
SHE'S/11月14日に4thシングル『The Everglow』をリリース
エモーショナルなロックサウンドで感情を放出させたかと思えば、ときに、繊細で内省的な世界観で蒼く刹那な煌めきを歌う4人組ピアノロックバンド、SHE'S。情熱とロマンチシズム、憂いと光などアンビバレントな魅力を違和感なくもち合わせることができる希有な存在だ。
(取材・文/橘川有子)
修学旅行で宿を抜け出して流星群を見た経験が元になっている
――エキサイトミュージック初登場、おめでとう&ありがとうございます!
広瀬臣吾(以下、広瀬):ありがとうございます! ところで、そのタイツすごいですね。志茂田景樹さん的な。
編集部:初対面で(そのコメント)! それ、全然褒めてないですよ(笑)。
服部栞汰(以下、服部):志茂田景樹さんってよりは、りゅうちぇるって感じかな? ここ(取材場所)原宿だし。
――どちらにしても、男ってことですね(笑)。性別は一応女性なんですが(笑)。
木村雅人(以下、木村):うちのが、なんかすみません(笑)。褒めてるつもりなんです、きっと。
井上竜馬(以下、井上):にしても、第一印象、最悪ですね。
――いえ。最短で距離を近づけていただき、なんでも聞きやすくなりました(笑)。渾身の『The Everglow』について伺う前に、まずは結成経緯などを教えていただけますか?
井上:高校1年で全員知り合っていたんですが、3年になって卒業も見えてきた頃にピアノロックバンドを組みたいと思って僕から声をかけました。服部は前任のギターが辞めたタイミングで入ってもらって今に至ります。
――高校時代、井上さんはギターも弾いていたとか?
井上:はい。ベースも弾いてました。ピアノロックバンドをやり始めた当初は、ライブをするのは小さな会場だったので、ステージが狭くて僕の一番大きなキーボードを置くとかなり窮屈で。
広瀬:横に並べなかったよね(笑)。
――ピアノロックバンドあるあるですね(笑)。学生時代からの友人でもあり、もはや家族のような間柄では
井上:そうですね……。服部がパパで、僕はママかな。
――男性なのに、ママ?
井上:バンド結成の言い出しっぺだし、曲の生みの親でもありますから。
服部:そうだね。兄弟なら広瀬が兄、木村が弟って感じ?
井上;木村は確かにそうだけど、広瀬もパパっぽいな。
――パパが2人になりますが……。
井上:バツイチなんです(笑)。
全員:爆笑

――いい感じに温まったところで、『The Everglow』のお話を。タイトル曲はドラマ『ルームロンダリング』オープニングテーマとして書き下ろしたものですか?
井上:昨年末から今年の初め頃、制作期間中に作ったデモが元になっています。サビの部分などはピアノの弾き語りで作っていましたが、フルで作ったのは今年の夏の初め、ホールツアーが終わった頃だったと思います。そこから、プロデューサーの百田留衣さんと話しながらアレンジを固めていった感じですね。
――作曲はピアノですることが多いのですか?
井上:ギターも使いますが、ピアノが多いかもしれません。曲を作る前に、どっちで作った方が曲に似合うかなって考えるんです。この曲は僕の修学旅行の時に体験した出来事が元になっているんです。夜、友達6人で宿をこっそり抜け出して、星を見に行ったんですが、たまたま流星群が来ていて。
――3人はどの段階で曲を聴くことが多いのですか?
服部:歌詞がなくて、ただの「ららら~」ってこともありますが、仮の歌詞ができた段階で聴くことが多いですね。この曲はサビの歌詞が決まっていて、他の部分は仮の状態でした。
広瀬:修学旅行の思い出が元だとわかっていたし、「ずっと変わらないもの」がテーマなんだってみんなも感じ取っていたので、特にきちんとテーマについて話し合ったりはしませんでした。

――歌詞を書くとき、歌い手として“歌い心地”のようなものは意識しますか?
井上:歌詞とメロディのフィット感みたいなものは結構気にしますね。言葉がメロディのように流れて聞こえたらいいなと思うときは、メッセージ性も大事ですが音楽ってそれだけじゃない魅力がある。耳馴染みの良さも、僕らの曲には大事な要素だと思っています。
――1stシングル「Morning Glow」にもglowという単語が使われています。この曲の舞台は朝、今作は夜ですし、関連性や対比などを考えて制作したのですか?
井上:そうやって、「つながりがあるのかな」と思ってもらえたらいいなと思った程度で、特に関連性はありません。朝と夜の対比は別のシングルですでにトライしているので、今回は特に深い意味はないんですよ。
――まんまと引っかかってしまった(笑)。
井上:あははは。ややこしくてすみません。実は、タイトルを決めるときに、スタッフから「シングルに『Morning glow』があるし、インディーズ盤に『Evergreen』というタイトルがあるけどいいのか」って指摘されたんですよ。でも、僕は「この曲名がええねん!」と通したんです。
――我が子の名前に文句をつけるなと。
井上:その通りです(笑)。
――曲への深い愛情を感じます。ところで、アレンジは曲作りの段階でかっちり固めるのですか?
井上:わりと固めて、それからイメージを共有することが多いです。バンドでアレンジする際に「ここは変えないで」という部分もあるし、それ以外は自由にやってもらってます。今回は前作に続いて百田さんにアレンジに入っていただいたんですが、まずは僕の作ったデモを聴いてもらって意見交換しました。はじめはストリングスも入ってなかったし、曲のイントロももっとガツンとした感じだったんですが、そこをもっと柔らかくすっと曲に入れるように提案していただきました。
――具体的に百田さんとどんな話を?
井上:僕は、サビをあまりキーが高くなく歌いやすいところで設定して作っていたるので、そのサビの印象が残りやすくするようにA、Bメロのキーをもう少し下げてみたら?とか、そんな話でしたね。

――ストリングスが大々的に入っているので、ギターは難しさも感じたのでは?
服部:そうなんですよ。ストリングスと重なる音域があるので、いったん作ったものでもスタジオで弾いてみると、わずか1音が次のストリングスと被ってしまっていると分かったり。その場合は、1弦だけミュートして弾いたりしました。自分では見落としがちな部分に百田さんが気づいてくださるので心強かったですし、細かな部分も繊細に気遣いつつ、ソロなどは自由に弾かせてもらってますね。
――メロディックなソロが好みですか?
服部:はい、好きですね。自分の中では、歌があって間奏でも歌を引き継ぎたいという気持ちで弾いてます。
――カップリング曲を含め、これはロマンチストが作ったソロだろうなと。
服部:あはははは。
井上:間違いなくロマンチスト、ですね(笑)。
木村:(笑)。ドラムはベーシックなリズムはありつつ、自由にやれる部分も多かったんです。ただ、アップテンポだとついガッと勢いよくやりたくなるんですが、繊細なプレイも求められる楽曲なのでA、Bメロの音量はもう少し下げた方がいいねとか、音の倍音にまで気を配りながらレコーディングしました。
――【インタビュー後編】SHE'S 原体験や音楽への憧れといったピュアな気持ちから生まれた曲群