音楽をデータ分析してみるというこちらの連載。今回は9月24日に配信シングル『シリウス』をリリース、そして10月19日に約4年振りにミュージックステーションに出演したBUMP OF CHICKEN(以下、バンプ)より、「オーイェーアハーン」問題を取り上げる。


「オーイェーアハーン」とはバンプの出世曲「天体観測」のサビで歌われるボーカル・藤原基央の「オーイェーアハーン」というコーラスが由来となっている。なお、ファンにはよく知られた事実であるが、そもそもバンプはこの曲以外でもかなり「オーイェーアハーン」が多い。多いというより、むしろほぼ全曲に入っている。そういうわけで、今回は「一番オーイェーアハーンが多いバンプの曲は何なのか」を調べていきたい。

まずは調査対象を確認しよう。今回調べたのは、CD発売されているオリジナル・カップリングアルバム9枚(ベスト盤除く)と、シングルCD収録曲をあわせた全121曲(※今回は正式な“表”楽曲のみを対象としており、ファンにお馴染みの“隠しトラック”はカウントしていない)。
時間にしておよそ8時間以上の大調査である。そのため、1週間近くにわたって、電車でもお風呂でもどこでもバンプを聴き続け、なんとなく高校生の気持ちに戻ってしまうという副作用まで発生した。4thアルバム「ユグドラシル」は神!

また、今回はオーイェーアハーンを

・藤原基央本人が歌っているコーラス
・ただし、バックコーラスではなく、メインボーカルとしてはっきりと声に出しているコーラス(なので、ラララのようなほとんど歌詞に近いコーラスも含める)
・息継ぎまでを「1回」とカウント
・歌詞をそのまま伸ばして「イェー」などに変換している場合も含める


という形で定義した。簡単に言えば、単純なオーイェーアハーンだけではなく、藤原基央のエモいコーラスすべてをまとめた抽象概念、それがここでいう広義の「オーイェーアハーン」だと思って欲しい。

では、まずは結果を見てみよう。それぞれのオーイェーアハーンを種類別にまとめた。

BUMP OF CHICKENの「オーイェーアハーン」コーラス、一番歌われている楽曲は?
BUMP OF CHICKEN「オーイェーアハーン」種類別グラフ

「オー・ウォウォウ」が187回で最も多い。続いて「イェー・イェイエー」が163回、「ラララ・ナナナ・ルララ」が126回、「アァー・ウゥー・アハーン」が124回で、最も少なったのが「ヘイ・ハッ」の9回だ。

ほとんど代名詞と化している「アハーン」系が、あまり多用されていないことも驚きだ。天体観測のオーイェーアハーンは意外と貴重なのかもしれない。

また、完全に余談であるが、調べた身としては希少種である「ヘイ・ハッ」を見つけたときの喜びが非常に大きく、「真っ赤な空を見ただろうか」のヘイを聴いたときは、滅多に会えない友人と再会したときのように嬉しかった。

せっかくなので種類ごとに、それぞれ一番オーイェーアハーンが多い曲を調べてみた。

BUMP OF CHICKENの「オーイェーアハーン」コーラス、一番歌われている楽曲は?
BUMP OF CHICKEN「オーイェーアハーン」種類別ランキング

・「オー・ウォウォウ」が一番多い曲:ガラスのブルース(28 years round)
・「イェー・イェイエー」が一番多い曲:大我慢大会
・「ラララ・ナナナ・ルララ」が一番多い曲:white note
・「アァー・ウゥー・アハーン」が一番多い曲:Smile
・「ヘイ・ハッ」が一番多い曲:supernova


新曲・旧曲を問わずにランクインしているのが印象的だ。バンプが今も昔も、変わらずオーイェーアハーンしていることが伝わってくる。

細かく見てみると、一番古いのは初期中の初期の名曲「ガラスのブルース」のセルフカバーだ。そして、一番新しいのは8thアルバム「Butterflies」収録曲の「大我慢大会」。結成から22年の時を経ても、バンプのオーイェーアハーンが脈々と受け継がれ続けていることが知れて、ファンとしては嬉しい限りである(※また、この中でもし聴いたことがない曲があれば、ぜひ聴いてみて欲しいと思う。どれも良い曲であり、かつ非常にオーイェーアハーンしている)。


それでは、いよいよ「最もオーイェーアハーンしている」曲を見てみよう。
BUMP OF CHICKENの「オーイェーアハーン」コーラス、一番歌われている楽曲は?
BUMP OF CHICKEN「オーイェーアハーン」総合ランキング

1位に輝いたのは、14thシングル「メーデー」のカップリング曲にして、カップリングアルバム「present from you」収録の「ガラスのブルース(28 years round)」。

