「ずっと父と比べられて生きてきた」 反発心を歌に――前川清の次女がバンドでデビュー/インタビュー前編

Dire Wolf/1月16日にメジャーデビューアルバム『SHINKA』&11月21日にリードトラック「SHINKA」を先行配信リリース


50年の長きにわたり、芸能界の第一線で活躍し続けている前川清。その次女の前川侑那(ゆきな)がヴォーカル“Yu”として活動する二人組ユニット“Dire Wolf”がメジャーデビューを果たす。
体重は二人合わせて軽く200キロ超えという超重量級ユニットのDire Wolfだが、超重量級は体重だけでなく、重低音でサウンドをグイグイ引っ張るインスピレーション豊かなSHISYOのベースも、太さと軽やかさを兼ね備えた声が印象的なYuのボーカルも充分に超重量級。加えてキャッチーなメロディーと嘘のない気持ちを綴った歌詞からなる楽曲がまた、熱量の高い重量級。“とてつもなく大きい狼”という意味の言葉をユニット名にした大きな大きな2人組が世に放つ歌は、細やかで些細な感情の機微も掬い上げてくれる、“大きな視点”を感じる音楽だ。
(取材・文/前原雅子)

「今度すごい歌の上手いヤバいヤツが入ってくるらしいぞ」

──結成はいつですか?

SHISYO:二人とも洗足学園音楽大学のロック&ポップス科を卒業しているんですね。僕はそこの1期生なんですけど、2期生が入ってくるときに「今度すごい歌の上手いヤバいヤツが入ってくるらしいぞ」っていう噂が流れてきて。気になるからちょっと見に行ったら、ホントにすごく歌が上手くて。低い声も太くて魅力的で。それがYuだったんです。

Yu:昔は低音に厚みがなくて、これじゃ歌にならないっていう感じだったんですけど。練習に練習を重ねた結果、今はカバーするなら男性曲のほうが楽なくらいになりました(笑)。でも私は私で「あのベース、上手いな」って思っていて。あるとき同じ学年のドラムと「本当に上手いメンバーでバンドを組もう」って話になって、ギターは今もDire Wolfのサポートをしてくれている人になったんですね。
で、「ベースはどうしよう?」って言いながら学食に行ったら、横にSHISYOがいたんですよ。そこで「あ、SHISYOがいたじゃん!」ってことになってバンド結成ということになりました。

SHISYO:僕は美味しくうどん食べてたんですけどね(笑)。

Yu:そのバンドは1年間やって解散して。そのあともバンドを組んだりしたんですけど、なんかあまりうまくいかなくて、そのたびにSHISYOと二人でユニットみたいな感じで活動するようになっていて。その流れでDire Wolfになった、みたいな。でも今のサポートメンバーは、前に一緒にバンドをやっていた慣れ親しんだ人間だったりするんですよね(笑)。

──二人とも音大に進学するくらいですから、音楽はすごく好きだったのでしょうね。

SHISYO:そうですね。僕は母親がピアノ講師だったので家にグランドピアノがあって、3歳から自動的にやらされていまして。

──ピアノは好きでした?

SHISYO:いっや~、どうですかねぇ。結局は嫌になって中学に上がるくらいでやめちゃうんですよ。
それで、よくある感じで中学2年生くらいで「バンドやろうぜ」ってことになって。「パートは何が余ってる? ベース? はい、じゃあ僕はベースで」って話で。

──それまでギターやベースはやっていたのですか?

SHISYO:やったことはなかったですね。そのタイミングでベースに初めて触って、そのあとギターを始めた感じです。高校生になるとライブハウスに出るようになって。地元は熊本で卒業後は福岡に行くヤツもいたんですけど、僕は東京の音楽大学で学ぶことにして。


「ずっと父と比べられて生きてきた」 反発心を歌に――前川清の次女がバンドでデビュー/インタビュー前編
Yu(Vo)


──Yuさんも家庭のなかに音楽がある環境だったのでしょうね。

Yu:それが音楽っていうよりも、小学校3年から高校2年までずっとサッカーをやっていたので。

SHISYO:写真を見ると痩せてましたよ~、その頃は(笑)。

Yu:痩せてましたね。っていうかお互いに出会った頃は30キロ、20キロくらい痩せてたでしょ。もう体重なんて気にしないですけど、おそらく一緒にいたのが太った原因ではありますね。


SHISYO:食べる量が影響し合っちゃうんですよ。

Yu:だってラーメン屋さんに行くと、SHISYOはつけ麺の麺を1キロとか食べるんですよ。

──1キロ……? どれくらいの量になるんですか?

