「イマヒガチルドレン」なる言葉があるが、許されるならば筆者もそれを名乗りたい。さんま、紳助、ダウンタウンは出会った時からスターだったが、今田東野は格の上がる過程を目撃できた初めての関西芸人だった。TBSラジオ『今田東野のパック・イン・ミュージック21』(1992年10月〜1993年9月放送)は、筆者にとって生涯ナンバー1のラジオ番組。受けた影響は、正直、ダウンタウンよりも大きい。
今田東野は、ファンはもちろん、芸人やスタッフからの人気が高いと思う。理由はある。キャリアを重ねても老齢しても、プレイヤーの立ち位置から外れられない性根。地上波ゴールデンの仕切り芸で信頼を保ちつつ、「今田東野の~」と題された冠番組が始まったその時はヤバい。ゴールデン番組と同一人物とは思えぬ、根無し草な振る舞い。50代を迎えてあの現役感と元気の良さは異常。だから、いまだにガッカリしたことがないのだ。
Amazon Prime Video『今田×東野のカリギュラ』シーズン2パート2(第9~18話)の一挙独占配信が11月23日よりスタートしている。
「カリギュラ」とは、禁止されるほどやってみたくなる心理現象のこと。地上波では「マニアックすぎて視聴率が見込めない」「コンプライアンス的にNG」「くだらなすぎる」などの理由でボツになった企画を蘇らせるのが、この番組のコンセプトである。
今田東野が全国区で世に出たのは90年代前半。過激さこそ正義だったあの時代、2人は特に深夜番組で重宝されていた。過激な時代の最も過激な場所で本領を発揮していたレジェンドである。コンセプトとの相性はバッチリだ。
とは言え、過激だから是なのではない。この番組、いちいち“社会派”としての外ヅラを掲げ、取り繕おうとするのだ。
そうした要素を踏まえ、本稿ではシーズン2パート2についてネタバレにならない範囲で解説していきたいと思う。
『今田×東野のカリギュラ』を視聴する
●教えてシリガール ~セックスレス大国 日本を救う~(第9話)
「1人あたりの年間セックス回数ランキング」で、調査した41カ国中最下位だった“セックスレス大国”日本。現在、地上波のドラマやバラエティで女性の乳首が映ることは皆無だ。性に対する過剰な規制により、夫婦やカップルがムラムラする機会が失われた。「性=悪」という風潮は、遂には少子化問題にまで発展。だから、セックスの素晴らしさを語る「シリガール」から話を聞き、日本人のセックスレスを解消しよう! 社会貢献を目的とした、シーズン1から続く人気シリーズである。
いかにも、取って付けたような正義だ。このような外ヅラを見逃す今田東野ではない。シーズン1では、東野と司会のケンドーコバヤシによるこんなやり取りがあった。
東野 あれ。「シリガール」って、「尻軽」のことじゃないですか? 尻軽の話聞くだけちゃうの? こんなん、全部ウソやん。
ケンコバ 少子化担当大臣が動かないからシリガールが動くんですよ。別け隔てなく男性を愛してくれる、そういう女性たちです。
東野 尻軽やん!
