動画サイトやテレビ、イベントなど、さまざまなシーンに活躍の場を広げつつある「VTuber」(バーチャルユーチューバー)、なんとその数はすでに6000人を突破したという。

VTuberとは、モーションキャプチャなどの技術を使用して演者の動きを反映させることで、CGによる仮想キャラクターになりきって動画制作、投稿を行うYouTuberの派生形。現在人気のコンテンツのひとつだ。

まさに飛ぶ鳥を落とす勢いで増加、成長しているVTuberだが、話は変わって「伊達杏子」という名に聞き覚えはないだろうか。もしかすると「誰?」という反応のほうが多いかもしれない。実は彼女は、90年代に存在した、元祖VTuberとも言えるバーチャルアイドルなのだ。

ホリプロ所属の3DCGアイドル


伊達杏子は96年に芸能プロダクション・ホリプロからデビューした3DCGのバーチャルアイドル。プロフィールも具体的で、79年生まれの東京都福生市出身、身長・体重・スリーサイズもしっかりと公開されていた。

デビュー当初は海外メディアに注目されるほど話題を集め、テレビやラジオ番組への出演を経てCDデビューまでやってのけた。しかし、残念ながら人気は長続きすることなく、ひっそりと姿を消してしまった。

しかし、彼女はアップデートを繰り返していたのだ。2001年には2代目が、2007年には3代目が登場したが、ほどなくして活動を休止した。そして時は流れ、多くの人がその存在を忘れかけていた頃、彼女は突如Twitter上に降臨した。2018年11月5日のことである。彼女は39歳になっていた。



伊達杏子の娘「あやの」、VTuberになる宣言


伊達杏子がTwitterを始めたことにも驚いたが、それ以上に驚いたのは「伊達あやの」という娘がいたということだ。2002年生まれの16歳、タレントを夢見てYouTubeをはじめることにしたという今どきの女の子。「あやのを立派なVTuberに育てるためのクラウドファンディング」が行われている真っ最中だ。




「娘に言われたTwitterをはじめました」とプロフィールに綴る伊達杏子。元祖バーチャルアイドルなのに、ツイートを見るにタイピングやインターネットスラングについては疎いのだろうか。伊達杏子のツイートは、まさに“普通のお母さん”だった。そこにはバーチャルアイドルだった当時の面影はない。しかし、逆にそんなところが妙に好感が持てる気もするが…。

90年代では時代を先取りしすぎた母親、そして2018年現在では後発組となる娘、生存競争は熾烈を極めることになりそうだが、果たして彼女たちは生き残ることができるのだろうか。

90年代を生きた筆者としては、娘の伊達あやのの今後の活躍にも期待したいが、母となった伊達杏子の元祖バーチャルアイドルとして再起をかけた39歳の生き様を見たい気持ちのほうが強い。

(空閑叉京/HEW)