「ハリー・ポッター」の魔法世界を総ざらい 本・映画からUSJまで
画像出典:Amazon.co.jp「ハリー・ポッターと賢者の石

ハリー・ポッターシリーズの分厚い本を、時間も忘れて読みふけっていた人もいただろう。1997年にイギリスで発売されたハリー・ポッターシリーズは、日本版が1999年に発売され日本国内でも人気を獲得した。その後、本だけでなく映画やUSJのアトラクションになるなど何かと話題を呼んだハリー・ポッターは、今も人々の心の中に生き続ける名作ファンタジーだ。「ハリポタ」ブームから現在までのシリーズ展開を、時間を置いた今だからこそ振り返ってみたい。


魔法使いの世界を描いた「ハリー・ポッター」シリーズ


「ハリー・ポッター」シリーズは魔法使いの世界を描いた大作児童文学。どのような世界観やストーリーかおさらいしてみよう。

J.K.ローリングの描いたハリー・ポッターの世界


ハリー・ポッターは、現代の魔法使いの世界を描いたファンタジーだ。ハリー・ポッターという主人公が、魔法学校であるホグワーツに通う7年間をシリーズ化した。

特徴は、古代や中世ではなく、あくまで現代を舞台にしたところだろう。ハリー・ポッターの世界では、普通の人間(マグル)が住む場所のすぐそばにある、キングス・クロス駅ホームの「9と4分の3番線」のように、魔法使いたちの世界が人間の世界とリンクしているリアルさが新鮮だった。

それでは、なぜ現代の魔法使いの世界を描こうと著者は思ったのだろうか。実は、イギリスは魔法における関心が高く、一部信仰している国でもある。魔女と魔法の博物館という施設があるほど、魔法への関心度は高く、過去には天使と意思疎通ができる魔術師もいたと言い伝えられているほどだ。現代での魔法はあくまで想像の世界ではあるが、そうした魔法への興味は、日本の妖怪などと似たようなものがあるかもしれない。

ハリー・ポッターで描かれたのは、現代が舞台にはなっているものの、そうしたイメージとしての魔法の世界を実によく表現していた。たとえば、呪文を唱えて魔法をかけるところ、ほうきに乗って空を飛ぶところ、もちろん現代的なものもあったが、多くが中世的な雰囲気のある魔法界の姿だった。

ハリー・ポッターの世界で登場した有名な呪文
ハリー・ポッターの魔法使いの世界では、魔法使いのイメージそのものである呪文も多く登場している。一部、シリーズでよく登場した有名な呪文を紹介する。

オキュラス・レパロ:ハーマイオニーがハリーと初めて出会ったときに唱えた呪文。メガネを直す際に使った。
ウィンガーディアム・レヴィオーサ:浮遊の呪文。ほうきの練習で登場した。
ルーモス:光を呼ぶ呪文。各シリーズで多用されている。
エクスペクト・パトローナム:守護霊を呼ぶ呪文。シリーズでハリーが何度も使用した。
アバダ・ケダブラ:魔法使い禁忌の死の呪文。

ハリー・ポッターシリーズ各作品のあらすじ


ハリー・ポッターシリーズは全部で7作が発表されている。ハリーがホグワーツで過ごす7年間をシリーズ化したものだ。各話どのような内容になっているのか、簡単にあらすじをみていこう。

1作目.ハリー・ポッターと賢者の石
父と母を幼いころに亡くした本作の主人公であるハリー・ポッターは、もうすぐ11歳の誕生日を迎える少年。母親の妹の家族に引き取られて生活していたが、おばさんとおじさんにはいとこのダドリーと差別されてひどい扱いを受け、さらにダドリーからもいじめを受けていた。そんな中、ホグワーツ魔法魔術学校より入学許可証が届く。入学許可証の存在を知り必死に隠すおばさんやおじさんだったが、ついに入学許可証は開封され、母と父の本当の正体を知ることになる。ハリーの母と父は、本当は魔法使いだったのだ。これまで知らなかった自身の母と父の本当の姿を知ったハリーは、魔法使いとしてホグワーツに入学することを決めるのだった。ホグワーツでこれから、さまざまなできごとに巻き込まれるとも知らず……。


ハリー・ポッターと秘密の部屋
ホグワーツ魔法魔術学校での1年生を修了し、おばのいるダーズリー家で過ごしていたハリー。そこへ屋敷しもべといわれる、大きな目に尖った耳、ゴブリンのような見た目をした妖精ドビーが現れる。ハリー・ポッターはホグワーツに行ってはいけないというのだ。そんなドビーの警告と邪魔を押し切り、迎えに来たホグワーツの魔法使い仲間のロンと一緒にホグワーツに行ってしまうハリー。ホグワーツに隠された部屋、秘密の部屋にかかわる恐ろしいことがはじまろうとしていた。