端的に言えば、女性のエロい話を聞くだけの企画。どのように男性と肉体関係を結び、どのように楽しくセックスしているかを聞き、それをシリガールと今田東野が再現するのが主テーマである。
テイストとしては『やりすぎコージー』(テレビ東京系)の「モンロー祭り」に近いが、シチュエーションが完全ノンフィクションという点が異なる。生々しいので、その分、あちらよりムラムラする。
喜びのステージは続く。実は、シリガール企画の本筋はこの先にある。収録後、同番組のAD藤原(30歳・童貞)が楽屋を訪ね「今夜ヤラせて」と交渉するのが常なのだ。本当のシリガールならば、受け入れてくれるはず。要するに、実証実験だ。
今回、AD藤原は番組に登場してくれた女性ではなく、シリガールと名高いある芸人の嫁にアタックした。藤原がシリガールに交渉するのも、今回で3回目。場馴れしたのか、今までとは違う健闘ぶりが目を見張る。一方、相手をする某芸人の嫁も常人離れした包容力で好リアクションを見せた。
ドキドキ必至な実証実験の顛末を、ぜひ見届けてほしい。
「VTR観てたら、ムズムズすんねん(笑)!」(今田)
●地上波ではなかなか会えないあの人は今!? ~田中聖~(第10話)
訳あってテレビから姿を消した芸能人たち。そんな地上波で会えない人物に今田東野が話を聞く企画である。
シーズン1では後藤真希の弟、元EE JUMPの後藤祐樹が登場した。この手の訳あり人と対峙すると、聞き手は態度に困ってしまう。腫れ物のように扱うか? 尻込みして、ゆるい突っ込みに終始するか? さすが、今田東野はバラエティをわかっている。確信的にフランクであり続け、ズケズケを貫いたのだ。
「(祐樹の首の鯉の刺青を指さして)こんなん、隠されへんやん!」(東野)
そして、今回のゲストはKAT-TUNの元メンバーである田中聖だ。
2017年の騒動をきっかけに表舞台から姿を消した彼に、騒動後の苦悩について聞き出した今田東野。やっぱり、遠慮なしだった。
「今も職務質問的なことされたりすんの? 熱中症になってフラフラ歩いてたら最悪やで」(今田)
とは言え、危険球を放るだけじゃない。田中とのトーク、全体的な印象は“感動”で仕上がっている。バラエティでありながら笑いのみにベクトルを向けないのも同番組の特徴。田中とのトークが孕むメッセージ性は、北野武監督の映画『キッズ・リターン』にどことなく近い。
●SARAI選手権(第12話)
拉致とは一体どのように行われるのか? いまだに世界各地で行われている拉致の実態を知り、警鐘を鳴らす社会派企画である。内容は単純。芸人ペアが指定されたターゲットを拉致するだけの選手権。拉致できればミッション成功だ。
……あれ? これと似た企画が地上波で行われたと聞いたことがある。ロケを目撃した一般人が通報し、警察沙汰になった某一件のことだ。
違うのだ。あれとは違う。カリギュラがさらうのは、芸能界トップクラスの武闘派に限っている。一歩間違えば、拉致する側の命も危険な強者のみ狙うところが断じて異なる。
この選手権はシーズン1でも行われており、その時はデニス植野&アントニーのペアが貴闘力の拉致に成功した。すごい!
そんなディフェンディングチャンピオンチームに、今回はとてつもない標的が用意された。それが明かされた瞬間の2人のリアクションはネガティブそのもの。「ダメダメ! やめたほうがいいわ。これはやられる」と、実績あるデニス植野&アントニーが恐怖におののく程の強者である。
また、スタッフが雑なのだ。ワゴンで標的を尾行しながら「行く? 行っちゃう? 行くなら今だよ?」と、けしかけ方の無責任さがひどい。地上波と違い、余計なお膳立てはしていないようだ。プレイヤーに決断と行動を任せる手法は、まさに剥き身。バラエティでありながら、もはやドキュメント。規制とコンプライアンスの厳しい地上波ではたどり着けない境地である。
そして、わかったことがある。「狙われる側より狙う側のほうが有利」と戦いの鉄則のように言われるが、それはウソ。結局、頼りになるのは胆力と経験値と腕っぷしである。その結論に達する修羅場を、ぜひその目で目撃してほしい。
●私の父は大丈夫!ドキドキ浮キッス ~愛の修羅場編~(第17話)
とんでもない企画だ。「浮気ってそんな悪いものじゃないんじゃないですか?」を世に問う趣旨なのだ。
昨今、芸能界で浮気をした者は容赦なく世間からバッシングを受けるが、女性から誘惑されてその気にならない男の方が情けないのではないか? 日本を支えてきた活力溢れる年配男性にそんなお手本を見せてもらいたい! このような正義を掲げ、芸人の父親に美女の誘惑を仕掛け浮気のキスを促すドッキリ企画である。
あまりに強引すぎて、掲げてる正義が腑に落ちないかもしれない。なので、もっと詳しく説明しよう。ターゲットは一般人(芸人の父)である。誰もが羨む浮気のシチュエーションを用意し、最後に仕掛け人がキスを要求する。そんな素敵なシチュエーションで断る男は、おそらくいない。きっとキスする。
キスをした後、お父さんの中で何かが変わるはずだ。キスの瞬間、懺悔の念から愛する妻のことを考えるかもしれない。「夫婦の愛を再確認する」が、実は真の狙いなのだ。だから、堂々と浮気を推奨している。
しかも、タチが悪いのは、芸人のお母さん(妻)が現場でモニタリングしている点。
『お笑いウルトラクイズ』(日本テレビ系)の人間性クイズ並みにひどい。でも、こちらは家族問題へよりディープに踏み込んでいる。
ゲスな企画である。いちいち社会的な正義を標榜しているのも狡猾。何にせよ、決して地上波ではたどり着けない生々しさだ。
●今田・東野 世界へ飛ぶ ~The phoenix to the world~(第18話)
シーズン2パート1(第2話)にて「人間火の鳥コンテスト」が開催された。火を点けた機体でいかに遠くへ、いかに火の鳥のように飛べるかを競うコンテスト。
この時は、「あの過去を燃やしたい!」というモチベーションで矢口真里が、「もう1度かつてのバラエティのように熱くなりたい!」というモチベーションでノブコブ吉村が、「本家へのリベンジを果たしたい!」というモチベーションでドランクドラゴンの鈴木拓が出場。結果、感動のフィナーレを迎える奇跡的な大団円を見せたのは記憶に新しい。
これを観て、今田東野のハートにも火が点いた。
「第2回、大至急やって。俺飛ぶし、今田さんも飛ぶし!」(東野)
そんな流れで迎えたのが、この「今田・東野 世界へ飛ぶ」である。モチベーションは、吉村のそれと同じ。「もう1度かつてのバラエティのように熱くなりたい!」だ。しかも、使用される火薬は第2話の30倍!