聴いたことのある方はおわかりだろうが、この曲はとにかく「オー」と「アァー」に彩られた名曲である。少しでも気を抜くと「オー」と「アァー」が入ってくるので、良ければぜひとも聴いて欲しい。「どこに入っているの?」とか考える間もなく、曲の全編に入っている。

ちなみに、こちらの曲は自分としても飽きるほど聴いた曲であり、これが1位になるのは、いちファンとしてもなんというか非常にエモみがある話だった。
20代なら共感いただけるに違いない。

なお本曲を、カバー元曲である1stアルバム「FLAME VEIN」収録「ガラスのブルース」と比べると、セルフカバー版はおよそ2倍近くもオーイェーアハーンが足されている。浴びるようにオーイェーアハーンを摂取したいならカバー版だが、どちらのバージョンも素敵なので、ぜひどちらも聴いて欲しいと思う。

“ここまで調べたなら、どこまでもオーイェーアハーンを深堀りしよう”ということで、アルバム別にオーイェーアハーンの「1曲あたりの平均数」も出してみた。
BUMP OF CHICKENの「オーイェーアハーン」コーラス、一番歌われている楽曲は?
BUMP OF CHICKEN「オーイェーアハーン」アルバム別の1曲あたりの平均数

最もオーイェーアハーンしているアルバムに輝いたのは「ray」「友達の唄」などが収録された7thアルバム「RAY」。1曲聴く間に、平均8回以上もオーイェーアハーンを聴くことができる名盤だ。
ぜひ“名誉オーイェーアハーンアルバム”と呼ばせて欲しい。

個人的に気になったのはオーイェーアハーンの語源となった「天体観測」が収録された3rdアルバム「jupiter」が、バンプ史上わりと「最もオーイェーアハーンしてないアルバム」の一つだったということである。「天体観測」で歌われたのは、奇跡のオーイェーアハーンだったというほかはない。

なお、それぞれのアルバムごとに、オーイェーアハーンの種類を出してみた。
BUMP OF CHICKENの「オーイェーアハーン」コーラス、一番歌われている楽曲は?
BUMP OF CHICKEN「オーイェーアハーン」アルバム別の種類

インディーズ時代含めた初期は「イェー・イェイエー」をメインとし、ブレイクして以降は「ラララ・ナナナ・ルララ」期に入り、近年はもっぱら「アー・アハーン・ウゥー」に注力していることが読み取れる。

また、オーイェーアハーンの中で最も多い「オー・ウォウォウ」はかなり安定して歌われており、最も強い『歌い癖』のひとつだと言えるようだ。皆さんも、カラオケなどでぜひこれを意識して歌って欲しい。

では、最後に「曲のどの部分で最もオーイェーアハーンしているのか」を見てみよう。

ご存知の方も多いと思うが、邦楽でよくある楽曲の構成は「イントロ→Aメロ→Bメロ→サビ→間奏→Aメロ→Bメロ→サビ→Cメロ→サビ→アウトロ」である。
BUMP OF CHICKENの「オーイェーアハーン」コーラス、一番歌われている楽曲は?
よく見かける楽曲の構成

作曲家や、楽器を演奏する方にはおなじみの言い方だが、楽曲のパートはそれぞれのメロディに応じて「Aメロ」「Bメロ」等と呼ぶ。また「イントロ」の逆で、曲が終わる最後の演奏部分も「アウトロ」と呼ばれることが多い。

それを踏まえて、ここまで見てきたオーイェーアハーン問題、最後のテーマは「楽曲構成において、どのパートで一番オーイェーアハーンしているのか」ということだ。

調べてみたところ、オーイェーアハーンの分布は「Cメロ→サビ→アウトロ」の部分が一番多かった
BUMP OF CHICKENの「オーイェーアハーン」コーラス、一番歌われている楽曲は?
一番「オーイェーアハーン」しているパートはどこか?

個人的にはかなり納得の結果である。

2番のサビが終わった後の、Cメロ(一番盛り上がってくるところ)から、畳みかけるようにオーイェーアハーンが入り始める。特にアウトロに関しては、曲が終わるその瞬間までオーイェーアハーンしている曲が非常に多い(そしてオーイェーアハーンとともにフェードアウトする)。

なお、調べながら「もしかしてアウトロが一番オーイェーアハーンしてるのでは?」と途中で気づき、そこからは2番のサビ以降だけ、特に集中して聴くようにしていた。オーイェーアハーンを調べるスキルが格段に向上して何よりだ。

当たり前だが、バンプにはオーイェーアハーンしていない名曲もたくさんあるので、ぜひ皆さまにはオーイェーアハーンに捉われることなくバンプを聴いて欲しいと思う。

■まいしろ
社会の荒波から逃げ回ってる意識低めのエンタメ系マーケターです。音楽の分析記事・エンタメ業界のことをよく書きます。

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