ハリー・ポッターとアズカバンの囚人
ホグワーツ魔法魔術学校3年目に突入する長期休みの間、またダーズリー家に身を寄せることになったハリー。相も変わらずおばとおじの陰湿ないじめを受けていた。耐えかねたハリーは、人間界では使用を禁止されていた魔法を使っておばを膨らませてしまう。そして、魔法省からの罰を恐れ、一人夜の騎士バスに乗り込んだ。バスの3階に上ると、なんと一番会いたくなかった魔法省の大臣が待っていた。しかし、ハリーが魔法を使ったことをとがめるのでもなく、ハリーを送り届けた居酒屋で一晩過ごせという。大臣によると、ハリーの父と母の仇であるヴォルデモート卿に両親を引き合わせ、間接的に死に追いやったといわれるシリウス・ブラックが、アズカバンから脱獄し、ハリーを殺そうとしているというのだ。またハリーの人生を大きく動かすホグワーツでの3年目がはじまった。


ハリー・ポッターと炎のゴブレット
夏休みに友達のロンの家族と一緒に、ほうきを使った魔法界の競技、クィディッチ・ワールドカップを観戦しに行ったハリー。そこで大きな闇が襲いかかり、13年ぶりに不吉な闇の印が空に現れる。それは、かつて魔法使いたちを恐怖に陥れたヴォルデモート卿の復活を暗に意味していた。ときは変わって、ホグワーツで4年生になったハリー。実は、ハリーが4年生を迎える年は特別な時期で、100年に一度開催される、ホグワーツ魔法魔術学校、ボーバトン魔法アカデミー、ダームストラング専門学校の3校による三大魔法対抗試合が開催される時期だった。炎のゴブレットに名前を入れて立候補したもののうち、各学校の代表が炎のゴブレットによって選ばれるという。しかし問題があった。代表となれるのは17歳以上の選手で、ハリーには出場権がなかったのだ。


ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団
ホグワーツから戻り、ダーズリー家で過ごしていたハリーは突如、魂を食らうディメンターに襲われる。そこにはいとこのダドリーもいたが、防衛のために人間の前では使用してはいけない魔法を使用してしまった。これが問題となり、ホグワーツからの除籍を受けるハリー。唯一ホグワーツに戻るには、魔法省の尋問会で身の潔白を証明する必要があった。しかし、尋問会といっても形だけのもの。ハリーが有罪となるのは明らかだ。そこへ現れたのが、ホグワーツの校長、ダンブルドアだった。無事、有罪を逃れたハリーは、来るヴォルデモート卿の脅威に対抗するためにダンブルドア軍団を、校長のダンブルドアは不死鳥の騎士団を結成する。これはまだ、ヴォルデモート卿との全面戦争の幕開けだった。


ハリー・ポッターと謎のプリンス
魔法界は、ヴォルデモート卿の復活の脅威にさらされていた。かつて安全だったホグワーツも、安全な場所ではなくなってしまう。ハリーたちは、きたるヴォルデモート卿との最終決戦のために備えることしかできなかった。そこでハリーが知ったのが、分霊箱といわれるヴォルデモート卿が自身の魂を分けて保管している箱の存在だ。分霊箱は全部で7つあり、全てを破壊しないとヴォルデモート卿の復活を阻止できないことがわかった。そうと決まればやれることはただ1つ。ヴォルデモート卿の分霊箱を捜して破壊することだ。


ハリー・ポッターと死の秘宝
ヴォルデモート卿復活を阻止するために、分霊箱を探す旅に出たハリー、ロン、ハーマイオニーの3人。先の戦いによって、頼れる師や仲間の多くを失ってしまった3人は、信じて突き進むしかなかった。しかし、分霊箱を捜しているうちに、死の秘宝と呼ばれる存在があることがわかる。しかも、その死の秘宝と呼ばれるものは分霊箱以上の力があり、すぐにでもヴォルデモート卿を復活させる力があるかもしれないというのだ。これ以上大切な人を失わないために、ヴォルデモート卿が完全に復活しないために、3人はあてのない旅をはじめる。しかし、すでに死の秘宝3つのうち2つは闇の手に渡っていた。


世界的ヒットとなったハリー・ポッターシリーズ


ファンタジックな世界観で、子どもも大人も楽しめる内容は一躍世界のヒット作となった。1~7シリーズまでのハリー・ポッターシリーズは世界64カ国に翻訳され、発行部数は4億をこえている。