百戦錬磨の2人でも、ここまで危険を伴う撮影は初めてとのこと。本番で東野が着るコスチュームを見て、とろサーモン久保田が「先輩、あんたは今日で死ぬよ」と断言するほどの危ない橋である。この芸歴でこのチャレンジはあまりに無謀だが、何より本人が「やりたい」と挙手した火の鳥なのだ。
本番直前、2人の飄々としている姿に惚れ惚れする。キャリアだ。トーク、MC、コント、リアクションと全てのベクトルでチャートマックスな力量がここに凝縮されている。
しかも、最終的にネットも地上波も関係なく「バラエティは素晴らしい」という着地点へ辿り着いた奇跡。決して、アンチ地上波ではない。究極的には、全てをひっくるめて笑いは感動。エンディングで少し目に涙を溜めている今田の表情が印象的だった。
「やる前とやった後で、こんなに気持ちが違うとは!」(今田)
最終話「今田・東野 世界へ飛ぶ ~The phoenix to the world~」の着地点で象徴されるように、この番組はあからさまに“過激”を狙っているわけではない。
現代社会を生きる人間が見落としがちな命の重さをストレートに提示する「東野、カラスを食う」(シーズン2第1話)や、最大公約数が視聴する地上波では扱えない人間関係の歪みを捉えた「再会 ~地上波では会えないあの人に会いたい~」(シーズン2第8話)は、ネット配信でなければたどり着けない境地だろう。しかし、アナーキーが目的ではいない。番組の総合演出・姉崎正広は、「お笑いナタリー」インタビューで発言している。
「やっぱり『ここでしか見られない』というものを作っていくべきだと思っています。『地上波で見られない』を意識していると思われがちなんですが、そんなことはなくて、ネットと地上波それぞれの形態にうまくハマった面白いものをどんどん作っていきたいです」
過激だから是ではなく、規制を緩くしなければ行き着けない地点を目指し続ける。結果、「これほどリアリティを追求した番組はない」とユーザーから高い支持を獲得、シーズン2のAmazon.co.jp カスタマーレビューのうち89%が★4以上である。(2018年12月5日時点)
本稿で各話の詳細について解説しているが、1話完結型エピソードが一挙配信されるので、好みのエピソードから視聴できるのも嬉しい。
そして、もしもシーズン2を観終わってしまったら、後はシーズン3で登場するであろう「東野、熊を狩る」を待つだけである。やはり、ジャパニーズバラエティに寄せる期待は尽きない。
(寺西ジャジューカ)
(C)2018 YD Creation
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【Amazon Prime Videoとは】
月額400円(携帯決済可能)を払えば、対象となる観たい作品を観たい方法(対応するテレビ、PlayStation、Wii、モバイルデバイス、Amazon Fire TV、Fire TV Stick、Fireタブレット、オンライン等)で視聴できるオンデマンド・エンターテイメント・サービス。
日本のオリジナル作品として、『HITOSHI MATSUMOTO Presents ドキュメンタル』、『バチェラー・ジャパン』、『仮面ライダーアマゾンズ』、『はぴまり〜Happy Marriage!?〜』、『クレヨンしんちゃん外伝』等をラインナップ中。その他、数千本の人気映画やテレビ番組も視聴することができる。
【Amazon Prime Video】
今田東野は、ファンはもちろん、芸人やスタッフからの人気が高いと思う。理由はある。キャリアを重ねても老齢しても、プレイヤーの立ち位置から外れられない性根。地上波ゴールデンの仕切り芸で信頼を保ちつつ、「今田東野の~」と題された冠番組が始まったその時はヤバい。ゴールデン番組と同一人物とは思えぬ、根無し草な振る舞い。50代を迎えてあの現役感と元気の良さは異常。だから、いまだにガッカリしたことがないのだ。
奇跡のフィナーレに目に涙を浮かべる今田
Amazon Prime Video『今田×東野のカリギュラ』シーズン2パート2(第9~18話)の一挙独占配信が11月23日よりスタートしている。

