あれは20年以上前、かつての年末恒例特番『笑っていいとも!特大号』(フジテレビ系)を見ていた時のことです。番組終盤に差し掛かり、いよいよ最大の見せ場となる「いいとも!ものまね歌合戦」へ。女性タレントたちはお気楽な忘年会芸を披露し、若手芸人たちはしっかり仕込んだガチのネタをやるというレギュラー陣の温度差が楽しかった同企画において、異質な存在感を放ったのが、爆笑問題の出現前まで『いいとも!』水曜日、不動のエースとして君臨していたヒロミさんでした。
つぶやきシローがブレイクしたのは、ヒロミのおかげ?
普通であれば、誰もが知っている芸能人・文化人などの模倣を行うのが『いいとも!歌合戦』の、いや、ものまね芸のセオリー。しかし、この日ヒロミさんが披露したのは、当時ほとんど無名に近かったつぶやきシローさんのものまね。会場では散発的な笑いが起きるものの、終始「これ誰?」な空気が漂い、演目終了後には、多くのレギュラー陣からも誰のモノマネなのかツッコまれていたのを記憶しています。
演目終了後にヒロミさんは言いました。「今日はこれができただけで満足だ」と。当時、つぶやきさんは伝説のネタ見せ番組『ボキャブラ天国』に出始めたばかりの時期。出身地である栃木の訛りを活かした独特の語り口調で繰り出される「あるあるネタ」を武器に、コアなファンを獲得しつつありました。ヒロミさんとしてはおそらく、自身がレギュラーをつとめる『ボキャ天』に彗星のごとく現れたこの異能の芸人の魅力を、大きな注目が集まる『いいとも!特大号』の場で伝えたいという意図が、少なからずあったのかもしれません。
『マジカル頭脳パワー!!』や『進め!電波少年』にも出ていた
そんな想いがあったかどうかは定かではありませんが、このヒロミさんのモノマネ以降、つぶやきさんのメディア露出はものすごい勢いで増えていきました。『マジカル頭脳パワー!!』(日本テレビ系)でパネラーをつとめたり、『学校へ行こう!』における名物企画「未成年の主張」のタレント版に登場したり、『進め!電波少年』でダライラマ、オノ・ヨーコ、ゴルバチョフにアポなし取材を敢行したりと、とにかく90年代を代表するテレビ番組に出まくっていました。
一時は死亡説もささやかれた
しかし、ネプチューン、爆笑問題を除くその他大勢のボキャ天芸人たちと同様に、つぶやきさんも少しずつテレビの世界からフェードアウト。一時は死亡説さえ語られるほど、メディアへの露出機会が激減してしまったのでした。が、完全に消えることはなく、地道にお笑いライブへの出演をコツコツと続け、その独特の声質を活かして『怒りオヤジ3』『ポンコツ&さまぁ〜ず』(共にテレビ東京系)などでナレーションを担当したり、2011年には処女作『イカと醤油』で小説家デビューしたりと、地味にマルチな活動を展開。
Twitterのフォロワー数が98万人以上!
そして近年、明治の乳飲料『白のひととき』のテレビCMに、マギー司郎さんと共に抜擢されたのと同じくらい特筆すべき実績が、Twitterにおける注目され具合です。
・「パードゥン?」って顔、むかつくね。
「パードゥン?」って顔、むかつくね。
— つぶやきシロー (@shiro_tsubuyaki) 2018年2月12日
・チョコレートパフェにのってるさくらんぼを食べた後、種の置き場に困るね。
チョコレートパフェにのってるさくらんぼを食べた後、種の置き場に困るね。
— つぶやきシロー (@shiro_tsubuyaki) 2018年2月8日
・高尾山なら、いつでも登りに行けるって思っているけど、登らないね。
高尾山なら、いつでも登りに行けるって思っているけど、登らないね。
— つぶやきシロー (@shiro_tsubuyaki) 2018年1月23日
つぶやきさんのアカウントからは、こんな感じの「あるあるネタ」が、ほぼ毎日更新されているのです。思わず、つぶやきボイスで脳内再生されずにはいられない、ユルくて味わいのある箴言の数々ではないでしょうか。このツイート見たさに集まったフォロワーの数が、なんと、98万人を超えているというから、時代が彼に追いついたと言う他ありません。
TwitterをはじめとしたSNSの発達により、誰もがたわいもない考えや心情をいつでも吐露できる“1億総つぶやき時代”になった現代において、20年以上も前からそれを「芸」として確立させているつぶやきさんのツイートは、今後、輝きを増し続けることでしょう。
(こじへい)