hyde「クリスマスだから逢えた。この日に感謝」 愛と感動のL'ArChristmas!/レポート
19日公演

撮影/今元秀明、岡田貴之、緒車寿一、加藤千絵、田中和子

■L'Arc~en~Ciel『LIVE 2018 L'ArChristmas』
2018.12.19(WED)at 東京ドーム


平成最後の冬、L'Arc~en~Cielから贈られた特大のプレゼント『LIVE 2018 L'ArChristmas』。会場の東京ドームに詰めかけた11万人(2日間の合計)と、日本国内や香港、台湾、韓国などで実施されたライヴビューイングを鑑賞した世界中の人々が夢のような3時間を分かち合った。


セットの中核をなす巨樹は、まるで会場を温かく見守るようにそびえ立っていた。来場した55,000人の中には、サンタクロースの衣装を着たファンの姿も。バンドにとって初となるクリスマスライヴを心底楽しもうという気持ちがドームを満たしていた。

18時15分を過ぎた頃だった。会場が暗転し、荒涼とした広大な白い原野が巨大スクリーンに映し出された。冬の木立を思わせるツノを持つトナカイに似た動物が、その荒野を駆け抜けていく。白い大地が割れ、巨大な氷の柱の中に眠るL'Arc~en~Ciel の4人の姿が映し出されると、場内のボルテージは一気に上昇。轟音とともに1人ずつが目覚め、ステージに降臨する演出にのっけから度肝を抜かれた。

hyde「クリスマスだから逢えた。この日に感謝」 愛と感動のL'ArChristmas!/レポート
19日公演

撮影/今元秀明、岡田貴之、緒車寿一、加藤千絵、田中和子

hyde「クリスマスだから逢えた。この日に感謝」 愛と感動のL'ArChristmas!/レポート
19日公演

撮影/今元秀明、岡田貴之、緒車寿一、加藤千絵、田中和子


ライヴは、「winter fall」のhyde(Vo)の艶やかなヴォーカルで幕を開けると、歓喜の声がわき上がった。「TOKYO!」とhydeが呼びかけ、レーザーが乱舞する中で「Caress of Venus」へとなだれ込んだ。トレンドのグレーのチェックをロングジャケットに仕立てたtetsuya(Ba)は、裾を翻しながら華麗にパフォーマンス。ステージの端まで歩み寄り、オーディエンスを鼓舞した。


3曲目「snow drop」では、観客の腕に巻かれたL'edバンド(リストバンド型LEDライト)が青く点滅。スクリーンに降る雪の結晶と相まって、ロマンチックで幻想的な空間を創り出した。しっとりと歌い終えた後、「Thank you, Tokyo...」とhydeがつぶやき、甘い余韻が会場を包んだ。

これまでに、Le Zenith de Paris(仏)やMadison Square Garden(米)、国立競技場など国内外で挑戦的なライヴを数々開催してきた。その4人がクリスマスライヴは初というのは意外だが、バンドとしても人間としても深みを増した今こそ、衒(てら)いなく表現できるという確信のもと決断したのかもしれない。

終盤のMCでhyde自らが語ったように、本ライヴは昨年の結成25周年を記念した『25th L'Anniversary LIVE』開催に際して募ったリクエストをもとに、演奏できなかった人気曲の中から冬をテーマにセットリストを組んだという。そのコンセプト自体がファンコンシャスそのものではないか。

hyde「クリスマスだから逢えた。この日に感謝」 愛と感動のL'ArChristmas!/レポート
19日公演

撮影/今元秀明、岡田貴之、緒車寿一、加藤千絵、田中和子

hyde「クリスマスだから逢えた。この日に感謝」 愛と感動のL'ArChristmas!/レポート
19日公演

撮影/今元秀明、岡田貴之、緒車寿一、加藤千絵、田中和子



最初のMCで、「みなさんこんばんは! Hoo! L'Arc~en~Cielです。どうですか、これ?! 4人揃ってる。1年8ヶ月ぶりに揃いました。どうよ、これはすでにクリスマスの奇跡が起こってるっていうことではないのか。平成最後のL'Arc~en~Cielを一緒に楽しもうぜ!」「こんな師走の平日にいらっしゃるみなさんは……かなりのマニアとお見受けしました。
今日は久しぶりの曲も少し用意させてもらいましたんで。最後まで楽しんでってください!」と呼びかけた。ken(Gt)はその間、タバコに火をつけたのだが、その自然な振る舞いやいい意味で悪童ぶりを失わない佇まいは、キース・リチャーズとどこか重なって見えた。

