第1週「結婚はまだまだ先!」第4回10月4日(水)放送より
脚本:福田 靖 
演出:渡邉良雄
音楽:川井憲次
キャスト:安藤サクラ 長谷川博己 ほか
語り:芦田愛菜
主題歌:ドリームズカムトゥルー「あなたとトゥラッタッタ♪」
制作統括:真鍋 斎
「まんぷく」4話。主題歌歌詞のようにもらい泣きした朝ドラ伝統の嫁ぎシーン
連続テレビ小説 まんぷく Part1 (NHKドラマ・ガイド) NHK出版

連続テレビ小説 まんぷく Part1

4話のあらすじ


咲(内田有紀)の結婚式に福子(安藤サクラ)は幻灯機を借りてお祝いをする。

視聴率、下がったり上がったり


23.8%、21.2%と来て、3話は22.3%(ビデオリサーチ調べ 関東地区)。
1話の視聴率がすごく高いというニュースが2話放送日に出たため、どれどれ見てみようかという視聴意欲につながって3話はまた上がったのかもしれない。
関東地区の1話が異様に高かったのは、前作「半分、青い。」人気効果及び、台風情報が同時に入っていたせいもありそうだが、2話のレビューでも書いたが運も実力のうちである。

そして、4話では運とは関係ない実力が遺憾なく発揮された。

出会ってしまったふたり


「もう福ちゃんにはうれしいことばかり」
芦田愛菜のナレーションの声が弾んでいて、ほんとうにうれしくなる。

大阪東洋ホテルに就職して一ヶ月、福子は花形職業・フロント係になって、鼻高々。
鈴(松坂慶子)が反対していた咲の結婚話も進み、いよいよお式が行われる。
福子がお祝いをしようと思っていると、親友・鹿野敏子(松井玲奈)から彼女のお父さんが「中之島の見本市で面白い器械を見た」と聞いて、向かった先は・・・・
たちばな工房だった。

この展開には驚いた。
1話から運命の人と電話で出会わせておきながら、初対面の瞬間は描かないのだ。
福子は何も気づかずたちばな工房に入って幻灯機を見せてもらっている。萬平(長谷川博己)も彼女が電話を間違って取り継いだ人とは知らずに自慢の幻灯機を見せるだけ。
ふたりはまったく意識していない。
でも、福子と萬平をつなぐ運命の赤い糸はじょじょにくっきりしていく。この脚本の書き方がニクイ。
脚本は、大河ドラマ「龍馬伝」、月9「HERO」、「ガリレオ」の福田靖。
ヒットメーカーだ。

結婚式当日


姉の結婚式で、福子と萬平ははからずもコンビプレーを発揮する。
いざ、幻灯機を使おうとすると動かなくなってしまい、調整している間を福子が即興の挨拶で保たせる。
最初は、咲が男の人にモテたという結婚式にはいささかふさわしくない話題からはじまったが、最後はみごとに感動的な話にまとめあげる福子。彼女の聡明さがわかるエピソードだ。

幻灯機も無事動き出し、咲と夫・小野塚真一(大谷亮平)の幼少時の写真から現在のふたりの幸せそうな写真までが映されて、式場は多幸感に満ちあふれる。
現代では定番の新郎新婦のスライド上映である。機械文明の発達も悪いことばかりではない一例だ。

その間、萬平は、福子の話を聞きながら表情を繊細に変えていく。
幻灯機に右腕をかけて、ついつい福子の挨拶に聞き入ってしまう萬平。
みんなが喜んでいるのを見わたし、満面の笑顔になったあと、誇らしそうにちょっと背筋を伸ばす(顎を引く)。
大きなカバンをもって、すこしだけチャップリン(「モダンタイムス」をきっと見ているのだろう) のような足の動きで階段を軽やかに降りていく。
とにかく、長谷川博己の表情が豊かで、萬平の幸福感がこちらにひしひしと伝播する。


帰り、福子から差し出された礼金を、自分の作った幻灯機が役立ってくれてみなさんがあんなに感激してくれて「僕は胸がいっぱいです お礼を言いたいのは僕のほうです」と受け取らない。「僕は胸がいっぱいです」の台詞が要らないくらい彼の胸いっぱいの感情が、テレビのモニターを通り越してぐわーっと伝わって心を満たす。
「このふたりが結ばれればいいのに」と咲と真一のことを語る福子の言葉がそっくり福子と萬平に当てはまって聴こえた。

15分×4話で、連ドラの1話(1時間)分という感じに、うまいことまとめてみせる福田靖。
最近の朝ドラで木曜日に盛り上がりが来るのは、1時間ものの体感が意識されているようにも思える。

伝統の嫁ぎシーンの復活


拙著「みんなの朝ドラ」(講談社現代新書)で、来年放送予定、朝ドラ100作め「なつぞら」の脚本家・大森寿美男にインタビューをしていて、そこで、朝ドラでは、嫁ぐにあたり三つ指付いて親に挨拶する場面は必須であると言われたと語っている。ところが近年、そういうシーンは朝ドラでほとんど見かけず、この伝統も絶滅したかと思っていたら、久しぶりに出た。

咲が鈴に丁寧に頭を下げて感謝を述べるところにはなんだかじんわり。
結婚式の場面と合わせて、ドリカムによる主題歌「あなたとトゥラッタッタ♪」の歌詞にある「もらい泣き」してしまった。

地味だが、ここが好き


幻灯機を、たちばな工房従業員・竹ノ原大作(宮田佳典)と萬平が交互に操作する場面。慎重かつ、よどみなく、写真を切り替えていくコンビネーションの息が合っていてさりげなくよかった。
宮田佳典はフィジカルな表現を得意とする劇団・柿喰う客に所属する俳優。大阪府出身。

派手な登場


過去、咲にプロポーズしに白馬・蘭丸に乗って現れた歯科医・牧善之助として浜野謙太(朝ドラでは「とと姉ちゃん」に出てました)が登場。
牧は今後も登場予定。その活躍に期待したい。
(木俣冬)

連続テレビ小説「まんぷく」
◯NHK総合 月~土 朝8時~、再放送 午後0時45分~
◯BSプレミアム 月~土 あさ7時30分~ 再放送 午後11時30分~
◯1週間まとめ放送 土曜9時30分~

「まんぷく」の演出家のひとり安達もじりさんも参加している朝ドラ「べっぴんさん」もBS プレミアムで月〜土、朝7時15分から再放送開始!
第4話レビューはコチラ
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