「テレビがヤバくなっていくんじゃないですか? こっち(ネット)の方で面白いことができるってなると、ねぇ」

言葉の主はダウンタウンの浜田雅功。長年にわたってテレビの覇者として君臨してきた男のこの発言は大きな話題を呼んだ(ハフポスト日本版 11月16日)。
そしてその言葉のとおり、11月9日に配信された浜田とナインティナインの矢部浩之が出演するAmazon Prime Videoオリジナル番組『戦闘車』シーズン2がとてつもなく面白かったのだ。
「戦闘車」シーズン2が凄い!1の欠点を全部修正して大爆発、テレビにはできないバラエティってこれだ
Amazon Prime Video配信画面より

車をガツンガツンとぶつけ合うタレントたち


『戦闘車』のキャッチフレーズは「唯一無二、命がけの自動車戦闘バラエティ」。「デンジャー(危険)」と「エンターテイメント」を合わせた「デンジャーテイメント」とも呼ばれている。

芸人、俳優、ミュージシャン、アイドル、格闘家、レーシングドライバーが浜田軍と矢部軍に分かれ、自らハンドルを握って「戦闘車サッカー」「戦闘車棒倒し」「戦闘車カーリング」「横転グランプリ」などの様々な競技に挑戦するという企画。とにかくスケールがデカい。とにかく車がぶっ壊れる。タレントたちがお互いの車をガツンガツンとぶつけ合う様は、地上波のバラエティではなかなか見られない光景だ。

かつてフジ『27時間テレビ』で車を壊す悪ふざけのコーナーがあったが、スケール感は比較にならない。『浅草橋ヤング洋品店』で城南電機の宮路社長と大塚美容外科の石井院長が繰り広げていた「ロールスロイス対決」がやや近いだろうか。『風雲!たけし城』のゲームをいちいち車を使ってやっているようにも見えるし、鈴木亜久里、土屋圭市らドライバー界のレジェンドが次々と出てくる様は『ラスタとんねるず』の「ジャイアント将棋」を思い起こさせる。誰も覚えていないだろうが、筆者はカースタントアクション映画『マッハ’78』を思い出した。

哀川翔&小沢仁志が大暴れ「戦闘車サッカー」


とはいえ『戦闘車』シーズン2は、車が破壊されるバカバカしさを笑う番組ではない。いや十分に笑えるのだが、予想以上に競技そのものが面白くなっているのだ。ルールやメンバーの選考などをかなり細かくチューニングしたのだろう。


たとえばエピソード1の「戦闘車サッカー」は125m×92mのフィールドで直径150cm、重さ40kgの発泡スチロール製のボールを使い、1チーム6台ずつの車でサッカーをするというゲームなのだが、それぞれの戦術とメンバーのドライビングテクニックが活かされた好ゲームが展開された。

グイグイとゲームメイクしていくのが矢部軍の2人、Vシネ俳優コンビの哀川翔と小沢仁志。現役ラリードライバーの哀川がドリブルで敵陣に切り込んでいけば、命知らずの小沢も廃車上等で相手の車に突進していく。

芸人たちも負けてはいない。『水曜日のダウンタウン』で抜群の素人対応力を見せた平成ノブシコブシ・吉村崇がこちらでもディフェンス力を発揮したかと思えば、じゅんいちダビッドソンも本田圭佑ばりの巧みなテクニックを披露したりする。

一方、浜田軍は「ミスターGT」の異名を持つ脇坂寿一の活躍で反撃するも、大将・浜田が役に立たずに苦戦を強いられる。ところが、ガンガン攻めすぎた矢部軍の車が廃車になっていくと、徐々に数的優位に立つようになり……って、なんか普通のスポーツについて書いてるみたいだ。

ほかにも戦略と度胸がモノを言う「戦闘車棒倒し」、ローションまみれの道の上で車をあえて追突させて得点を競う「戦闘車カーリング」などゲーム性の高い競技が続々登場。もちろん、車はどんどんぶっ壊れていく。命がけの出演者たちも当然、真剣だ。

シーズン1の悪いところを全部直してきたシーズン2


実は昨年配信された『戦闘車』シーズン1は非常に評判が悪かった。期待が大きかった分、「惜しい」という評価になってしまったのだが、シーズン2はシーズン1の悪いところを徹底的に排除して成功を収めている。


まず、大仰な設定と演出がなくなった。車種の紹介パートもなくなった(そもそもシーズン2では車種を明かしていない)。そして不評の極みだった浜田とジュニアのコントまがいのパートもまったくなくなった。そのおかげで番組全体のテンポが非常に良くなっている。

視聴者が見たいのは、車を使った激しいバトル! 車のぶつけ合い! 車の潰し合い! 上記の演出は全部邪魔だったのだ。そのことを製作者側がはっきりと理解して一気に改善したのだろう。ネット番組の風通しの良さ、自由さの賜物なのかもしれない。

シーズン2はとにかくタイトかつスピーディーに車のバトルを見せることに専念している。余分な演出をなくした代わりに、見せ場はスローや複数のアングルでしっかり丁寧に見せる。そのことが番組の迫力と面白さに直結しているのだ。

テレビバラエティ好きからすれば、「ヘタクソ!」「ゴリラ!」とのびのびと浜田を罵倒する矢部の姿も楽しいだろう。ダウンタウンとナイナイが犬猿の仲と言われていたなんて信じられない。
大御所扱いされない浜田も前線に駆り出されて必死になって運転する。徹底的にヘタレ扱いされていた千原ジュニアが覚醒する瞬間も見逃せない。ラストの罰ゲーム、高さ15メートルまで吊るされた車に乗せられ、地上の車に垂直落下させられる人物が誰になるかにも注目だ。

スケールの大きなバラエティに飢えている人、『戦闘車』シーズン1に失望した人にぜひ見てもらいたい『戦闘車』シーズン2。Amazon Prime Videoにて独占配信中
(大山くまお)
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