hyde「クリスマスだから逢えた。この日に感謝」 愛と感動のL'ArChristmas!/レポート
19日公演

撮影/今元秀明、岡田貴之、緒車寿一、加藤千絵、田中和子


「まずは「BLESS」(2010年リリース)から。聴いてください」と始まった中盤。ダークなイントロに歓声が上がった「接吻」では、yukihiro(Dr)のパワフルなドラムに合わせて艶かしく体を揺らしながら歌唱するhydeのコーンロウが揺れていた。ライヴ中は寡黙に徹していたyukihiroだが、その分ヘヴィなグルーヴを叩きだしたり、かと思えば性急なビートで煽ったりと、ドラムで雄弁に語っていたように思う。グリーンのライトに覆われた「fate」を、重厚なバンドサウンドに乗せエモーショナルに歌いあげたかと思えば、「Dearest Love」では、祈るような歌声が聴く者の心を揺さぶった。

kenの哀愁を帯びたギターで始まった「MY HEART DRAWS A DREAM」は、途中からパッと華やぐような開放感のあるバンドサウンドへと展開。明るい光を感じさせるサウンドの中、hydeはセンターステージへと続く花道をゆっくりと歩いていった。「夢を描くよ」と観客が大合唱しながら、青く点灯するリストバンドを揺らす。それに向かってhydeが「もっと!」と呼びかける光景は、ピュアな美しさに溢れていた。
「Hurry Xmas」で、tetsuyaにhydeが歩み寄り肩を組むサプライズも。55,000人はもちろん諸手を挙げて大喜びし、場内がますますハッピーに染まっていった。

hyde「クリスマスだから逢えた。この日に感謝」 愛と感動のL'ArChristmas!/レポート
19日公演

撮影/今元秀明、岡田貴之、緒車寿一、加藤千絵、田中和子

hyde「クリスマスだから逢えた。この日に感謝」 愛と感動のL'ArChristmas!/レポート
20日公演

撮影/今元秀明、岡田貴之、緒車寿一、加藤千絵、田中和子


火の玉が上がり、轟音が鳴り響いた「Driver's High」では「限界まで振り切ってくれ! TOKYO」とhydeがハッパをかけると、オーディエンス達も負けじとサビで大合唱しジャンプを決めた。跳躍して一体感を強めた直後、リストバンドは青く点灯し「DIVE TO BLUE」へ。yukihiroが刻むタイトなリズムに合わせるように、観客も手拍子をはじめた。

サンタたちが、場内の通路を練り歩き客席へプレゼントを投げ入れはじめたのを合図に、4人はセンターステージへと移動。サンタのガウンを羽織ったhydeを始め、4人が姿を見せると再び大きな歓声に包まれた。

次の曲は「未来世界」だった。コーラスとアカペラによる清らかさに導かれ、中盤からはウォームなバンドサウンドへと昇華。tetsuyaのアップライトベースの温もりある音色が、サウンドに奥行きを与えていた。

hyde「クリスマスだから逢えた。この日に感謝」 愛と感動のL'ArChristmas!/レポート
20日公演

撮影/今元秀明、岡田貴之、緒車寿一、加藤千絵、田中和子


続く「静かの海で」は、一転してアンビエンシーな世界へ誘われた。青いライトの海に沈むような、もしくは宇宙で圧倒的な孤独に包まれるような感覚を静謐な世界観を垣間見た人も多かったのではないだろうか。


hydeとtetsuya、そしてyukihiroもギターを手にした「trick」は、4人全員でヴォーカルをリレー。弦楽器を手にした4人がメインステージに戻り、横一列に並び立つ光景は、実に雄々しく威厳を放っていた。

バンドサウンドとエレクトロニカがヘヴィに融合した「X X X」からはいよいよ終盤戦。前向きなエナジーを携えた「Link」では、キャノン砲が打ち上げられたと同時に、巨大バルーンがいくつも場内を跳ねまわった。「TOKYO!」と嬉しそうに笑顔を浮かべ踊り回るhydeに触発され、手拍子を打ちながら応じる観客。大きなバルーンが弾けて、中からカラフルな風船がこぼれ出す光景は、なんとも多幸感に溢れていた。

