由紀「真弓もさ、そろそろ彼でも見つけたら？」
真弓「はあ？ いまそんな余裕ないし、もうこりごりだって」
由紀「結婚はこりごりでも、恋人作るのはアリでしょ。むしろもう結婚する気がないなら、気楽に付き合えると思うし」
6月8日（金）放送の金曜ドラマ『あなたには帰る家がある』（TBS系列）第9話。
秀明（玉木宏）と離婚した真弓（中谷美紀）が、新しい恋に思いを巡らせる。後輩でカレー屋を経営する圭介（駿河太郎）か。会社の同僚、後輩たちか。それとも、茄子田太郎（ユースケ・サンタマリア）か。
こんなの、SNSや女子会で「誰がいいと思う～？」とワイワイ盛り上がりたすぎる。原作者の山本文緒は「圭介さんにしとこうよ。料理も上手だし（Twitter）」「真弓、気のせい気のせい！圭介さんにしときなって（Twitter）」と、圭介派として実況ツイートをしていた。筆者も圭介派だが、浮気され夫の茄子田も救われてほしいと思う。
今回は、綾子の不可解な言動のわけが少しずつ解き明かされていく回だった。
母親の危篤を知り、秀明の運転で病院に向かった綾子。しかし、死に目に会うことはできなかった。姉には「親不孝だね、最期まで」「（綾子は）遠い親戚のおばさん」と言われ、家族の中でかなり疎まれていることがわかる。
綾子は、秀明に自分の幼少期について話し出す。
活発な姉と、正反対の自分。運動会や遠足が嫌で、当日になると熱が出てしまうこと。そんなとき、母親が家でお弁当を並べて2人だけの遠足をしてくれたこと。
泣きながら話し、「どこにも帰れないの。1人にしないで」と秀明に頼み込む。でも、そんな泣き落としももう秀明には効かない。
これまで、どうして綾子が秀明に執着するのかよくわからなかった。もっと優しい男性も、もっと綾子を愛してくれそうな男性も、他にいくらでもいるだろう。
でも、最初にモデルルームでおこなった「夫婦ごっこ」が、綾子にとっては忘れられないものだったのだ。母親が家で2人だけの遠足ごっこをしてくれたように、綾子のために理想の真似事をしてくれた人は、秀明のほかにいなかった。
お弁当やおかずをたくさん並べる癖も、母との遠足ごっこに繋がっている。普段食卓に並ばないような品数の料理があることは、綾子にとって幸せの象徴。
綾子は、秀明に愛されたかったというよりも、ただそうしていることが幸せだった。
綾子の幸せの価値観を揺さぶってくるのが、真弓だった。
真弓は、料理はそれなりで出来合いを買って帰ることもあり、雑に見えるタイプ。でもそれは、「生活ごっこ」ではなく本当の生活をしてきたからだ。綾子には、それでも愛される真弓が理解できない。
綾子「別れたのに、自分で手放したくせに、おかしいわよね怒るなんて」
真弓「ちょっと待って、怒るって誰が？」
綾子「怒ってるじゃない。嫉妬してるじゃない。私は手放さない、だからここにいるの。あなたにも太郎さんにも、ぶたれても仕方のない覚悟でここにいるんです。私には、秀明さんしかいないの」
離婚してからたいして日が経っていないのに、元夫や不倫相手の女が自分の周りをウロウロとしていたら苛立つのは当然だ。飲食店に自分が作った料理を持ち込む綾子は、TPOをわきまえておらず非常識なのに謝りもしない。嫉妬ではなく、筋が通ってないことを怒られている。
秀明の親戚から送られてきた桃で、ムースをこしらえて持ってきた綾子に真弓は言い放つ。
真弓「それからねえ、ご存知ないみたいだから教えて差し上げる。旬の桃ってのはね、そのまま冷やしてかぶりつくのが一番！ 絶対に！ 間違いなくおいしいから」
この台詞、初見のときは唐突な負け惜しみかと思ったが、改めて聞くと痛烈だ。
加工された桃のムースは綾子のことを、そのまま冷やした桃は真弓のことを表している。たくさん工夫を重ねても愛されない綾子と、離婚して本来の自分に戻るごとに秀明に愛されていく真弓。対照的なのだ。
