両者ともに歯に衣着せぬ発言で何かと物議をかもしながらも、番組出演は増加の一途。
00年代初頭にこのポジションで大ヒール(悪役)となったのは細木数子さん。今よりテレビが元気で影響力が大きかった時代。まさにズバズバと切って捨てる「猛毒」を武器に、話題の人となっている。
その代表番組こそ『ズバリ言うわよ!』。TBS系で04年8月から08年3月まで放送された、細木さんによる芸能人の人生相談を軸としたバラエティ番組だ。
実は占い番組ではなかった!?『ズバリ言うわよ!』
TBSは、『ズバリ言うわよ!』は「細木氏が日本各地で開いてきた勉強会(悩み相談)の経験がベースになっており、細木氏による『占い』ではなく、その勉強会で培った『人生観』が発言、番組主旨の根拠になっております。したがって、『占い』により番組を構成、進行しているものではございません」と明言しているが、当時は誰もが「人生を占う番組」だと思っていたはず。
そもそも、細木さんは80年代に独自に生み出した(とされる)「六星占術」に関する書籍がベストセラーになり、人気占い師となった方。番組で毎度飛び出す「殺界」「大殺界」なる単語は、六星占術の用語だ。「占う」という言葉もよく使われていた気がするが……。
実は、前述のTBSの番組説明は、BPO(放送倫理・番組向上機構)に寄せられた意見に対する回答。放送法が定めるよう義務付けている番組基準に「占い、運勢判断およびこれに類するものは、断定したり、無理に信じさせたりするような取り扱いはしない」という項目があるため、その言い逃れとしか思えないのである。
ともかく、番組の存在自体がグレーゾーンの上、その細木さんの言動や振る舞いも含め、BPOにはクレームが殺到しまくっていたのだ。
恐怖の決め台詞「あんた死ぬわよ」!
何しろ、細木さんは口が悪い。
ゲストの芸能人を「バカ野郎」「能無し」など口汚く罵倒し、しまいには「あんた死ぬわよ」「地獄に落ちる」など、物騒な予言(?)が飛び出す始末。
『北斗の拳』や『ブラックエンジェルズ』も真っ青の死神ぶりである。
病気や自殺など、命の危険を感じさせて恐怖をあおりまくるスタイルは、見ていて決して愉快なものではなかった。(一応、バッドエンドの回避策を伝えるのだが、大体が先祖供養だった印象)
若者への説法、小言の類いはある意味正論だったのかも知れないが、「常識」や「マナー」の大切さを説きながら、自身があまりに「非常識」で「マナー破り」だったことも、アンチを拡大する要因だったと思う。
あのハリウッドスターまで鑑定されていた!?
しかし、アンチの多さも含め、そのアクの強いキャラクターは話題を呼んだ。番組の平均視聴率は16.3%、最高視聴率は23.5%。かなりの好成績である。
当初はイジりやすいお笑い芸人やピークを過ぎた俳優がメインだったが、ウィル・スミスやオーランド・ブルーム、BON JOVI(ボン・ジョヴィ)のメンバーなどの世界的スターまでゲスト出演し、鑑定されたほど。ブームの勢いは凄まじいものがあった。
細木数子は「霊能者」でもあったのか?
細木数子さんは、「霊は見えない」と断言しながらも、「霊的な存在の因果」はよくほのめかしていた印象。「霊視」や「除霊」的なことも口にすることから、「霊能者」寄りの立ち位置にいたことは間違いない。
95年のオウム真理教による一連の事件により、霊能者を扱う番組が一時期激減していたが、21世紀になって少しずつ復活。
霊能者ポジションを長くキープしていた宜保愛子さんもすでに亡くなり、その後釜的な存在となったことも人気にひと役買ったのではないか。
オカルト要素をスパイスに、パワフルに叱咤激励していくスタイルは、細木さんならではのカラーといえるだろう。
同時期、よりスピリチュアルに特化した江原啓之さんも表舞台に登場。
混迷の時代を生きる現代人は“どんな形であれ”心の支えを求めてしまうようである。
(バーグマン田形)