「カリギュラ」とは、禁止されるほどやってみたくなる心理現象のこと。地上波では「マニアックすぎて視聴率が見込めない」「コンプライアンス的にNG」「くだらなすぎる」などの理由でボツになった企画を蘇らせるのが、この番組のコンセプトである。
今田東野が全国区で世に出たのは90年代前半。過激さこそ正義だったあの時代、2人は特に深夜番組で重宝されていた。過激な時代の最も過激な場所で本領を発揮していたレジェンドである。コンセプトとの相性はバッチリだ。
とは言え、過激だから是なのではない。この番組、いちいち“社会派”としての外ヅラを掲げ、取り繕おうとするのだ。
そうした要素を踏まえ、本稿ではシーズン2パート2についてネタバレにならない範囲で解説していきたいと思う。
『今田×東野のカリギュラ』を視聴する
●教えてシリガール ~セックスレス大国 日本を救う~(第9話)
「1人あたりの年間セックス回数ランキング」で、調査した41カ国中最下位だった“セックスレス大国”日本。現在、地上波のドラマやバラエティで女性の乳首が映ることは皆無だ。性に対する過剰な規制により、夫婦やカップルがムラムラする機会が失われた。「性=悪」という風潮は、遂には少子化問題にまで発展。だから、セックスの素晴らしさを語る「シリガール」から話を聞き、日本人のセックスレスを解消しよう! 社会貢献を目的とした、シーズン1から続く人気シリーズである。
いかにも、取って付けたような正義だ。このような外ヅラを見逃す今田東野ではない。シーズン1では、東野と司会のケンドーコバヤシによるこんなやり取りがあった。
東野 あれ。「シリガール」って、「尻軽」のことじゃないですか? 尻軽の話聞くだけちゃうの? こんなん、全部ウソやん。
ケンコバ 少子化担当大臣が動かないからシリガールが動くんですよ。別け隔てなく男性を愛してくれる、そういう女性たちです。
東野 尻軽やん!
端的に言えば、女性のエロい話を聞くだけの企画。どのように男性と肉体関係を結び、どのように楽しくセックスしているかを聞き、それをシリガールと今田東野が再現するのが主テーマである。

テイストとしては『やりすぎコージー』(テレビ東京系)の「モンロー祭り」に近いが、シチュエーションが完全ノンフィクションという点が異なる。生々しいので、その分、あちらよりムラムラする。
喜びのステージは続く。実は、シリガール企画の本筋はこの先にある。収録後、同番組のAD藤原(30歳・童貞)が楽屋を訪ね「今夜ヤラせて」と交渉するのが常なのだ。本当のシリガールならば、受け入れてくれるはず。要するに、実証実験だ。
今回、AD藤原は番組に登場してくれた女性ではなく、シリガールと名高いある芸人の嫁にアタックした。藤原がシリガールに交渉するのも、今回で3回目。場馴れしたのか、今までとは違う健闘ぶりが目を見張る。一方、相手をする某芸人の嫁も常人離れした包容力で好リアクションを見せた。
ドキドキ必至な実証実験の顛末を、ぜひ見届けてほしい。
「VTR観てたら、ムズムズすんねん(笑)!」(今田)
●地上波ではなかなか会えないあの人は今!? ~田中聖~(第10話)
訳あってテレビから姿を消した芸能人たち。そんな地上波で会えない人物に今田東野が話を聞く企画である。
シーズン1では後藤真希の弟、元EE JUMPの後藤祐樹が登場した。この手の訳あり人と対峙すると、聞き手は態度に困ってしまう。腫れ物のように扱うか? 尻込みして、ゆるい突っ込みに終始するか? さすが、今田東野はバラエティをわかっている。確信的にフランクであり続け、ズケズケを貫いたのだ。
「(祐樹の首の鯉の刺青を指さして)こんなん、隠されへんやん!」(東野)
そして、今回のゲストはKAT-TUNの元メンバーである田中聖だ。

2017年の騒動をきっかけに表舞台から姿を消した彼に、騒動後の苦悩について聞き出した今田東野。やっぱり、遠慮なしだった。
「今も職務質問的なことされたりすんの? 熱中症になってフラフラ歩いてたら最悪やで」(今田)
とは言え、危険球を放るだけじゃない。田中とのトーク、全体的な印象は“感動”で仕上がっている。バラエティでありながら笑いのみにベクトルを向けないのも同番組の特徴。田中とのトークが孕むメッセージ性は、北野武監督の映画『キッズ・リターン』にどことなく近い。