綾子はキッチンで1人、皮を剥きもせずそのままの桃にかぶりつく。指の間から桃の果汁がとめどなくしたたり、真弓の写真に落ちる。
おいしそうな表情にはとても見えなかった。おそらく、何の味がしているかもわからなかったのではないか。綾子が真弓の魅力を理解できないことと同じように。
一方、こどもたちのほうでもストーリーが進んでいた。
慎吾「うち、普通じゃないって言っただろ。うちの秘密、知りたい？」
茄子田家の秘密とは、8話で茄子田も言っていた綾子の消せない過去のことだろう。その秘密が明かされそうな10話は、今夜10時から放送予定だ。
ところで、慎吾と麗奈が見に行った『ラブハント!!』という映画のパンフレット。表紙の画像が、ストックフォトサービス「ぱくたそ」のものだった（モデル：河村友歌／大川竜弥）。特に大川は「日本一インターネットで顔写真が使われている男」とも言われている。
インターネット広告やWebサイト、あるいはポスターなどでも見覚えがあるモデル2人の写真。「知ってる！」と言いたくなってしまい、ドラマと現実の混ざり具合がちょっと面白かった。
（むらたえりか）
【配信サイト】
・TBSオンデマンド
・Paravi
・TVer
金曜ドラマ『あなたには帰る家がある』（TBS系列）
原作：山本文緒『あなたには帰る家がある』（角川文庫）
脚本：大島里美
プロデューサー：高成麻畝子、大高さえ子
演出：平野俊一、吉田健、松田礼人
編成：高橋正尚
音楽：兼松衆
主題歌：Superfly「Fall」（ワーナーミュージック・ジャパン）
真弓「はあ？ いまそんな余裕ないし、もうこりごりだって」
由紀「結婚はこりごりでも、恋人作るのはアリでしょ。むしろもう結婚する気がないなら、気楽に付き合えると思うし」
6月8日（金）放送の金曜ドラマ『あなたには帰る家がある』（TBS系列）第9話。
秀明（玉木宏）と離婚した真弓（中谷美紀）が、新しい恋に思いを巡らせる。後輩でカレー屋を経営する圭介（駿河太郎）か。会社の同僚、後輩たちか。それとも、茄子田太郎（ユースケ・サンタマリア）か。
こんなの、SNSや女子会で「誰がいいと思う～？」とワイワイ盛り上がりたすぎる。原作者の山本文緒は「圭介さんにしとこうよ。料理も上手だし（Twitter）」「真弓、気のせい気のせい！圭介さんにしときなって（Twitter）」と、圭介派として実況ツイートをしていた。筆者も圭介派だが、浮気され夫の茄子田も救われてほしいと思う。
イラスト／Morimori no moRi
綾子の不可解な癖のルーツ
今回は、綾子の不可解な言動のわけが少しずつ解き明かされていく回だった。
母親の危篤を知り、秀明の運転で病院に向かった綾子。しかし、死に目に会うことはできなかった。姉には「親不孝だね、最期まで」「（綾子は）遠い親戚のおばさん」と言われ、家族の中でかなり疎まれていることがわかる。
綾子は、秀明に自分の幼少期について話し出す。
活発な姉と、正反対の自分。運動会や遠足が嫌で、当日になると熱が出てしまうこと。そんなとき、母親が家でお弁当を並べて2人だけの遠足をしてくれたこと。
泣きながら話し、「どこにも帰れないの。1人にしないで」と秀明に頼み込む。でも、そんな泣き落としももう秀明には効かない。
これまで、どうして綾子が秀明に執着するのかよくわからなかった。もっと優しい男性も、もっと綾子を愛してくれそうな男性も、他にいくらでもいるだろう。
でも、最初にモデルルームでおこなった「夫婦ごっこ」が、綾子にとっては忘れられないものだったのだ。母親が家で2人だけの遠足ごっこをしてくれたように、綾子のために理想の真似事をしてくれた人は、秀明のほかにいなかった。
お弁当やおかずをたくさん並べる癖も、母との遠足ごっこに繋がっている。普段食卓に並ばないような品数の料理があることは、綾子にとって幸せの象徴。