中でもシリーズ最高となったのが、第3シリーズの「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」だ。1億8000万部の売上となり、前作の「ハリー・ポッターと秘密の部屋」売上部数4800万部、前々作の「ハリー・ポッターと賢者の石」売上部数3400万部の数字をゆうに超えてきた。

「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」に次いで売上部数が多かったのが「ハリー・ポッターと死の秘宝」だった。シリーズ最後の作で、9400万部にまで達するも、第3シリーズを超えるヒットとはならなかったが、大きく売上部数を伸ばした。


映画版ハリポタも世界的ヒット


原作の世界的な反響をうけて制作された映画版のハリー・ポッターシリーズは、高額な制作費をかけて作られた。グラフィックの美しさだけでなく、現存する中世を感じる寺院を使った撮影や衣装まで、随所にこだわりが感じられる映画版は、まさに原作がそのまま映像として飛び出してきたようだった。

映画版の反響も大きく、シリーズ1作目は約1014億円、シリーズラストにいたっては約1395億円の興行収入となった。どちらも、世界歴代50位には入る大作だ。原作とはまた違う、映像で表現されるハリー・ポッターの不思議で美しい世界に魅了された人も多いだろう。

そんな世界的なヒットの立役者となったのが、シリーズを飾るキャストだ。今一度、ハリー・ポッターシリーズに登場した主なキャストを振り返ってみよう。

ダニエル・ラドクリフ(ハリー・ポッター役)
いわずと知れたハリー・ポッターの主人公を演じたのが、ダニエル・ラドクリフである。もともと子役として活動していたが、ハリー・ポッターシリーズに出演したことで大きな注目を集めた。第1作「賢者の石」に登場したころは、まだ10代前半。彼の成長を映画で見守った人も多かったことだろう。ハリー・ポッターシリーズ終了後は、映画「ウーマン・イン・ブラック 亡霊の館」の主演を演じるなど俳優としての活動を続けている。

ルパート・グリント(ロン・ウィーズリー役)
ルパート・グリントは、ハリー・ポッターシリーズでは、ハリーの親友であるロンとして出演した。ロン役を決めるオーディションでは、いかに自分がロン役に向いているか熱くアピールしたという。ハリー役のダニエル同様、全シリーズに渡って登場した。そんなロンを演じたルパート・グリントもまた、フランスの映画に出演するなど俳優として活動している。

エマ・ワトソン(ハーマイオニー役)
ハリー・ポッターシリーズに登場し、さらに売れた人といえば、エマ・ワトソンだろう。エマは、ハリー・ポッターシリーズのヒロインでもあり、ハリーの友人でもあるハーマイオニー役として出演した。ダニエルや、ルパート同様全作に出演している。賢者の石デビュー当時は、わずか10歳だった。そのキュートな少女時代から大人になっていくエマの姿に、思わずキュンとした人もいるのではないだろうか。その後、ハリウッド女優として活躍し、トップスターの仲間入りを果たした。ここ最近の作品でよく知られるのが映画「美女と野獣」だ。さらに、世界でもっとも美しい顔100に選ばれるなど話題にもこと欠かない。実は、ブラウン大学を卒業した才女でもある。

トム・フェルトン(ドラコ・マルフォイ役)
ハリー・ポッターシリーズでは、スリザリンの嫌な奴、ドラコ・マルフォイを演じたトム。トムもまた、映画「猿の惑星:創世記」に出演するなど俳優としての道を進んでいる。

マシュー・ルイス(ネビル・ロングボトム役)
マシュー・ルイスは、ハリーやロン、ハーマイオニーと同じグリフィンドール生で、おばあちゃん好きのおっちょこちょいなネビル・ロングボトムとして出演した。日本であまり目にする機会はなくなってしまったが、イギリスのドラマシリーズに出演するなど、イギリスではしっかり俳優としてのキャリアを積んでいる。

ゲイリー・オールドマン(シリウス・ブラック役)
ゲイリー・オールドマンは、ハリー・ポッターシリーズで、ハリーの名づけの親であるシリウス・ブラックとして登場している。脱獄者という設定だったことからか、ワイルドな演技が光った。ここ最近では映画「ウィンストン・チャーチル|ヒトラーから世界を救った男」でも注目されている俳優だ。同作は、メイクを施した辻一弘がアカデミー賞メイクアップ賞で受賞したことでも有名になった。

アラン・リックマン(スネイプ役)
ハリー・ポッターシリーズでカギを握る人物、スネイプ先生役として出演した。ハリーにとって嫌な先生という存在だったが、作品を最後まで見た人なら彼がハリー・ポッターシリーズでにとってなくてはならない存在だとわかるはずだ。残念ながら膵臓がんで2016年に亡くなった。


