
現在働き盛りの年でも必ず高齢になって退職する時期は必ずやってくる。少子化と高齢化が進み、老後が心配になる人も多いのではないだろうか。
少子化と高齢化の問題は、オーストラリアでも深刻な問題なのだが、年金がもらえるかどうかなどの、老後を気にしている様子はあまり見られない。それは、オーストラリアの年金制度に由来していて、「老後に十分な保障が得られず、生活苦になるかもしれない」という不安が少ないからだ。オーストラリア政府が、老後の生活を保障してくれるという。オーストラリアの年金制度や収入源は日本とどう違うのか?

豪の老後は年金、生活補助、積立金の3本立て
オーストラリアで老齢年金(Age pension)がもらえるのは、65歳からと日本と同じだ。この老齢年金は、日本においては社会保険料を徴収してまかなっている状況とは異なり、税金から支払われている。自営業などで年金を受け取れる年齢を過ぎても働いている場合は、その老齢年金の一部を受け取ることになる。オーストラリアの老齢年金は、年金受給者のこれまでの収入、資産、その他の状況によって受給額が計算される。
老齢年金を受け取ると、生活費と家計費の補助を受け取る資格が得られる。オーストラリアの年金制度には色々な補助があるため、老後を心配する人が少ない。
オーストラリアには、老齢年金だけでなく、別の年金システムもある。
スーパーは退職時に受け取ることができるが、老年になってからに限らない。若年で受け取るケースとして多いのは、一時的な滞在許可証で入国しているワーキングホリデー従事者、留学生、一時駐在者など。彼らの場合、帰国の際にはスーパー口座を解約してお金を受け取ることができる。アルバイトでも同様の制度が適用される。
退職者の多くが手がける年金以外の資金運営方法
年金制度だけに頼らず、別な資金調達をしている人たちもいる。それは、ホームステイやシェアハウスを運営して家賃収入を得るということ。日本でも老後に賃貸物件を運営しているケースは多いが、オーストラリアの場合は、2009年から「グラニーフラット」と呼ばれる、いわゆる「離れ」に関する法律の規制緩和があった。
このためシンプル、モダンかつ住みやすいという点で、グラニーフラットを敷地内に建てることがオーストラリアではブームになっている。豪ニュースサイト「news.com.au」が報じた賃貸サイト「Flatmates.com.au」の数字によると、2016年のグラニーフラットの登録数が16パーセント増加したそうだ。
2018年現在、シドニー中心地のスタジオルームの1週間の家賃は400~500ドル(約3万2800~4万1000円)。1カ月では1600から2000ドル(約13万1200~16万4000円)になる。そこで家を持っているオーストラリア人は、ホームステイの受け入れやシェアハウスで、一時滞在者に余っている部屋を貸すという自営業またはスーパーでの投資をしている。
この方法は年金受給者にとってはいい収入源になり、若者にとっても個人で借りるよりは、祖父母と暮らしているようなアットホームな体験ができ、安く住める。両方にメリットのある方法だ。

オーストラリアも年金受給年齢は順次引き上げへ
オーストラリアも日本と同様、高齢化が進んでいる。そのため2017年から2023年にかけて年金受給年齢を67歳、さらに2035年までに70歳に引き上げるという発表が、オーストラリア政府によりなされた。
オーストラリアの年金制度は、みんなが平等に生活できるよう国民に優しいシステムになっているのだが、オーストラリア政府としては、高齢者の増加に対して老齢年金額の支払いを最小限にしたい。したがって、今まで積み立ててきたスーパーで十分な生活ができると判断された人には、老齢年金は支払われない。
また、年金が税金からまかなわれているため、2000年から10パーセントの消費税が導入された。スーパー返金時にワーキングホリデー従事者では65パーセント、学生ビザでの滞在者では38パーセントを課税するなどの年金枯渇対策がされているのも現状だ。
(青砥えれな)