だから、茄子田家でたくさんのおかずを作ることも苦にならなかったし、バーベキューにもピクニックにもカレー屋にも、並べきれないほどの料理を持参する。
綾子は、秀明に愛されたかったというよりも、ただそうしていることが幸せだった。
旬の桃はそのまま食べるのがおいしい
綾子の幸せの価値観を揺さぶってくるのが、真弓だった。
真弓は、料理はそれなりで出来合いを買って帰ることもあり、雑に見えるタイプ。でもそれは、「生活ごっこ」ではなく本当の生活をしてきたからだ。綾子には、それでも愛される真弓が理解できない。
綾子「別れたのに、自分で手放したくせに、おかしいわよね怒るなんて」
真弓「ちょっと待って、怒るって誰が？」
綾子「怒ってるじゃない。嫉妬してるじゃない。私は手放さない、だからここにいるの。あなたにも太郎さんにも、ぶたれても仕方のない覚悟でここにいるんです。私には、秀明さんしかいないの」
離婚してからたいして日が経っていないのに、元夫や不倫相手の女が自分の周りをウロウロとしていたら苛立つのは当然だ。飲食店に自分が作った料理を持ち込む綾子は、TPOをわきまえておらず非常識なのに謝りもしない。嫉妬ではなく、筋が通ってないことを怒られている。
秀明の親戚から送られてきた桃で、ムースをこしらえて持ってきた綾子に真弓は言い放つ。
真弓「それからねえ、ご存知ないみたいだから教えて差し上げる。旬の桃ってのはね、そのまま冷やしてかぶりつくのが一番！ 絶対に！ 間違いなくおいしいから」
この台詞、初見のときは唐突な負け惜しみかと思ったが、改めて聞くと痛烈だ。
加工された桃のムースは綾子のことを、そのまま冷やした桃は真弓のことを表している。たくさん工夫を重ねても愛されない綾子と、離婚して本来の自分に戻るごとに秀明に愛されていく真弓。対照的なのだ。
綾子はキッチンで1人、皮を剥きもせずそのままの桃にかぶりつく。指の間から桃の果汁がとめどなくしたたり、真弓の写真に落ちる。
おいしそうな表情にはとても見えなかった。おそらく、何の味がしているかもわからなかったのではないか。綾子が真弓の魅力を理解できないことと同じように。
こどもたちが共有する秘密とフリー素材
一方、こどもたちのほうでもストーリーが進んでいた。
祖母に嫌味を言われ、茄子田に咎められ、家を飛び出した慎吾（萩原利久）。心の優しい麗奈（桜田ひより）を頼る。「俺、もうぶっこわれそうだ」と泣く慎吾を見て、麗奈のほうが泣いてしまう。
慎吾「うち、普通じゃないって言っただろ。うちの秘密、知りたい？」
茄子田家の秘密とは、8話で茄子田も言っていた綾子の消せない過去のことだろう。その秘密が明かされそうな10話は、今夜10時から放送予定だ。
ところで、慎吾と麗奈が見に行った『ラブハント!!』という映画のパンフレット。表紙の画像が、ストックフォトサービス「ぱくたそ」のものだった（モデル：河村友歌／大川竜弥）。特に大川は「日本一インターネットで顔写真が使われている男」とも言われている。
インターネット広告やWebサイト、あるいはポスターなどでも見覚えがあるモデル2人の写真。「知ってる！」と言いたくなってしまい、ドラマと現実の混ざり具合がちょっと面白かった。
（むらたえりか）
【配信サイト】
・TBSオンデマンド
・Paravi
・TVer
金曜ドラマ『あなたには帰る家がある』（TBS系列）
原作：山本文緒『あなたには帰る家がある』（角川文庫）
脚本：大島里美
プロデューサー：高成麻畝子、大高さえ子
演出：平野俊一、吉田健、松田礼人
編成：高橋正尚
音楽：兼松衆
主題歌：Superfly「Fall」（ワーナーミュージック・ジャパン）
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