チケットキャンプの終焉 問題点や転売をめぐる状況をおさらい
画像はイメージ

2018年5月31日。チケット転売サイト『チケットキャンプ』がひっそりとサービスを終了した。
2017年12月に警察の捜索を受けてサービスを停止してから、約半年。チケットの高額転売という問題を世に突きつけたチケキャン問題をおさらいし、転売をめぐる現状を考えてみよう。


チケットキャンプ問題の経緯は?


チケットキャンプの名前をニュースで見て始めて知った人もいるかもしれない。そもそもどんなサービスで、どんな事件だったのだろうか。

チケットキャンプとは? CMでも話題


チケットキャンプは音楽コンサートや演劇、スポーツなどのチケットをユーザー同士がネット上で売買する、いわゆる転売サイト。『チケキャン』の略称でも知られる。
株式会社フンザがチケキャンを始めたのは2013年。2015年にはIT大手の株式会社ミクシィが全株式を買収し、子会社化した。
その後、犬の着ぐるみを着たタレント小島瑠璃子が「キャンキャン チケキャン」とPRするテレビCMが話題を呼ぶなど、急速に知名度がアップ。フンザの発表によると2017年3月には登録会員数が300万人を突破。日本最大級の転売サイトに成長していった。

チケキャンに警察捜査


好調なチケキャンに衝撃が走ったのは2017年12月7日のこと。フンザが兵庫県警から家宅捜査を受けたのだ。しかも続いて京都府警からも捜索を受けた。わずか1カ月足らずの間に2度の捜索という異例の事態だった。

かけられた容疑の内容は?


実は2府県警から受けた捜索の容疑は異なる。
兵庫県警から受けた捜索容疑は、商標法違反と不正競争防止法違反。これは運営していたサイト「ジャニーズ通信」がジャニーズ事務所の商標権を侵害したなどの疑いがあるというものだ。2018年6月には親会社であるミクシィ社長(当時)、フンザ元社長らが商標法違反容疑で書類送検された。
一方、京都府警からの捜索容疑は詐欺。転売目的でコンサートチケットを不正入手した疑いで調べていた転売業者の関係先として、フンザに捜索が入ったのだ。2018年1月にフンザの元社長と転売業者が詐欺容疑で書類送検されたが、いずれも3月に起訴猶予処分となった。

サービスの停止から閉鎖へ


2017年12月7日に兵庫県警からの捜索を受け、チケキャンはすぐにサービスを停止。その後京都府警からの捜索を受けると、同月27日に、2018年5月末をもってサービスを終了することを発表した。
家宅捜査から1カ月足らず。あっという間の決定だった。
チケットキャンプの終焉 問題点や転売をめぐる状況をおさらい
画像はチケットキャンプお知らせページのスクリーンショット

チケキャンの問題点は? トラブルも


チケキャンにはこれまで、高額転売をあおっているとして批判の声があがっていた。閉鎖によって購入者トラブルも発生したという。

転売業者への手数料優遇策


大きな問題点と言えるのが、転売業者への優遇策。
オークションやチケットサイトで売買を行う場合、出品者も購入者も手数料が発生することが多い。それが運営側の収入にもなっている。
ところがミクシィの報告書によると、チケキャンでは他社サイトで取引量の多いの出品者を「VIP会員」として手数料割引などの優遇策を実施。チケキャンで販売するように囲い込みを行っていたという。

高額転売をあおる手法に批判


チケキャンでは嵐のコンサートや宝塚歌劇のチケットの取引手数料を出品者、購入者ともに無料にするキャンペーンを実施。これは明らかに転売を助長するもので、ジャニーズからの抗議を受け、予定よりも早くキャンペーンを終えた。
こういった手法に批判が集まり、チケキャンは1公演について出品できる枚数を4枚までに制限し、大量出品を抑制。出品の際の本人確認を厳しくするなどの対策をした。だがルール変更後すぐに警察の捜索は入った。