hyde「クリスマスだから逢えた。この日に感謝」 愛と感動のL'ArChristmas!/レポート
20日公演

撮影/今元秀明、岡田貴之、緒車寿一、加藤千絵、田中和子

hyde「クリスマスだから逢えた。この日に感謝」 愛と感動のL'ArChristmas!/レポート
20日公演

撮影/今元秀明、岡田貴之、緒車寿一、加藤千絵、田中和子


「みんなニコニコして楽しそう。いいね。綺麗です、キラキラしてて」「今回はね、去年のコンサートの時リクエストをもらった中で、ほとんどやれなかったんで、その時の上位の曲から冬の曲を選んでやってます。そういう感じです(笑)。「なんやこの曲っていう曲も……今日マニアが多いからほとんど大丈夫だと思いますけど。よう集まったわ」とhydeが語りかけると、客席から「ありがとう」の声がかかる。
すると、「こちらこそ(ありがとう)」と返礼。「アマチュア時代からやっている曲です。案外クリスマスっぽいなと」と「White Feathers」を紹介した。エバーグリーンなナンバーに合わせて、白い雪を思わせる羽が舞い上がり幻想的な空気に包まれた。

インターバルの後「Don't be Afraid」を披露。ここでようやく、tetsuyaが口を開いた。「ヤッホー! お元気ー? あの……平日にありがとうございます。ラルクとして初めてのクリスマスライヴ。初めてって感じせぇへんね。『L'ArChristmas』……なんで思いつかなかったんかなと思って。続き、聴きたい? 行くで!!」

痛快な「twinkle, twinkle」から、アカペラで独唱し始めた「I Wish」へ。サビで会場全体が合唱する様は、あたかもクリスマスミサのようだった。


「みんな、近づくとニコニコする。かわいいよね。楽しんでもらえたかな? クリスマスがテーマのライヴは、(L'Arc~en~Cielにとって)珍しいと思います。みんながニコニコしてるから、こっちがプレゼントをもらったみたいです。皆さんがサンタになれたってことです。いつでも誰かのサンタになってあげてください」

hyde「クリスマスだから逢えた。この日に感謝」 愛と感動のL'ArChristmas!/レポート
20日公演

撮影/今元秀明、岡田貴之、緒車寿一、加藤千絵、田中和子

hyde「クリスマスだから逢えた。この日に感謝」 愛と感動のL'ArChristmas!/レポート
20日公演

撮影/今元秀明、岡田貴之、緒車寿一、加藤千絵、田中和子


すると、客席のL'edバンドで「L'ArChristmas」の文字が浮かび上がった。「クリスマスだから逢えた。導いてくれた、この日に感謝します」と告げると、パイプオルガンやストリングスの荘厳な音色が会場を満たした。シアトリカルなギターソロや重厚なベースラインに乗せ、情感たっぷりに歌い上げる「雪の足跡」に合わせて、天井から再び雪(のような羽)が降ってきた。最後の最後まで、夢見心地で心温まるスペシャルなライヴで魅了してくれた。hydeは「マニア向け」と遠慮がちに語ったが、新旧の名曲をハッとさせる演出で魅せたライヴは、世代や国境を越えて感動できる強大なパワーを有する。

2019年1月からは動画配信サービス、Paraviでドキュメンタリーが、2月にはWOWOWでライヴの模様が放送される予定。再び感動に浸りながら、L'Arc~en~Cielの次なる挑戦、新たなる吉報を心待ちにしたいものだ。
(取材・文/橘川有子)


hyde「クリスマスだから逢えた。この日に感謝」 愛と感動のL'ArChristmas!/レポート
20日公演

撮影/今元秀明、岡田貴之、緒車寿一、加藤千絵、田中和子



≪セットリスト≫
01. winter fall
02. Caress of Venus
03. snow drop
04. BLESS
05. 接吻
06. fate
07. Dearest Love
08. MY HEART DRAWS A DREAM
09. Hurry Xmas
10. Driver's High
11. DIVE TO BLUE
12. 未来世界
13. 静かの海で
14. trick
15. X X X
16. Wings Flap
17. Link
18. White Feathers
19. Don't be Afraid
20. twinkle, twinkle
21. I Wish
22. 雪の足跡

hyde「クリスマスだから逢えた。この日に感謝」 愛と感動のL'ArChristmas!/レポート
19日公演

撮影/今元秀明、岡田貴之、緒車寿一、加藤千絵、田中和子


≪番組情報≫
■WOWOW
『L'Arc~en~Ciel LIVE 2018 L'ArChristmas』
2019年2月23日(土)よる8:00~ WOWOWプライム
詳細:www.wowow.co.jp/music/larc/

■Paravi
2019年1月より3か月連続配信 ※詳細未定

■L'Arc~en~Ciel オフィシャルサイト
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