旅館に置かれたファミコンボックスの思い出 家族旅行の暇つぶしにちょうどよかった
「ファミコンボックス」画像はヤフオク!より

今のようにスマートフォンなどなかった時代、家族旅行で泊まる宿での過ごし方はなんだったかと考えると、大人であれば温泉や料理、お酒があれば十分だろう。しかし、子供には「ただゆっくりする」という選択肢はない。
大人と同じように宿を楽しむという思考にはなれない筆者のような子供にとって、宿とは退屈な場であった。

子どもにとっての退屈しのぎはやっぱりファミコン


筆者が子どもの頃、宿に期待していたことはずばり“ゲームがあるかどうか”、その一点のみだった。なかでも楽しい思い出として残るのは、部屋にファミコンが設置してある宿だ。

宿泊部屋に置かれているファミコンとは、100円を投入すると15分なり30分なり遊べるという代物。ソフトは搭載されており、数種類のファミコンゲームの中から自由に遊べるというものだった。これがあるのとないので、子供にとって宿での過ごし方が大きく変わった。

両親が窓際からの風景に情趣を感じている最中、窓から見える景色になんの興味を持てない子供はファミコンに興じる。それぞれが至高の時間を過ごしていたと言ってもいいだろう。

わかる旅館だと光線銃も完備


旅館に配置されていたファミコンは、旅館向けのファミコンで名を「ファミコンボックス」といった。コンテンツのラインナップこそ「スーパーマリオブラザーズ」や「マリオブラザーズ」、「ドンキーコング」といった古いファミコンソフトだったが、その古さが逆に新鮮な気持ちにさせてくれたものだ。

さらに、“わかる”旅館だと、光線銃も用意されていた。使用するのは、「ダックハント」や「ホーガンズアレイ」といった画面に銃を向けて打つというシューティングゲームだ。光線銃を使うゲームは、それこそ当時の子どもにはレアもので、テンションの上がり方も半端なかった。
“わかる”旅館なのに“残念な”ケースとして、光線銃があるのに、いくら打っても反応しないなどメンテナンスされていないことも多かった。

時代とともに携帯用ゲーム機や携帯電話、スマートフォンで手軽にゲームができるようになっていったのに伴い、ファミコンボックスはその役目を終え旅館から姿を消していった。

しかし、数こそ少ないもののTwitterなどで発見が報告されると物珍しさからちょっとした騒ぎになったりしている。今こそファミコンボックスも復活の時なのではないだろうか。大人になった今、それを目当てに旅行に行くのもまた乙な楽しみになるかもしれない。

(空閑叉京/HEW)
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