「働くこと」をテーマにしたテレビ東京のビジネスドラマ枠「ドラマBiz」の第4弾『よつば銀行 原島浩美がモノ申す!〜この女に賭けろ〜』(テレビ東京・月曜22:00〜)第2話。

さすがに漫画そのまんま過ぎるセリフに違和感


よつば銀行台東支店が10億円を融資する稲村興産に、赤紙(取引再検討表)が出された。

稲村興産は、経営する店舗で発砲騒ぎが起こったことによって、暴力団ではないかと噂されるようになった企業なのだ。


赤紙を出された取引先からは半年以内に貸金を回収、1年以内に取引を停止しなければならない。

対応を任された原島浩美(真木よう子)だったが、社長・稲岡栄次郎(里見浩太朗)が巨額の負債を抱えてまで実現したいと考えていた夢「鬼怒川温泉ランド」なるテーマパークの実現に協力することとなる。

「バブルって何それ」な世代が誕生してからたいぶ経つというのに、口八丁でテーマパークをドーンと作らせてしまうというバブリー過ぎるエピソード。

バブル崩壊直後、20年以上前に連載されていた漫画が原作ということで仕方のない部分はあるものの、そんな昔の漫画を引っ張り出してきてドラマ化するんだったら、それなりに再解釈して時事性を加えて欲しいところだ。

……というか今回のドラマ化は、原作にものすごく忠実すぎるのだ。原作漫画を片手にドラマを観てみたところ、かなり「そのまんま」なセリフが多かった。

漫画→ドラマ化にあたって、あまりに変な改変をされるのも困りものだが、漫画のフキダシをそのままシナリオに落とし込んだらドラマになるってもんでもないだろう。

漫画内のセリフは、あくまで文字として読むものであって、耳で聞くドラマのセリフとは別物。

真木よう子をはじめ、各役者陣の演技がやたらとぎこちなく感じるのは、漫画そのまんまのセリフを読ませているからというのもあるだろう。
「花咲舞」っぽい決めゼリフに「半沢直樹」パロディ「よつば銀行 原島浩美がモノ申す!」にモノ申す!2話
イラストと文/北村ヂン

山奥→鬼怒川温泉という変更でつじつまが合わない!


漫画のフキダシを書き写したかのようなセリフを使ってしまうほど原作に忠実なドラマ化しているにもかかわらず、ストーリーの方では肝心な部分を改変してしまっているというのもワケが分からない。

原作において稲村興産が実現を目指しているのは、「人里離れた山奥に大正〜昭和初期の浅草を再現するテーマパーク」だったのだが、ドラマ版では温泉のテーマパーク「鬼怒川温泉ランド」と変更されている。

「山奥に浅草を再現する」というのは、さすがに壮大過ぎてバブル感強すぎるという判断なのか、もしくは「鬼怒川に疎開」という、ちょっといい昔話エピソードを入れたかったのかも知れないが、「山奥に浅草」から「鬼怒川温泉を復活させる」に変更してしまったため、その後のストーリー展開につじつまの合わない部分ができてしまっているのだ。

バブルの残り香漂う20年前ですら「実現不可能だ」と言われていたテーマパークを開業するため、債務超過に陥っている稲村興産(原作では渡辺興産)から、東西鉄道という鉄道会社が事業を引き継ぐことになる。


しかし、東西鉄道がテーマパーク事業を引き受ける決め手となったのは「アクセスの悪い山奥まで鉄道を敷いて新たな顧客需要を生み出す」「東西鉄道発祥の地が浅草だった」というポイント。

それが鬼怒川になっちゃったら、もう「鬼怒川温泉駅」があるし……。

また、単行本1巻分のエピソードをドラマ化するにあたり、細かいエピソードをはしょって約45分に上手くまとめてはいるのだが、その「はしょった部分」と対になるセリフなどはそのまま使っちゃっていたりして、「大丈夫!?」と心配になってしまう。

たとえば、

「東西鉄道とはすでにコンタクトを取ったのですか?」

「いいえ、よつば銀行といたしましては」

「なるほどね、水面下ではかなり計画が進行しているということか」

というセリフが出てくるにもかかわらず、実際に東西鉄道を説得しているシーンはバッサリなくなっているため、「いつ計画が進行していたの!?」と巨大なはてなマークが浮かんでしまうのだ。

次回は加藤シゲアキくんが登場


本作、というか「ドラマBiz」枠自体が、ヒット作連発の池井戸潤ドラマを意識しているのは間違いない。……に、しても本作はかなり露骨に何匹目かのドジョウを狙っているように感じるのも気になるポイント。

そもそも、原作漫画である『この女に賭けろ』を『よつば銀行 原島浩美がモノ申す!〜この女に賭けろ』に改題してドラマ化しているのからして、池井戸潤原作『不祥事』を改題し、杏主演でドラマ化した『花咲舞が黙ってない』を意識してのものだろう。

ドラマ版で付け加えられた原島浩美の決めゼリフ「恐れながら申し上げます」も、花咲舞の「お言葉を返すようですが」っぽさにあふれている。

「子どもの頃、工場を営む父親が銀行から融資を断られてひどい目に遭ったとか?」

という『半沢直樹』パロディのセリフがぶっ込まれていた。

同じ銀行を舞台にしたドラマだから……という気持ちは分からなくもないが、原作漫画は『半沢直樹』シリーズが書かれる遙か前に連載されていた、むしろ「元祖」とでも言うべき存在。もうちょっとプライドを持ってドラマ化してもらいたいところだ。

このように、かなりシナリオに不安があるものの、ドラマ自体はそこそこ面白く見られてしまうのは、名作である原作漫画のストーリーを比較的忠実に再現しているからだろうか。


漫画→ドラマ化ってどうするのが正しいのか……を改めて考えさせられる作品だ。

真木よう子の棒読み演技はかなり気になるものの、悪役チームの柳葉敏郎、木下ほうか、林泰文をはじめ、台東支店チーム・関ジャニ∞の丸山隆平、塚本高史、西野七瀬……と、かなりいい脇役陣を揃えている。

まだまだいいドラマになる要素はあると思うんだけど……とりあえず、彼らの見せ場をもうちょっと作って欲しい!(特に西野七瀬ちゃんが、ちょろっと出てきて愚痴を言うだけのキャラになっているのはもったいない!)

次回は、丸山くんとジャニーズつながりということで加藤シゲアキくんが登場。

真木よう子に負けない棒読み演技でお馴染みの加藤シゲアキだが、どうなるのやら!?
(イラストと文/北村ヂン)

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『よつば銀行 原島浩美がモノ申す!〜この女に賭けろ〜』(テレビ東京)
原作:周良貨(原作)夢野一子(作画)『この女に賭けろ』(講談社刊)
脚本:西田征史
演出:星野和成、小野浩司
オープニングテーマ:NEWS「トップガン」(ジャニーズ・エンタテイメント)
主題歌:スガシカオ「遠い夜明け」(Victor / SPEEDSTAR RECORDS)
音楽:信澤宣明
プロデューサー:稲田秀樹・阿部真士(テレビ東京)・八巻薫(MMJ)
制作:テレビ東京、メディアミックス・ジャパン
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