メジャーバンドのうち何%が「仲が良い学校の友達」と組んだバンドなのか?
※写真はイメージ

音楽についてのあらゆることを、データで調査していくという本連載。第3回は「メジャーバンドのうち何%が『仲の良かった学校の友達』と組んだバンドなのか?」というテーマでお届けしたい。


アーティストのインタビューをよく読む音楽ファンにはお馴染みだが、「学校の友達と軽い気持ちで始めたバンドいきなり才能を認められ、音楽で食うことを決意して皆で上京! ところが現実は甘くなく、客席よりステージの人数の方が多いライブを繰り返すだけの悔しい日々。しかし、そんな中でも少しずつファンが増えていき、ついに念願のメジャーデビューを果たすことに?!」という、どこの少年漫画やねん! とツッコまずにいられないこの夢の展開、驚いたことにバンドではかなりの「主流」である。「高校のとき、(ボーカル)と(ギター)が仲良くて、隣のクラスで知り合いだった(ベース)を誘って……」というようなインタビューは、音楽雑誌を開けば読めるリアル・サクセスストーリーなのだ。

というわけで、今回はそんな友情・努力・勝利を地で行くメジャーバンドマン達が、どのくらいの割合で「仲の良かった学校の友達」と組んでいるのかを調べてみたい。

今回の調査対象は「比較的知名度の高いロックバンド」に絞るため、2008-2018年の10年間で、ROCK IN JAPAN FESのGRASS STAGE(3-4万人収容の最大ステージ)に出演したバンドを抽出した。さらに条件として

1.2人組以上のバンドである
※したがって、miwaのようなソロで活動しているアーティストは調査対象外である。


2.メンバー自身で楽器演奏をしているロックバンドに限る
※迷ったが、Perfumeのようなアイドルとロックバンドでは、デビューまでの道筋やデビュー年齢がかなり異なっていたため、今回はデータの正確性を考えて除外した。

3.バンド結成時の年齢が公式から発表されている
※端的に言えば(公式で年齢不詳の)気志團などを除外した。永遠の16歳なので。

の3点の条件を満たす65組・全237名を対象とした。

では、まずは彼らが「いつ今のバンドを結成したのか?」を見てみよう。
メジャーバンドのうち何%が「仲が良い学校の友達」と組んだバンドなのか?
「アーティストは何歳の時にバンドを組んでいるのか?」グラフ

国内最大規模のフェス、ROCK IN JAPANで絶大な人気を誇るバンドマン達の「結成時の年齢」は平均で21.01歳である。


また、細かくパート別で見てみると、ボーカル・ギターボーカルが21.03歳、ギタリストが21.04歳、ベーシストが20.76歳、ドラマーが21.19歳、キーボードが21.05歳と、ほぼ横並びの結果となった。

ほとんど僅差だが、もっとも年少者が多いのはベーシスト、年長者が多いのはドラマーという結果である。さらに、ベーシストだけは平均年齢が20歳代となっており、理由はまったくわからないが「ベーシストは年少者でもバンド組みがち」ということらしい。同様に「ドラマーは年を取ってからバンドを組みがち」のようであるが、これも理由は謎である。

なお、対象者237名のうち、最も若い時に今のバンドを組んだのはエレファントカシマシのギタリスト・石森敏行。齢14での結成である。
人生の岐路が14歳でやって来たとは、エレカシ恐るべし。

また、せっかくなので「どの年代でバンドを組んだアーティストが多いのか」を、ざっくりと分類してみることにした。
メジャーバンドのうち何%が「仲が良い学校の友達」と組んだバンドなのか?
「アーティストは何歳の時にバンドを組んでいるのか?」グラフ

冒頭でも書いたように、個人的にバンドといえば「高校時代のメンバーで~」のイメージが強かったのだが、結果を見てみると、バンドを結成した年齢でずば抜けて多いのは19-22歳という結果に。一般的に言えば、大学生・専門学生・新卒入社した社会人などが多い年代だろう。

次点である16-18歳の高校時代(中学卒業後)、23歳以降(社会人時代)と比べると、ほぼ2倍近くも差が付いている。ハタチの「成人」というタイミングで、人生をバンドに賭けたアーティストが多いことが伝わってくる。


ちなみにメンバー全員がハタチになる年に結成した、正真正銘「ハタチ結成バンド」としては、東京造形大学の重音部をきっかけに出会ったスピッツ、名古屋のライブハウスをきっかけに知り合ったという04 Limited Sazabysなどが挙げられる。新旧問わず「ハタチ結成バンド」が存在しているところを見ると、この「ハタチで結成」というのは今も昔もどうやらバンドの「主流」らしい。

なお「ハタチ」というのがある程度の基準となっているのは「最も多い結成時の年齢」ランキングからも読み取れる。
メジャーバンドのうち何%が「仲が良い学校の友達」と組んだバンドなのか?
「一緒にバンド組もうぜ している年齢」グラフ

堂々の1位は「20歳」、続いて「21歳」「19歳」と、いずれもハタチ前後が続く。4位はようやく高校時代の「17歳」、次いで「22歳」がランクイン。高校を卒業し「自立」の文字が見えてくる年代に結成時期が集中していることがわかる。


こういう風にデータを見ると、案外「仲が良かった学校の友達」と組んだバンドは少ないのではないかと思えてくるが、実際のところはどうだろうか?

それでは、いよいよ結果を見てみよう。
メジャーバンドのうち何%が「仲が良い学校の友達」と組んだバンドなのか?
「メジャーバンドのうち何%が仲の良かった友達と組んだバンドなのか」グラフ

「学校の友達」と結成したバンドは、数字にしてなんと48.4%。メジャーなバンドのうち、ほぼ半数近くが「学校の友達」で成り立っているという結果になった。割合としては大学の友達がかなり主流のようで、ロックバンドにとって、大学とはかなり欠かせない存在らしい。

なお、逆に「学校の友達以外で組んだバンド」は誰と組んでいるのかというと、これはかなり多岐にわたる。具体例をあげると、音楽関係の社長に紹介されてお互いに知り合ったというB’z、全員違うコピーバンドにいたが、全員のバンドがたまたま同じタイミングで解散したので結成したという10-FEETなどである。
学校以外の場でバンド仲間に出会うには、なかなか「運」が必要とされているようでなんだかつらい。

また、せっかくなので「学校の友達」と組んだバンドのうち、どれくらいが「部活・サークル」の友人なのかも出してみた。
メジャーバンドのうち何%が「仲が良い学校の友達」と組んだバンドなのか?
「学校の友達と組んでいるメジャーバンドのうち、何%が部活・サークルの友達なのか」グラフ

こちらもほぼ半数となる、41.9%が「同じ部活・サークル」の友達という結果となった。類は友を呼ぶというべきか、学校の部活・サークルは実に偉大な存在である。

学校の部活・サークル内で結成されたバンドの具体例をいくつか挙げてみると、関東学院大学・軽音楽部出身のASIAN KUNG-FU GENERATION、立命館大学・音楽サークル「ロックコミューン」出身のくるり、和泉工業高校・軽音楽部出身のKANA-BOON、関西学院大学・軽音楽部出身のキュウソネコカミなどが挙げられる。どのバンドも「同じサークルにこんなメンバーがたまたま揃うの?!」と思わずにはいられないバンドである。今後とも学校やサークルの友人から、素敵なバンドが出てくることを祈るばかりだ。

■まいしろ
社会の荒波から逃げ回ってる意識低めのエンタメ系マーケターです。音楽の分析記事・エンタメ業界のことをよく書きます。

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