世界一辞めたい会社へようこそ――。株式会社人間が主催するイベント『THE BLACK HOLIDAY(ザ・ブラックホリデー)』は、過重労働やハラスメント問題が常態化しているブラック企業による被害をリアルに体感することができる参加型エンターテインメント。
参加者は新入社員として架空のブラック企業に入社して、上司たちが繰り出すハラスメントにひたすら耐えなければならない。

イベント中は理不尽な出来事が次から次へと発生


ブラック企業のハラスメントを擬似体感 「THE BLACK HOLIDAY」が生まれた理由

同イベントは、11月23日の勤労感謝の日、東京都新宿区の会場にて開催予定(会場の詳細は当選者にのみ通知)。13時開演、18時開演の2部制で、各回15名を定員に実施される。参加申し込みは、11月14日17時まで特設サイト内の応募フォームにて受付中。

参加者たちは、健康器具を販売する“スーパーミラクルハッピー株式会社”の新入社員という設定。記念すべき入社日は、勤労感謝の日。「初日から休日出勤だなんて嫌だな」と思いながらも、出社時間の30分前にオフィスに到着したところ、「感謝するより勤労を!」と唱和する社員たちの声がオフィスの廊下にまで響き渡っていた――。

イベントでは、架空のブラック企業であるスーパーミラクルハッピー株式会社の正社員として、出社(受付)、朝礼、営業(デスク)、企画会議(会議室)、終礼までを体験する。就業時間中には理不尽な出来事が次から次へと起こるそうで、わざわざ特設サイトの説明文で「エンターテイメントとして演出しておりますが、気の弱い方や、強い口調が苦手な方は、ご参加を控えていただくようお願いいたします」と注意書きされているのが恐ろしい……! 関西で本当に面白い芝居を選ぶ「関西ベストアクト」で2期連続1位獲得を果たした劇団子供鉅人の役者たちが出演するため、リアリティあふれるハラスメント体験ができること間違いなしだ。

ブラック企業アナリストの新田龍さん監修のもと、劇団子供鉅人代表の益山貴司さんがイベントの脚本・演出を担当している。しかもハラスメントの内容は、実体験をもとにしたものばかり。『THE BLACK HOLIDAY』は、さまざまなブラック企業の実体験エピソードを集め、参加者がリアルに体感することで、「本当にいい職場とはなにか」を考え、自分たちの働き方を見つめ直すきっかけになることを目的としたイベントなのだ。

今回のイベントはスタートに過ぎない


いまやブラック企業は社会的に問題視されており、「こういう言動はハラスメントに当たる」という情報自体は広まっている。
しかし、それでもブラック企業はなくならない。『THE BLACK HOLIDAY』というイベントを開催した理由を、Webコンテンツ制作会社である株式会社人間の代表取締役・花岡洋一さんは、「コンプライアンスを設けるだけでは解決できない部分があると感じました」と説明する。

「『こういうことをやってはダメ』とただ伝えるだけで、根本的な解決に至るとは思えませんでした。ブラック企業の社長や役員たちは、周りの誰にも指摘されないので、自分がブラックな言動をしているとは気づけないのではないでしょうか。株式会社人間は、ちょっと変わったやり方で何か世の中にメッセージを伝えるのが得意な会社です。エンタメという形でハラスメントについて楽しく学べる場を作ろうと思いました。百聞は一見にしかずではないですが、体験することで理解できることは多いですから」

「ハラスメントについて楽しく学ぶ」がコンセプトである『THE BLACK HOLIDAY』だが、イベント中のハラスメント描写に関しては、敷居の低さよりもリアリティを優先させた。また、実話をもとにしていることにもこだわったらしい。花岡さんは、「すごすぎて逆に笑ってしまうようなエピソードもあるかもしれませんが、笑ってほしくない。参加者の方々には、イベントの内容を真摯に受け止めてほしいと思っています」と語った。11月5日時点ですでに160組の申し込みが寄せられているが、イベントに込められたメッセージが伝えるべき相手にきちんと伝わるよう、1組1組をきちんと審査しているそうだ。

花岡さんいわく、今回のイベントはスタートに過ぎないとのこと。


「『THE BLACK HOLIDAY』は1日限定のイベントですが、この試みが広まることで、実在の企業に招かれて、役職以上の人向けに体験プログラムを行う……ということになれば面白いですよね。そこがゴールで、今回のイベントはそのためのスタートです」

なお、『THE BLACK HOLIDAY』では、応募者のうち「『より上司らしい』お客様」から優先して当選させるシステムになっているそう。ポイントは、「必ずしも応募者が上司本人である必要はない」ということ。特設サイト内には、上司に『THE BLACK HOLIDAY』参加を勧めるメールの文例も用意されているので、そちらを参考に「この人はぜひハラスメントについて真剣に知ってほしい……」と感じる上司を送り込むのもオススメだぞ!

(原田イチボ@HEW)
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