Yu:チワワ1匹くらいの重さ……?

SHISYO:その比較、おかしいから(笑)。

Yu:それを4分くらいでペロッと完食して。またドラムも身長180センチの体重130キロとかで、もっと食べるんで。みんなで増長し合う(笑)。普通の体型のギターが、めっちゃ細く見えます。

──(笑)。それでYuさんはサッカーをやっていた?

Yu:キーパーでした。そのままサッカーの道に進むことも考えたんですけど、足を怪我して諦めて。そのとき音楽をやりたいと思ったんです。うちも母親がピアノで音大を出ていて、ピアノをやらせたかったみたいで。
3歳から小学校5年生くらいまでピアノをやってたんですけど、すっごい嫌で。SHISYOと同じで中学2年くらいからバンドをやりたいと思うようになって、そこからギターを始めて。高校に入ってからはちょくちょくバンドを組んで、ボーカルとギターをやるようになって音大進学を決めたという。

──バンド活動をしていた人は、音大には進学せず、そのまま音楽活動に入っていく人もいますが、そういうことは考えなかった?

SHISYO:そういう話もありました、高校卒業後に事務所に入るみたいな。ただ、当時組んでたバンドはメンバーそれぞれのやりたいことが違っていたので、だったら音楽をもっと知りたいし勉強したいと思ったんですよね。

Yu:なんか高校までの音楽活動に物足りなさを感じていたので、もっと音学のことを学びたいなと思って。そのうえでバンドを組みたいと思ってました。

「ずっと父と比べられて生きてきた」 反発心を歌に――前川清の次女がバンドでデビュー/インタビュー前編
SHISYO(Ba)


──二人の音楽的なバックボーンということでは、やはりロックが中心になりますか?

SHISYO:中学生でバンドを始めたときから、そういうスタイルが多いかもしれないですね。パンク、メロコアとか。みんな通る道かもしれないですけど、カッコいいって憧れて、そこらへんから入るっていう。

Yu:ELLEGARDEN、BUSTED(バステッド)、ビークル(BEAT CRUSADERS)とか。

SHISYO:GREEN DAYとかMY CHEMICAL ROMANCEとかね。
でも二人の聴いてきた好きなものって、微妙にズレてるんですよね(笑)。

Yu:ただ、大学に入ってからは先生たちが選んだ曲を歌うことも増えて。そうすると自分のなかの音楽の幅も広がってきて、オールジャンル好きになっていったかもしれないです。

SHISYO:おそらくもともとは僕は楽器が面白い音楽が好きで、Yuは歌が面白い音楽が好きなのかもしれない。曲の作り方としても僕が楽器系全般、Yuが歌系全般っていう感じなので。

Yu:歌が面白いっていうか、ハードなのよりポップロックっぽい、綺麗めなメロディーの音楽のほうが好きですね。だからメロディーは綺麗だけど、楽器は面白いことしてますみたいな曲が多いかもしれないです。

──曲作りはどういう感じで?

SHISYO:だいたい二人で作っていきます。一人で全部作るというのはないですね。

Yu:一番早く作れるパターンは、いわゆるセッションみたいな形式で作っていくやり方ですね。ギターを弾いてメロディーを歌っていくんですけど、長年一緒にやっているので「次はこういうコードにいくんだろうな」っていうのがわかるんですよ。それを見極めつつ「じゃ、ここはこうしてみる?」みたいに作っていくという。


――【インタビュー後編】Dire Wolf 父はライブに来て「俺にはわからん」と言って帰って行った(笑)
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