連続テレビ小説「半分、青い。」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)
第16週「抱きしめたい!」第91回 7月16日(月)放送より。 
脚本:北川悦吏子 演出:田中健二

91話はこんな話


鈴愛(永野芽郁)と涼次(間宮祥太朗)はささやかに祝言をあげた。

思い出ツアー


16週のサブタイトルは 「抱きしめたい!」。
エキレビ!の毎日「半分、青い。」レビューは描かれている時代に流行ったドラマや楽曲をサムネイル画像として紹介しているため、このサブタイトルとあればどうしたって、W 浅野(浅野ゆう子、浅野温子)主演のトレンディドラマ(88年、フジテレビ)を思い浮かべ、サムネイルに使いたくなってしまう(思い出さない、知らないって人もいるとは思います、あしからず)。
人気で何回もスペシャルドラマが制作され、99年にも世紀末スペシャルが放送されている。
「半分、青い。」91話。もう結婚。厳かなる祝言にて、鈴愛ドジっ子っぷりを発揮
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さて。かしこまって「娘さんをください」と楡野家一同に挨拶しようとして涼次は緊張のあまり笑いだしてしまったが、仙吉(中村雅俊)が率先して笑いだしてフォロー、事なきを得る。
鮎の甘露煮をいただいたり、宇太郎(滝藤賢一)と酒を酌み交わしたり、鈴愛の子ども部屋で寝転がって天井の龍を見たり(思い出ツアー)、みかんを浮かせたお風呂を沸かしてもらったり、茶の間に布団を敷いてもらってシーツがパリッとしていたり、ドテラを出してもらったり、あたたかい歓迎を受ける涼次。
楡野家も「うれしくなってしまって」を2回繰り返す(Byナレーション)ほど涼次の存在を嬉しく思っているようだ。

晴(松雪泰子)は、鈴愛に祖母(風吹ジュン)から受け継いだふくろうのブローチを託す(目がサファイアで口がルビーのキラキラしたもの)。ふくろうは幸運のお守りだ。

「僕には家族がいなかった」


夜、涼次は、父母が亡くなったときのことを思い出して泣く。
絵の仕事をしていた父が妻を伴って海外に行くため空港に向かう途中、交通事故に遭って亡くなったことが明かされた。
「いってらっしゃいがあったらおかえりなさいがあるでしょ ふつう」
「いってらっしゃいのまま 終わるってことはないでしょ ふつう」
「僕には家族がいなかった」
と泣く涼次に鈴愛は「私が家族になるよ」と抱きしめる。

この話を三おば(キムラ緑子、麻生祐未、須藤理彩)が聞いたらどう思うのだろう。
これまでちらほら出てきたエピソードを見ると、この三人は両親のいない甥を溺愛(猫可愛がり)していたようなのだが結局「家族」にはなれなかったということか。
どんなに大事にされても「親」ではないから喪失感は拭えなかったとは思うが、あの三人のパーソナリティを見ているとそれなりに楽しく生活していたのではないのかと想像してしまうが・・・。

是枝裕和監督の「万引き家族」ではないが、血が繋がってなくても家族(三おばは血縁だが)という考え方が注目されてくるのは2010年代、震災以降であり、戦前は当たり前だった“大家族”からは遠く離れて、この時代は“核家族”が主流。そのため涼次にとっての「家族」の認識はとても狭いのであろう。

また、このドラマはユーチューブ時代にふさわしい短い刺激のものを刹那的に楽しみ、それが絶え間なく続くタイプのドラマであって、ひとつの場面や台詞にあるサブテキストや、各エピソードが丁寧に繋がっているものを求めることはナンセンスなのだとも思う。

小さい頃の鈴愛ちゃんに会いたかった


「小さい頃の鈴愛ちゃんに会いたかったなあ」とつぶやいた涼次。
うん、小さい頃は健気でかわいかったよ・・・と子供編をなつかしむ視聴者も少なくないのではないか。
涼次のために敷いた布団にでんぐり返しして最初に横たわってしまうアクションは、無邪気さを表現したかったのだろうけれど、小姑属性の強い人間にとっては顔をしかめそうなもの。
何がどうなると鈴愛はこんなに自由気ままで野放図な人間に育つのか。「岐阜の猿」と呼ばれるキャラ設定なので仕方ないのか。
鈴愛の野放図っぷりは祝言の場でも炸裂。裾を踏んでつんのめってしまったところで、つづく。

結婚式で失敗する鈴愛と結婚相手の両親への挨拶で笑ってしまう涼次はドジっ子なところが似たもの同士でお似合であり、仕事と恋を失った鈴愛と家族のいない涼次、傷をなめ合う同士でもあるとナットクするも、91話も順調に「サザエさん」や「ちびまる子ちゃん」路線。
7月16日(月)は本放送のあと「もてなし家族に福きたる!平野レミの早わざレシピ」というお料理番組が放送され、これが中山秀征、吉田羊、小芝風花が親子に扮した家族コントと平野レミのレシピ紹介を合わせたものだ。

平野レミも料理の腕はいいがたいがい素っ頓狂な人で、「半分、青い。」もこういうドタバタした世界と思えばいいのかもしれないが、そんなのばかり続けて見せられてもなあ・・・という気もしないでない。
中村雅俊がゲストで、澤部佑演じる寅さんみたいな男に「鈴愛ちゃんを紹介して」と言われて「テレビ見てないの、もう結婚しちゃったよ、見てよテレビ」と番宣に協力していた。すべてはバラエティー感覚だ。

話を戻して91話。祝言で、ひとりアップがないままビデオカメラを回している献身的な斎藤工(元住吉役)が、豪雨による被災地でボランティア活動をする姿と重なって見えた。
(木俣冬)
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