メンバー唯一の共通点は「エルレが好きなこと」 Ivy to Fraudulent Game

4人組ロックバンドIvy to Fraudulent Game(アイヴィー トゥー フロウジュレント ゲーム)。なかなか覚えにくいバンド名ではあるが、一度覚えてしまえば忘れない。
そんな彼らは2010年に群馬で結成されたバンドで、8年間のインディーズ時代を経て、9月26日に待望のメジャー1stシングル『Parallel』をリリースする。結成当時、高校生だった彼らは今、どんな心境なのか。寺口 宣明(Gt&Vo)、大島 知起(Gt)、カワイリョウタロウ(Ba)、福島 由也(Dr)に話を訊いた。

――バンド的には今年で結成8年目に入りますよね?

福島由也(以下、福島):もう8年経ったのかという感じですね(笑)。

寺口宣明(以下、寺口):このメンバーになっては6年ちょっとですからね。

カワイリョウタロウ(以下、カワイ):これまでは内容が濃かったですね。
全国流通する前から、夜行バスとかを駆使してツアーに回っていたので、若干苦労は多かったのかなと。

――では、改めて結成当時にやりたかった音楽というと?

寺口:ギターロックですかね。最初はこの2人(寺口、福島)でコピバンをやってて、その頃はELLEGARDENをやってました。歌のメロディが良くて、ギターの音がかっこいいという部分は、オリジナル曲をやる前から変わらないテーマですね。今のギターの音がELLEGARDENっぽいわけじゃないけど。

――ちなみにELLEGARDEはどの曲はカヴァーしてたんですか?

寺口:「Fire Cracker」、「Missing」とかですかね。
でもすぐにオリジナルをやり始めたんですよ。

福島:単純にバンドに対して憧れがあったので、歌とギターがかっこいい音楽をやりたいなと。それぐらい漠然としてましたね。

――このメンバー4人になって変わった部分はあります?

福島:歌が真ん中にある、という部分は変わらないですね。

――聴いてきた音楽は皆さんバラバラなんですか?

カワイ:そうですね。メンバー共通で好きなのがELLEGARDENだけかな。
僕は父親の影響でハードロックが好きで、70年代のディープ・パープル、レッド・ツェッペリン、グランド・ファンク・レイルロード、その流れでジミ・ヘンドリックス、エリック・クラプトンとかオールドロックを聴いてました。なので、高校の頃はELLEGARDENも聴いたことがなくて……ディープ・パープルのコピバンをやってました。

――あっ、そうなんですか。

カワイ:はい(笑)。で、友達にギターロック・バンドをやらない? と誘われて、それから対バンするバンドの音楽も聴くようになり、このバンドに入ってからはさらにそれに近い音楽を聴くようになりました。

大島知起(以下、大島):僕は小学生の頃にマキシマム ザ ホルモンを聴いて、ギターを始めたんですよ。
ほかにスリップノット、メタリカも聴いて、その後に9mm Parabellum Bulletとかも聴いてました。最近はペリフェリーも聴いてますね。今の音楽に影響を与えているのか、わからないですけど(笑)。

福島:マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン、シガーロス、日本だとtoe、LITEとかポストロックと言われる音楽に影響を受けてます。

寺口:ギターを買おうと思ったのはポルノグラフィティのライヴ映像を観たのがきっかけですね。で、中学の頃に筋肉少女帯を好きになって……漠然と音楽をやってみたいと思うようになりました。
姉がよくライヴに行ってて、家でもSUM41とか流れてましたからね。音楽をやり始めてから、“この人大好きだな”と思う人に出会ったんですよ。山下達郎さん、玉置浩二さん、ASKAさんには衝撃を受けましたね。ヴォーカルをやってるのも大きいのか、歌唱の部分で惹かれる人が多いんです。

――歌が真ん中にある音楽が好きなんですね。

寺口:そうですね。


カワイ:俺らも(寺口が)筋少が好きなのを最近知りましたからね(笑)。

寺口:一番お金をかけたアーティストは筋少ですね。お年玉とかでDVDを3枚とか買ってました。

――大好きじゃないですか!

全員:ははははは。

寺口:ポルノグラフィティ、YUIとかお茶の間でもお馴染みの人が好きだったけど、そこに初めてオルタナティヴな音楽が入って来たので。“何だろう、この音楽は!”って。道徳の時間に先生が筋少を流したんですよ。全員ドン引きだったけど、俺は大好きになっちゃって(笑)。

――今やってる音楽に筋少の影響はあると思います?

寺口:いや、ないかな(笑)。でも大槻さんが「コンプレックスはステージに上がればロックになる」と言ってて、それはめちゃくちゃ刺さりましたね。弱い部分を出せる人の方がかっこいいことに気付いたのかもしれない。その言葉はたまに思い出しますね。

――なるほど。では、今作の話に移りたいんですが、作る前に考えたことはありました?

