背わたは、人間の胃、腸にあたるところで、エビの消化器官です。
黒いのは、海老が捕食したものの残りです」

それにしても、なぜわざわざ抜いてくれているのだろうか。
「天然えびは捕獲される直前まで餌を食べており、その中には背わたに砂交じりがあるためです」
調理の際、背わたをとるのが面倒くさいと思うこともあるが、同じ理由から、「まれに背わたの中に砂などが混じる場合もありますので、取り除いて調理する方が安全です」ということだった。


エビの背わたをとるとき思い出す朝ドラ『ちりとてちん』


余談だが、いつもエビの背わたをとりながら思い出してしまうのは、NHK連続テレビ小説『ちりとてちん』(07~08年)の「エビチリ事件」。

少々長い例となるが、ご容赦いただきたい。

「ネガティブなヒロイン・B子(和田喜代美)」は「同姓同名で、美人で優等生でクラスのマドンナ・A子(和田清海)」にコンプレックスを抱いてきた。
クラスメイトたちは二人を区別するために「出来の良さ」の違いから、「A子」「B子」と呼ぶ。
そんな状況から抜け出すべく、B子は大阪に行く。
しかし、大阪でA子と再会・居候することに。あるとき、A子の友人が遊びに来ることになり、B子はエビチリを作ろうと丁寧にエビの背わたをとって、休憩していたところ、A子が勝手にエビを炒め始めてしまう。
そこで「なんでA子が炒めるの!?」とB子は激怒し、マンションを飛び出してしまうというエピソードだ。

「背わたをとる」=地味で面倒くさい作業=地味で目立たないB子、「炒める」=華やかな仕事=美人で華やかなA子、という、二人の立ち位置やキャラクターの違いの象徴として「エビの背わた」問題が使われていたのだ。

このエピソードがあまりに見事だったために、以降、いつも作業工程によって「B子」「A子」と思いながらエビの調理をしてきた。

だが、最近は「背わたを取りのぞいたエビ」が主流になり、さらに将来的に完全に取り除かれる日が来たとしたら……このエピソードを「そういえば、背わたがあるエビって昔はあったよね!」と思うのかもしれない。
(田幸和歌子)