●SARAI選手権(第12話)
拉致とは一体どのように行われるのか? いまだに世界各地で行われている拉致の実態を知り、警鐘を鳴らす社会派企画である。内容は単純。芸人ペアが指定されたターゲットを拉致するだけの選手権。拉致できればミッション成功だ。

……あれ? これと似た企画が地上波で行われたと聞いたことがある。ロケを目撃した一般人が通報し、警察沙汰になった某一件のことだ。
違うのだ。あれとは違う。カリギュラがさらうのは、芸能界トップクラスの武闘派に限っている。一歩間違えば、拉致する側の命も危険な強者のみ狙うところが断じて異なる。
この選手権はシーズン1でも行われており、その時はデニス植野&アントニーのペアが貴闘力の拉致に成功した。すごい!

そんなディフェンディングチャンピオンチームに、今回はとてつもない標的が用意された。それが明かされた瞬間の2人のリアクションはネガティブそのもの。「ダメダメ! やめたほうがいいわ。これはやられる」と、実績あるデニス植野&アントニーが恐怖におののく程の強者である。
また、スタッフが雑なのだ。ワゴンで標的を尾行しながら「行く? 行っちゃう? 行くなら今だよ?」と、けしかけ方の無責任さがひどい。地上波と違い、余計なお膳立てはしていないようだ。プレイヤーに決断と行動を任せる手法は、まさに剥き身。バラエティでありながら、もはやドキュメント。規制とコンプライアンスの厳しい地上波ではたどり着けない境地である。
そして、わかったことがある。「狙われる側より狙う側のほうが有利」と戦いの鉄則のように言われるが、それはウソ。結局、頼りになるのは胆力と経験値と腕っぷしである。その結論に達する修羅場を、ぜひその目で目撃してほしい。
●私の父は大丈夫!ドキドキ浮キッス ~愛の修羅場編~(第17話)
とんでもない企画だ。「浮気ってそんな悪いものじゃないんじゃないですか?」を世に問う趣旨なのだ。
昨今、芸能界で浮気をした者は容赦なく世間からバッシングを受けるが、女性から誘惑されてその気にならない男の方が情けないのではないか? 日本を支えてきた活力溢れる年配男性にそんなお手本を見せてもらいたい! このような正義を掲げ、芸人の父親に美女の誘惑を仕掛け浮気のキスを促すドッキリ企画である。
あまりに強引すぎて、掲げてる正義が腑に落ちないかもしれない。なので、もっと詳しく説明しよう。ターゲットは一般人(芸人の父)である。誰もが羨む浮気のシチュエーションを用意し、最後に仕掛け人がキスを要求する。そんな素敵なシチュエーションで断る男は、おそらくいない。きっとキスする。
キスをした後、お父さんの中で何かが変わるはずだ。キスの瞬間、懺悔の念から愛する妻のことを考えるかもしれない。「夫婦の愛を再確認する」が、実は真の狙いなのだ。だから、堂々と浮気を推奨している。
しかも、タチが悪いのは、芸人のお母さん(妻)が現場でモニタリングしている点。

『お笑いウルトラクイズ』(日本テレビ系)の人間性クイズ並みにひどい。でも、こちらは家族問題へよりディープに踏み込んでいる。
ゲスな企画である。いちいち社会的な正義を標榜しているのも狡猾。何にせよ、決して地上波ではたどり着けない生々しさだ。
●今田・東野 世界へ飛ぶ ~The phoenix to the world~(第18話)
シーズン2パート1(第2話)にて「人間火の鳥コンテスト」が開催された。火を点けた機体でいかに遠くへ、いかに火の鳥のように飛べるかを競うコンテスト。

この時は、「あの過去を燃やしたい!」というモチベーションで矢口真里が、「もう1度かつてのバラエティのように熱くなりたい!」というモチベーションでノブコブ吉村が、「本家へのリベンジを果たしたい!」というモチベーションでドランクドラゴンの鈴木拓が出場。結果、感動のフィナーレを迎える奇跡的な大団円を見せたのは記憶に新しい。
これを観て、今田東野のハートにも火が点いた。
「第2回、大至急やって。俺飛ぶし、今田さんも飛ぶし!」(東野)
そんな流れで迎えたのが、この「今田・東野 世界へ飛ぶ」である。モチベーションは、吉村のそれと同じ。「もう1度かつてのバラエティのように熱くなりたい!」だ。しかも、使用される火薬は第2話の30倍!