福島:自分が学生の頃に聴いた音楽の衝撃は、今どんな音楽を聴いても得られないような気がして。あのときの感覚が一番鋭かった気がするので……自分が学生のときに聴いたら、完全に好きになるだろうなと思う音楽を作ろうと。

――その気持ちはほかのメンバーにも伝えて?

福島:いや、全然。それは自分の中だけですね。高校の頃の感覚を思い出して作ったら、いま学生の人が聴いたらどう思うかなと。「error」はそれこそ高校生の頃に書いた曲なんですよ。

――そうなんですね!

福島:さっきも言ったように10代は北欧の音楽やポストロックしか聴いてなかったですからね。既にライヴでやっている曲ですけど、ライヴで進化した部分を聴かせられたらいいなと。

寺口:デモは17歳の頃に録音したもので、当時と今では歌い方もサウンドも違いますからね。ただ、あの頃の音源に寄せようと考えてしまったので、難しかったですね。

――「error」は今作の中でも勢いのある曲調ですね。自分たちの中で初期衝動を忘れたくない気持ちがあった?

福島:最初にその曲をレコーディングしたので、そういう気持ちはあったかもしれないですね。「Parallel」に関しては音楽的にどうこうではなく、高校の時に味わった感覚を落とし込もうと。
カワイ:最初に「Parallel」のオケだけを聴いたときは、原点回帰というか、自分たちらしい楽曲だなと感じました。

大島:いろんな音楽性にチャレンジしてきたけど、そこから戻った感覚はありますね。

寺口:サビはわりとシンプルなので、そこは福島らしいなと。オケは決して単純ではないけど、メロディだけはアカペラで歌っても聴けますからね。福島は10代の頃からそういう作りの曲が多くて。楽器やアレンジで挑戦するけど、歌メロはわりとシンプルに付けてくるので、そこもウチらの良さだなと。

福島:単純にメロディはキレイなものが好きだし、分解してもかっこ良く聴けるものがいいなと。

――歌だけを追いかけても、演奏だけを追いかけても曲は成立するけど、その両方が合わさればさらにかっこ良くなるみたいな?

福島:そうですね。根本には歌が真ん中にあって、それがブレなければ何でもできるから。ただ、歌のジャマはしないように気を付けたかな。

――その棲み分けもちゃんとできているし、歌が入ったきたときに視界がパーッと明るく開ける感じも曲名と合ってるなと。あと、中盤の間奏パートにおけるギター2本の絡みも面白くて。

寺口:裏切りが好きだよね、展開も(笑)。

福島:うん。いい曲を聴いたときはドーパミンが出るんですよ。頭部と心臓に感じるドーパミンの2種類があって、メロディは心臓で、アレンジメントは脳の方にドーパミンが出るので、その両方を合わせた感じです(笑)。

全員:ははははは。

福島:学生の頃はそのドバドバ感があったので、それは自分が音楽と向き合う上でのテーマになってます。今後もそれを追い求めていきたいなと。

――「sunday afternoon」はまた雰囲気の違う曲調で、これは寺口さん初の作詞作曲ですよね?

寺口:はい。バンドで一度やってみる?ぐらいのノリで。基盤に弾き語りがありつつ、バンドでやってみようと。

カワイ:福島が作る曲とは違う角度から俺たちらしさを出せるかなと。

福島:みんなでアレンジするのも楽しかったですね。

――<風はブランニュー 午後のはじまり>と、ド頭の歌詞から爽やかですよね。

寺口:ラブソングというか、気分が暗い人は聴かなくていいと思います。

――ははははは。

寺口:気分が暗いときに聴いたらウザいと思うから(笑)。聴き手を選ぶ曲かもしれないですね。歌詞、曲、メロディもこれまでの曲に寄せるつもりもなくて、それなら福島が作ればいいわけですからね。自分が聴いてきたポップスの影響もあると思うんですけど、歌詞は福島が絶対言わない言葉を使おうと(笑)。

――今作のなかでもいいフックになっているし、また新たな可能性が開けた楽曲ですね。それと最後に何度も聞かれていることかもしれませんが、この長いバンド名を付けた理由は?

福島:まあ、字面で付けたところもあるんですけどね。"Fraudulent"はいかさまみたいな意味なんですけど、いい意味で裏切っていきたいなと。

――"Ivy"はツタという意味ですよね?

福島:はい、広範囲に伸びるツタのようなバンドでありたいなと。

――聴き手を裏切りたい、という気持ちはどこから来てるんですか?

福島:予想できるものって感動しないと思うんですよ。感動って、自分の予想とは別の角度から来たときに感じるものですからね。だから、逐一裏切っていきたいですね。

取材・文/荒金良介

【プロフィール】
2010年10月に群馬県にて結成された4人組ロックバンド。福島由也(Dr.)が主に楽曲の作詞作曲を担当。楽曲の世界観をリアルに表現する寺口(Vo/Gt)の唄を軸としたライブパフォーマンスの圧倒的な求心力は多くのファンを魅了する。

リリース情報


1stシングル「Parallel」
2018年9月26日(水)リリース



Ivy to Fraudulent Game オフィシャルサイト