『ヴェノム』ストーリー
ジャーナリストのエディ・ブロック(トム・ハーディ)は、宇宙探査を行っている“ライフ財団”が、人体実験で死者を出しているという噂を聞きつけ、その真相を突き止めようとする。だがその行為が原因で、会社をクビになり、恋人からも振られてしまう。自暴自棄になるエディだったが、そんな彼の元に、ライフ財団に勤める科学者・ドーラから“あなたの追求はすべて事実。真実を報道して欲しい”との依頼が届く。一旦は依頼を断ったエディだったが、思い直してドーラに協力し、ライフ財団の研究所に侵入。しかしそこでエディは謎の地球外生命体“シンビオート”に寄生されてしまい、そこから“ヴェノム”と名乗る生命体と共生していくこととなる。
実はテーマ深し!

いやぁ! めっちゃおもしろかったです。ヴェノムはスパイーダーマンシリーズに登場する敵キャラですが、もはやスパイダーマンすら知らねぇよ! っていう人でも全く問題なく楽しめる作品となっていました。うんうん。
僕の印象なのですが、『ヴェノム』はダークヒーローが活躍するアクションムービーという見せ方をしながらも、実はすごく深いテーマ性を潜めた映画なのではないか? と思いました。人が生きている中で遭遇する理不尽さ、現代社会の生きづらさ、なぜ自分がこんな目に! と誰しも一度は感じたことがあると思います。それを受け入れ、背負い、その運命と共生する決意ができるかどうか。
善人と悪人

主人公のエディは真実を暴くためなら手段を選ばない人で、なかなかの猪突猛進な性格です。そのことから仕事も、愛する人も失ってしまいます。どん底です。人生ハードモード突入です。そんなエディがヴェノムに寄生され、ライフ財団から追われることとなります。
この映画のいいところは、エディは崇高な考えを持ったバットマンのような人間でもなく、人々を救う為に日夜戦うスパイダーマンのような人間でもないところなのです。彼はライフ財団に立ち向かうことになりますが、それは突き詰めると、誰かのためということよりも自分自身のためなのです。それが結果的に誰かのためになっている。
そしてヴェノム。もはや“ヴェノムたん”と言いたくなるような性格です。おバカなんです。それがいいんです。
エディとヴェノム。彼らは決して意気投合して一緒にいるのではないけれど、それでもお互いにお互いが生きるために必要な関係、つまりは“共生”という道を選びます。劇中に度々、“俺たち”という言葉が出てくるのが、その共生感を特に強めています。彼らは一人では生きてはいけないんです。

そんななかで現代社会を表す印象的なシーンがあるのですが、すべてを失ったエディが行きつけのコンビニで強盗と遭遇します。しかしあんなに手段を選ばず、闇を暴こうとしていたはずのエディは、ここでは何もせず、強盗がお金を奪って出て行くまでじっとしているんです。そのあとコンビニのおばちゃんがエディに言います。「残念だけど、これが人生よ」。これは深いシーンでした。
俺たちは負け犬だ

僕がこの映画を観て感じたのは、ここに出てくるキャラクターで完全な悪はいないのではないか? ということです。悪の根源と思われるライフ財団も人類の為に研究を行っていました。それぞれが自分の信念に従って、生きるために戦っているんです。やり方が正しいとかどうか、そういうことではなく、生きて行く為に自分が戦うことの大切さをこの映画は教えてくれます。
誰もが平等に幸福に生きていける世の中なら誰も苦労しません。挑戦して、挫折して、それでも何かを選んで戦っていく人だけが未来を勝ち取ることができる。そんなメッセージが『ヴェノム』にはあると僕は思います。
<プロフィール>

ヤマモトシンタロウ
ロックバンド『LEGO BIG MORL』のリーダーでベースを担当。11月7日に今年の春より行われていたライブツアーの中から、恵比寿 ザ・ガーデンホールでの模様を収録した、LIVE DVD『LEGO BIG MORL 〜Acoustic & Rock〜 TOUR 2018 「月と太陽」at EBISU The Garden Hall』をリリース。
https://www.legobigmorl.jp/
https://twitter.com/chin_taurou
作品情報

『ヴェノム』(原題:VENOM)
公開日:11月2日(金)
監督:ルーベン・フライシャー
脚本:スコット・ローゼンバーグ&ジェフ・ピンクナー、ケリー・マーセル、ウィル・ビール
キャスト:トム・ハーディ、ミシェル・ウィリアムズ、リズ・アーメッド、スコット・ヘイズ、リード・スコット
公式サイト:http://www.venom-movie.jp
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