百戦錬磨の2人でも、ここまで危険を伴う撮影は初めてとのこと。本番で東野が着るコスチュームを見て、とろサーモン久保田が「先輩、あんたは今日で死ぬよ」と断言するほどの危ない橋である。この芸歴でこのチャレンジはあまりに無謀だが、何より本人が「やりたい」と挙手した火の鳥なのだ。
本番直前、2人の飄々としている姿に惚れ惚れする。キャリアだ。トーク、MC、コント、リアクションと全てのベクトルでチャートマックスな力量がここに凝縮されている。
しかも、最終的にネットも地上波も関係なく「バラエティは素晴らしい」という着地点へ辿り着いた奇跡。決して、アンチ地上波ではない。究極的には、全てをひっくるめて笑いは感動。エンディングで少し目に涙を溜めている今田の表情が印象的だった。
「やる前とやった後で、こんなに気持ちが違うとは!」(今田)
「地上波で見られない」ではなく「ここでしか見られないバラエティ」
最終話「今田・東野 世界へ飛ぶ ~The phoenix to the world~」の着地点で象徴されるように、この番組はあからさまに“過激”を狙っているわけではない。
現代社会を生きる人間が見落としがちな命の重さをストレートに提示する「東野、カラスを食う」(シーズン2第1話)や、最大公約数が視聴する地上波では扱えない人間関係の歪みを捉えた「再会 ~地上波では会えないあの人に会いたい~」(シーズン2第8話)は、ネット配信でなければたどり着けない境地だろう。しかし、アナーキーが目的ではいない。番組の総合演出・姉崎正広は、「お笑いナタリー」インタビューで発言している。
「やっぱり『ここでしか見られない』というものを作っていくべきだと思っています。『地上波で見られない』を意識していると思われがちなんですが、そんなことはなくて、ネットと地上波それぞれの形態にうまくハマった面白いものをどんどん作っていきたいです」
過激だから是ではなく、規制を緩くしなければ行き着けない地点を目指し続ける。結果、「これほどリアリティを追求した番組はない」とユーザーから高い支持を獲得、シーズン2のAmazon.co.jp カスタマーレビューのうち89%が★4以上である。(2018年12月5日時点)
本稿で各話の詳細について解説しているが、1話完結型エピソードが一挙配信されるので、好みのエピソードから視聴できるのも嬉しい。
そして、もしもシーズン2を観終わってしまったら、後はシーズン3で登場するであろう「東野、熊を狩る」を待つだけである。やはり、ジャパニーズバラエティに寄せる期待は尽きない。
(寺西ジャジューカ)
(C)2018 YD Creation
『今田×東野のカリギュラ』を視聴する
【Amazon Prime Videoとは】
月額400円(携帯決済可能)を払えば、対象となる観たい作品を観たい方法(対応するテレビ、PlayStation、Wii、モバイルデバイス、Amazon Fire TV、Fire TV Stick、Fireタブレット、オンライン等)で視聴できるオンデマンド・エンターテイメント・サービス。
日本のオリジナル作品として、『HITOSHI MATSUMOTO Presents ドキュメンタル』、『バチェラー・ジャパン』、『仮面ライダーアマゾンズ』、『はぴまり〜Happy Marriage!?〜』、『クレヨンしんちゃん外伝』等をラインナップ中。その他、数千本の人気映画やテレビ番組も視聴することができる。
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