
雇用保険の制度のひとつ「教育訓練給付金」が注目されています。資格を取得したり知識を身につけたりしたい場合に、厚生労働大臣の指定する教育訓練を受講、修了すれば費用の一部を支給するというものです。
TOEICからIT系など幅広い「一般教育訓練給付金」
キャリアにつながる知識や資格を身に付けたい! でも自腹でスクールに通うと結構お金がかかるな……。そんな時に役立つのが教育訓練給付金の一種「一般教育訓練給付金」です。
仕事に直結する宅地建物取引主任者や医療事務などの資格取得だけでなく、人気のビジネス英会話やTOEIC対策講座、ウェブデザインやCG技術を学べるIT系スクールなど、給付金の対象講座はたくさんあります。
スキルアップができて、なおかつ受講費用の一部が戻ってくるこの制度。活用しない手はありません。
一般教育訓練給付金の要件と支給額
まず、給付金を受けられる資格があるか確認しましょう。給付の要件は、会社で雇用保険に通算3年以上入っていること(辞めてしまった人も通算3年以上加入で離職後1年以内なら対象)。
なお、初めてこの給付金をもらう人は、雇用保険に入っている期間が通算1年以上でよく、入社2・3年目の方でも利用しやすくなっています。受給資格があるかどうか事前に調べることもできますので、分からなければハローワークに照会してください。

支給される額は、受講のため実際に支払った金額の20%(上限10万円、4,000円以下は不支給)です。例えば実践的なビジネス英会話に1年通うと通常20万円以上かかりますから、4万円も戻ってくると助かりますよね。
一般教育訓練給付金の申請方法
申請方法はそれほど難しくはありません。住んでいる地域のハローワークに行けば自分でできます。
必要となる基本的な書類等は以下の通りです(ケースにより追加で必要となる書類もあります)。1から3は、すべて給付金の対象となるスクールから配布・発行してもらえます。
(1)教育訓練給付金申請書
(2)教育訓練修了証明書
(3)受講料の領収書
(4)運転免許証などの本人確認書類
(5)マイナンバーカード(もしくは通知書)
(6)雇用保険被保険者証あるいは受給資格者証(コピー可、なければ自分で再発行手続き可)
(7)給付金を受け取る銀行口座が確認できる通帳・キャッシュカード
看護師や公認会計士も対象 「専門実践教育訓練給付金」
看護師・美容師・調理師などの資格や公認会計士・建築士などの国家資格を取得したい。そんな場合には「専門実践教育訓練給付金」の活用を検討してみてはどうでしょうか。
長い視点でのキャリアアップが目的とされていて、一般教育訓練給付金よりも専門的な資格や技能の取得が対象です。給付金の支給率も高く設定されています。
専門実践教育訓練給付金の要件と支給額
要件は少しハードルが高くなっています。必要な雇用保険加入期間は通算3年以上ですが、初めて給付金を受ける人の加入要件が通算2年以上となっています。
通うスクール等も厚生労働大臣指定で、訓練内容や期間が細かく決められています。対象講座は厚生労働省のホームページに公開されていますので確認しておきましょう。
また、受講の1カ月前までに、訓練対応キャリアコンサルタントによるコンサルティングを受け、ジョブ・カードをもらって必要書類と共にハローワークに提出しておく必要があります(手続き後に受給資格者証がもらえます)。
支給額は、実際に支払った教育訓練経費の50%(1年間の上限40万円、対象期間の上限が3年であるため最大120万円まで。
専門実践教育訓練給付金の申請方法
必要な書類は一般教育訓練給付金と大きくは異なりませんが、申請時期が決められています。受講開始日から6カ月ごとの期間(支給対象期間)の末日の翌日から1カ月以内に申請を行います(受講修了時は修了後1カ月以内)。
提出先は、住所地のハローワークです。複数回申請する必要があるケースが多いので、忘れないように注意しましょう。
◆参考ページ:厚生労働省(教育訓練給付金)
プロフィール

社会保険労務士法人大竹事務所 大竹光明
平成12年、関西大学社会学部卒業。平成18年に大阪市城東区にて独立開業(平成20年に大阪市中央区に移転)。顧問契約している企業は、大阪を中心に製造業、建設、卸売り、飲食店など多彩で、社員数一名の中小企業から数万人の社員を抱える東証1部上場企業まで幅広い。労働・社会保険の手続き代行、リスク管理型就業規則作成、人事・賃金制度構築支援、労務管理コンサルティングなどを手がける。