身体に障害を抱えているという理由で、入居を断られるケースがある。物議を醸しているのは、引っ越しの費用を支払うギリギリの段階で「耳が聞こえない」ことだけを理由に家主から入居を拒否されたとのツイートだ。
入金直前になって拒否「差別じゃないなら何なの?」
投稿者は家賃などの支払い能力や生活能力には問題がないにもかかわらず、聴覚に障害があるというだけで入居を断られたそう。「これ、差別じゃないなら何なの?音が聞こえないだけで?」と困惑した様子で憤りのツイートをしている。
大手企業で働いており勤務条件もしっかりと安定しているため、査定でマイナスになることはないはずだと思っていたそうで、実際引っ越しの際に障害を理由に断られるのは今回が初めてのことだった。仮申込の時点では聴覚に障害がある人を受け入れていないとの話は出ておらず、入金直前の段階で入居を拒否されたという。家主に理由を問いただすと「障害者はイヤ」というだけの理由だったにもかかわらず「差別はしてるつもりはありません」とも返答があったとのことで、投稿者は怒りを滲ませた。
法律はあってもなくならない偏見
障害があるとの理由だけで入居を拒否することは、平成28年に施行された「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)」の違反事項に該当する。同法律は障害を理由に分け隔てられることをなくし、差別を解消していくことを目的に制定されたものだ。しかし、今回のツイートに対しては「車イスですが部屋探しは本当に大変です」「障害を理由に契約の解除を不動産屋と大家に言われて行き詰まっています」といったコメントが多く寄せられた。障害を持っている人々から共感の声があがっているところを見ると、法律が施行されても偏見や差別がなくなっていない現状があるようだ。
一方で「気になるのは火災の時の避難」「非常ベルが聞こえず逃げ遅れになったら責任取れない」など、音が聞こえない人を入居させることへの家主の立場からの不安に理解を示す声もあがっている。とはいえ、一連のツイートでは「想定できることはすべて手を打ってある」「火災報知機の問題は対応可能な福祉機器があり、接続使用可能なのも確認済み」「呼び鈴問題や宅配問題については常に使っている福祉機器で解決できる」と、自身で対策していることもつづっており、リスクがあるからといって入居を断っていい理由にはならない。
投稿者は「こういう『事案』はあるあるで埋もれさせてはならない、また世の常にはさせてはいけない」「『あるある』案件が『それはないわ』案件になってほしい」との希望もツイートしている。障害を理由にした差別が依然横行し、泣き寝入りをしている人がいるという事実があるなら、社会全体で解決に取り組む必要があるだろう。
(上西幸江/HEW)