橋から首吊り死体のようにぶら下げられたウェディングドレス。ドレスのポケットの中には謎めいたメモが残されていた――。


竹内結子主演のhuluオリジナルドラマ『ミス・シャーロック/Miss Sherlock』。変人の捜査コンサルタント、シャーロック(竹内結子)と凡人の相棒・和都(貫地谷しほり)のコンビが難事件に挑む。

先週配信された第5話「消えた新婦」は、タイトルを見ればわかるとおり、シャーロック・ホームズシリーズの短編「独身の貴族(花嫁失踪事件)」を元にしたもの。新婦が失踪し、ドレスだけが見つかってメモが見つかるのも、新郎のもとに押しかけてきた元交際相手の女性が最初の容疑者になるのも同じ。さて、その真相とは――? 今週もネタバレなしでお送りします。
中村倫也ファンも必見「ミス・シャーロック」5話。吊り下げられたウェディングドレスの謎

吊り下げられたウェディングドレスの謎


シニア向け婚活パーティーのチラシを見ながらニヤニヤしている「221B」の家主で未亡人の波多野君枝(伊藤蘭)。君枝は和都に「夫を亡くした女性がみんな悲しんでるなんて、ただの思い込み」と断言する。夫から解放されてイキイキする女性だっている。それがこの世の真実。シャーロックは「夫を殺して参加する人間だっているかもしれない」と追い打ちをかける。ひ、ひどい。

そんな折、シャーロックに警視庁の礼紋警部(滝藤賢一)から捜査協力の依頼が入る。人気ジュエリーデザイナーの冴木数馬(淵上泰史)と結婚した真島理紗(泉里香)が挙式当日に結婚式場の控室から姿を消したというのだ。
控室は密室で、ウェディングプランナーの横川(荻野友里)も受付にいた支配人の立川(湯江タケユキ)も、理紗の姿を一切見ていないという。

翌朝、理紗が着ていたウェディングドレスが橋から宙吊りにされているのが発見される。ドレスには「真実を知っている」と書かれ、電話番号が添えられたメモが残されていた。電話番号は冴木の元交際相手の女性・奈々美(近野成美)のもの。結婚式の打ち合わせにも押しかけていた奈々美に容疑がかけられるが、彼女にはアリバイがあった。

シャーロックはメモが書かれていたのがコンビニのレシートの裏側だったことに注目する。そのコンビニに押しかけて強引に監視カメラの映像を確認すると、婚約者を殺害した容疑者として手配されたまま、山で遭難していた男、香田(毎熊克哉)の姿が映し出されていた。香田は理紗と冴木の結婚式にも参列していた。理紗、冴木、香田、殺害された香田の婚約者・未来(梅舟惟永)との関係とは? 

子どものようなジャーロックをたしなめる中村倫也


シャーロックは子どものような人物だ。興味を持ったものは、常識ではさわってはいけないようなものでもすぐに手を出す。場合によっては持ち帰ろうとして叱られたり、和都が謝ったりする。今回はそれが顕著だった。

冴木のオフィスに行けば、飾ってあるジュエリーを手にとって「戻してください」と叱られる。
ウェディングドレスが見つかれば、遺留品を持ち帰ろうとして柴田(中村倫也)にたしなめられる。捜査一課に行ったときは、傍らで仕事をしている捜査一課長にイタズラをはじめてこれも柴田に叱られる。シリーズ当初はシャーロックに敵意を剥き出しにしていた柴田だが、だんだん子どもの保護者みたいになっているのがおかしい。『半分、青い』『崖っぷちホテル!』などで中村倫也に心奪われている人は『ミス・シャーロック』も必見だとお伝えしておこう。

それはともかく、シャーロックの子どもっぽさは、ある物事から大人の「常識」や忖度を排除し、あるがままの事実をもとに推理する姿勢と結びついている。

「ある問題からすべてのありえない事柄を排除すれば、自ずと真相は見えてくる。それがどんなに突飛な結論でも」

これはシャーロックの決め台詞。この「ありえない事柄」というのがくせものだ。最初の波多野未亡人が言う通り、多くの人は「未亡人は夫の死を悲しんでいるもの」と思い込んでいる。だから、偏見や常識にもとづいて勝手につくりあげた物語をもとに事件を推理してしまう。シャーロックはそういう“常識”と無縁の存在なのだ。

バラエティに富んだゲストにも要注目


今回、和都が戦場カメラマンの守谷徹(大谷亮平)とイイ雰囲気になるのだが、一線は拒んで帰ってきてしまうくだりがある。
和都は国境なき医師団として赴いた戦場で負った背中の大きな傷を気にしていた。戦場で負った傷があるのは、シャーロック・ホームズシリーズのワトスンと同じ。こんなところにも原作ファンへの目配りがある。

和都が通うカウンセラー・入川真理子を演じる斉藤由貴の魔性ダダ漏れっぷりもすごい。いや、まったく魔性なんか関係ない役柄なんだけど、例のスキャンダル以降どことなく痩せたようにも見える斎藤に囁かれ続けたら、どんな男でも堕ちてしまうような気がする。

『ミス・シャーロック』はゲストにもさりげなくユニークなキャスティングが行われている。冴木役を演じた淵上泰史はドラマ『昼顔』で吉瀬美智子の不倫相手を演じて注目を集めた役者。第4話のメインゲストだった安達祐実とは、映画『花宵道中』で濃厚なラブシーンを演じていた。香田を演じた毎熊克哉は、映画『全員死刑』の印象が強烈。ドラマ『みをつくし料理帖』でも非道な料理人を演じていたが、今回は役柄のイメージを逆手にとったキャスティングだった。

理紗役の泉里香はドラマ版『海月姫』でデベロッパーの稲荷翔子役で弾けていた女優さん。そして第5話のラストでは、同じく『海月姫』でジジ役を演じていた木南晴夏扮する残忍な凶悪犯・椎名由麻(見た目も演技もジジとほぼ同一)が獄中で首を吊って自殺! エンディングテーマも一段と不穏なものに差し替えられていた。


今週放送の第6話は、由麻がノートに書き綴っていた謎の言葉「マリス・ステラ」。切り落とされた右耳から事件が始まる不穏さ! 午前10時配信開始。
(大山くまお)

Huluにて配信中
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