スピンオフ映画「ファンタスティック・ビースト」シリーズが進行中


原作からはじまり、映画に至るまで世界に大きな影響を与えてきたハリー・ポッターシリーズ。実は、ハリー・ポッターの世界観を残したスピンオフ映画が公開されるのはご存じだろうか。その名は、「ファンタスティック・ビースト」。「ハリー・ポッター」シリーズよりも70年前のニューヨークを舞台にした魔法使いたちの物語だ。街に放たれた危険な魔法生物を魔法使いの有志が命を懸けて退治するという内容である。

脚本は、原作者であるJ.K.ローリングが、監督はハリー・ポッターシリーズでも監督を務めたデヴィッド・イェーツが務める。原作者と映画版ハリー・ポッターにかかわった監督が制作に携わるということで期待が高まる。第2弾が2018年11月23日公開予定だ。

主要キャスト
ニュート(主人公):エディ・レッドメイン
リタ(ヒロイン):ゾーイ・クラヴィッツ


著者J.K.ローリングは生活保護を受けながら第1作を書き上げた


ハリー・ポッターの生みの親であるJ.K.ローリングは、小説家を目指して6歳からさまざまなストーリーを書いていた。転機となったのは1990年のこと。ロンドンに向かう列車で、ハリー・ポッターのストーリーを思いついた。幼いころから小説を書き続けてきたJ.K.ローリングも、あれほどまでに興奮したことはないと語っている。

すぐに思いついたイメージを形にするべく執筆を開始したJ.K.ローリングだったが、うまくいかない。同年に最愛の母が亡くなったのである。J.K.ローリングは、ポルトガルに移住し、英語教師として仕事をしながらもストーリーを書き続けた。ジャーナリストと結婚した彼女は、翌年長女を出産。喜びに満ち溢れた生活が待っているはずだった。しかし、幸せは続かず、1994年に離婚。彼女は、自国であるイギリスに戻るしかなかった。

しかし、イギリスに戻ってもだれも頼れる人はいない。だが子どもも養っていかなくてはいけない。J.K.ローリングは、イギリスの生活保護を受けながら生活を何とか保ったという。ときにはろくに食事にありつけない日もあった。しかし、そんな苦しい生活でも好きな小説を書くことは止めなかった。こうした中、書き上げられたのがハリー・ポッターの第1作である。1995年、5年という歳月をかけてやっとハリー・ポッターと賢者の石は完成した。

しかし、無名な作家がそう上手くいくはずもない。何度も何度も出版社に持ち込んだが、却下される日々だった。転機が訪れたのは1996年8月のこと。ハリー・ポッターの執筆を始めてから実に6年の月日が流れていた。

そんな苦しい時代を生きたJ.K.ローリングは、有名になった後も、決しておごることなく、ファンとの交流も大切にしている。ハリー・ポッターの日本人ファンが、ハリー・ポッターのイラストをSNSで上げた際は、英語で「これ大好きよ!」とコメントしている。庶民派なJ.K.ローリングのこうしたファンを大切にする丁寧な対応は、ハリー・ポッターというシリーズを超えて、ファンを増やしている要因になっているのではないか。




「死の秘宝」から19年後を描いたブロードウェイ版


ブロードウェイ版で死の秘宝から19年後の世界が描かれたのはご存じだろうか。

「ハリー・ポッターと呪いの子」というタイトルで発表された同作は、死の秘宝から19年経った、ハリー、ジニー、ハーマイオニーなど主要キャラの姿を描いている。子どもや妻に気を遣い過ぎて神経質になっているハリーの姿や、中年太りのジニーの姿など、なんだかハリー・ポッターの裏側をのぞいているような感覚がある。

同作は、世界的な作品の舞台版として人気を誇り、トニー賞を受賞した。


ハリポタ世界を忠実に再現したエリアが日本でも大人気に


残念ながら、ハリー・ポッターのブロードウェイ版を日本で目にする機会はないが、ハリー・ポッターの世界観に浸れる場所ならある。ユニバーサル・スタジオ・ジャパンの(USJ)のウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッターだ。

再現されたホグワーツ城やホグズミード村は、まさにハリー・ポッターの世界観そのもの。魔法を体験できる場所、ハリー・ポッターの世界で登場したお菓子を楽しめる場所もある。ハリー・ポッターの世界感にどっぷり浸りたいなら、USJという選択肢もありなのではないだろうか。

これまで、世界だけでなく、日本でも旋風を巻き起こしてきたハリー・ポッターシリーズ。シリーズ最終作が公開されてなおも、その人気はとどまるところを知らない。映画や原作を読み返すのはもちろん、世界間を体験したいなら、日本にあるUSJを訪れてみるのもよい。
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