デジタルの急速な発展とともにその派手さや出玉の瞬発力、爆発力がどんどん上昇していった90年代のパチンコ・パチスロは、最盛期で遊技人口が3000万人近くに達する人気だった。

パチンコのCMもじゃんじゃん流れていたそんな時代に、人々に強烈な印象を残した『パチンコマン』という一風変わったパチンコソングが誕生した。


思いっきりパチンコ否定曲


ジャンジャンバリバリ…「パチンコマン」歌詞はパチンコを真正面から否定する内容だった
『パチンコマン』画像はAmazonより

「ジャンジャンバリバリ ジャンジャンバリバリ パチンコマン♪」というフレーズは、パチンコをしたことがない人でも1度は耳にしたことがあるだろう。この曲は、BOOGIE MAN(ブギーマン)が1994年にリリースしたレゲエソング。シングル発売から3ヶ月で30万枚を突破するほどの人気を博した一曲だ。

上記フレーズがあまりに有名すぎるためか、一聴すると応援歌のようにも聴こえるが実はこの曲、パチンコを真正面から思いっきり否定している曲だったのである。

陽気な音楽に皮肉をたっぷりのせて


歌われている内容は、パチンコあるあるにパチンコ屋あるある。しかしよくよく聞くとこれが実に皮肉たっぷりなのだ。ところが、レゲエという陽気な音楽に乗っているとまったく嫌味に聞こえないという不思議な曲だった。
筆者も嗜む程度にパチンコで遊んでいたが、パチンコ屋でこの小気味良い曲を耳にしていたときは、否定されているなんて思いもよらなかった。それはなぜか。「ジャンジャンバリバリ…」の部分しか覚えていないからである。

レゲエをバックにリズミカルに繰り返されるこのフレーズは、不思議なことに謎の高揚感をもたらした。そして「今日もたくさん出したるぜ!」と思ってしまう。このフレーズが印象的すぎるがゆえにほかの歌詞は自然と右耳から入って左耳から抜けていってしまっていたのだ。


“女房子供が泣いてるぜ”
“わかりもせんのに釘を見て”
“また明日もってほとんど病気”

冷静になってこの曲を聴いてみると、その節々に心当たりがありすぎて、胸が痛むような歌詞のオンパレードとなっている。しかし、冷静に聞けば皮肉が心に響くかもしれないが、打ち手の気分が高揚しているパチンコ屋では応援ソングにしか聞こえない。それこそなんとも皮肉なものだが、あれだけリフレインされたらそりゃ聞くほうも麻痺するってもんだろう。

90年代の最盛期には1万7000店舗以上あったパチンコ店の多くで、パチンコ否定ソングが流されていたこと自体不思議な現象ではあったが、もしかしたらパチンコ依存症が社会問題となることをこの曲は予期していたのかもしれない。

適度に楽しむぶんには結構だが、今自身でも少し度がすぎているように思うようなら、家で『パチンコマン』を聴いてみてはいかがだろう。

(空閑叉京/HEW)