チケキャン閉鎖で混乱 購入者の嵐ライブ入場拒否も


チケキャンの閉鎖後も取引済チケットはそのまま引き渡されたが、一部では混乱も起きた。
サービス停止後に開催された人気アイドルグループ「嵐」のコンサートでは、チケキャン経由で購入した人が運営側から声をかけられ、事情をきかれたという。




高額転売が横行、高まる批判


今回はチケキャンに捜査が入ったが、転売サービスはいくつもある。オークションサイトやフリマアプリでは、いまだにチケットが高値で転売されている。

ジャニーズ、宝塚、カープなどが高値に


ジャニーズはファンが多いが、中でも嵐のコンサートは特に人気が高い。転売されたチケットは数十万円で販売されることも珍しくない。宝塚歌劇も10倍ほどの値段がつくこともあり、特に退団公演などは高値になりがちだ。
またプロ野球・広島東洋カープのチケットも、球団人気の高まりとともに入手がより困難に。カープでは毎年一年分のチケットをまとめて売り出しており、激しい争奪戦で高額転売が後を絶たない。

チケットの高額転売は社会問題化


チケットを転売業者が大量入手すれば、一般の人は入手しづらくなる。チケット購入倍率も上がり“プラチナチケット”と化す。
運営側にとってもダメージが大きい。高額転売されてもその差額はアーティストらに還元されるわけではない。またチケットが手に入らないとなれば、ファンの心も離れてしまうかもしれない。今やチケットの転売問題は社会問題となっている。

音楽団体などから批判声明も


この状況にアーティストらも自ら声を上げ始めた。2016年8月には音楽業界4団体が「チケット高額転売反対」の共同声明を発表。多くのアーティストが賛同した。直接国会議員に法整備も求めてきた。
本人確認の強化、電子チケットの導入、当日発券システム、顔認証などあらゆる対策がとられ始めている。ファンも本人確認に協力したり、SNSで転売NOを訴えたりするなど、不正転売の包囲網は確実に縮まってきている。


代わりのチケットサイトを求める声続出 一方で法規制も


だが高いお金を払ってでも公演に行きたいという人は少なからずいる。チケキャンがなくなっても、別のサービスを利用するだけのイタチごっこだという指摘もある。
チケットキャンプの終焉 問題点や転売をめぐる状況をおさらい
現在のチケットキャンプのトップページ 画像はスクリーンショット

チケキャンに代わり使われているサービスは?


チケキャンの閉鎖直後から、別のサービスに流れる人は後を絶たない。
同じ転売サイトとして有名なのが「チケット流通センター」や「チケットストリート」。その他にはヤフオクなどのオークションサイト。メルカリなどのフリマアプリの利用者も多い。またTwitterにチケットの販売や買い取り希望の投稿をする人もいる。もちろんチケットショップの店頭で買う手段もある。
チケット転売のチャンネルはたくさんあり、これから新サービスが誕生する可能性だってあるのだ。

チケットサイトは絶対悪ではない


チケットサイトの本来の目的は、急な都合で行けなくなってしまった公演のチケットを行きたい人に譲ること。趣旨としては何らおかしな点はない。win-winなシステムだ。
そこでチケットを券面価格で売買する音楽業界公認のチケットサービス『チケトレ』も始まった。人気公演でもアリーナ席でも、値段は釣り上がらない。ただ手数料が高すぎるという声もあり、なかなか広がっていない。

チケット高額転売に法規制も


高額転売への批判、そして2020年の東京オリンピックの開催を見据え、国も法規制を検討している。今の日本にはダフ屋行為を禁止する都道府県の条例があるが、あくまで駅などの公共の場のみ。ネット上のダフ屋の取り締まりは難しかった。
そこで一部の国会議員がチケットの高額転売を禁止する新しい法案を提出する予定だ。不正転売として認定されると、懲役一年以下または罰金100万円以下が課されるという罰則も盛り込まれている。
東京オリンピック、パラリンピックで世界の恥さらしとならないよう、急ピッチで対策が進められている。


まとめ


チケキャンの事件は転売対策を考える一つのきっかけとなる事件だ。公演の運営者、オークションサイトなどの運営者、国、そしてファン。それぞれが転売NOを実行できるか、これからの動きに注視したい。
編集部おすすめ