90年代初頭、ストリートファイターIIを筆頭にアーケードゲームの主役は一気に格闘ゲームに傾きかけていた。格闘ゲームは打撃や必殺技を繰り出して対戦相手の体力ゲージを0にするか、タイムアップ時に自身の体力ゲージ残量が相手より多ければ勝利というシンプルなルールだ。


「それだけで満足するのか?」とでも言いたげなアメリカ生まれの格闘ゲーム『モータルコンバット』が、そんな格闘ゲーム界の熾烈な争いに少し遅れて参戦してきた。
「モータルコンバット」実写取り込みの残虐描写が与えた衝撃を振り返る
画像はAmazonより

実写の微妙なキャラクターともっさり操作


『モータルコンバット』の特徴は、実写から取り込んで作られたリアルなキャラクターだ。しかしなぜか使用可能キャラ7名のうち、実に5名の見た目がアジア系だった。インターネットもない時代、アメリカでは本気で今でも忍が暗躍しているとでも思っていたのだろうか。

また、ストリートファイターIIの操作に慣れてしまったゲーマーたちにとって、『モータルコンバット』のもっさりした操作性は受け入れがたいものがあった。そのため日本での人気はいまひとつだった。

衝撃のフィニッシュ「究極神拳」


登場当時は微妙という評価しか受けていなかった『モータルコンバット』だが、他とは違う画期的なシステムが一部のマニア層にガッチリとハマった。そのシステムとは「FATALITY」という勝利後にフィニッシュを決めることのできるシステムで、日本版では“究極神拳”という無駄にかっこいい名称がつけられている。


これは、勝利確定後にコマンドを入力することで敗者を殺すことができるという衝撃的なシステムだ。思い出してみてほしい。ストリートファイターIIではいくら敗者とはいえ、ただ顔から鼻血を出したり、ボコボコに腫れ上がったりしていただけで命まではとられていなかったことを。

「モータルコンバット」実写取り込みの残虐描写が与えた衝撃を振り返る
画像はYouTubeより


『モータルコンバット』はその点とてもシビアな格闘ゲームだった。究極神拳コマンドがきまると、敗者の身体を真っ二つに割いたり、頭部を切断したり、龍に変身して食べてしまったり…と、ギャング顔負けの虐殺が繰り広げられるのだ。しかも、アニメーションではなく実写取り込みのキャラクターによって。


こういった残虐性は本国アメリカをはじめヨーロッパでは大変な人気となったが、日本では一部の熱狂的なマニアによって支えられただけだった。

2015年に再び日本市場に復活


『モータルコンバット』がひとつのきっかけとなってレイティング規制の動きが活発になったという噂は有名だ。スーパーファミコンでもアーケード移植版が発売されたが、その残虐性からか、一部表現に規制がかけられていた。

1996年に発売された『モータルコンバット トリロジー』を最後に日本から姿を消し、日本ではあまりその名を聞くことが多くなかった『モータルコンバット』だが、2015年に発売された『モータルコンバットX』で再び日本市場に姿を現した。

さすがに過去作のように実写取り込みではなく3Dグラフィックでキャラクターは作られているが、パニックホラー系洋画好きなら、もしかすると『モータルコンバット』愛好家になれる素質があるかもしれない。

(空閑叉京/HEW)