今、飲食店において、アプリで事前オーダーし、店頭では商品を受け取るだけといった“注文のIT化”が進んでいる。とても便利で効率的だ。
店の無人化で店員との関係はどうなる?
事前注文して、商品を店頭ですぐに受け取ることができれば、客は待たされることもなく、店舗側も客を待たせることがなくなり、効率的に準備ができる。また会計も無人レジで済ませる、ロボットがデリバリーするといった買い物の無人化はすでに海外では開発が進んでいる。
しかし、この無人化により、ちょっとした懸念が生まれる。それは、口頭注文や人を介した会計と比べて、店員とのコミュニケーションが変化するのではないかということだ。
店舗省人化プラットフォーム「O:der(オーダー)」を提供するShowcase Gig(ショーケース・ギグ)の広報担当・高堂和芽さんに意見を聞いてみた。
「日本では昨今、特に飲食店の人手不足が社会問題となっていますが、それにより『呼んでも店員さんが来ない』や『食事が運ばれてこない』『レジで待たされる』といったことが各地で起きています。そんななか、ホール業務のおよそ30%を占めるといわれている注文受付や、現金を扱い、作業手間のかかる会計業務をお客様のスマートフォンで完結させることは、店員さんのオペレーション負荷が大きく軽減され、調理や接客に集中できるため、品質向上につながります」
客と店員とのコミュニケーションを増やすことよりも、むしろ関係が悪化している現状をIT化によって埋めることで、“店員との関係が改善する”ということだ。
むしろ店員とのコミュニケーションが変化することは、先の課題になるのではないかと高堂さんは話す。
「他国に比べ、キャッシュレス化が遅れている日本の現状を鑑(かんが)みると、IT化による店員とのコミュニケーション不足は、少し先の課題かと思います。我々が取り組んでいる店舗POSレジとインターネットの連携にはコストや時間もかかりますが、インターネットにつなぐことでお客様情報を一元管理でき、店員が減ったとしても正確な接客対応を叶えることができます」
いまは省人化が課題
ロボットが介在し、人と人とのコミュニケーションが不足するのではないかという懸念よりも、いまはいかに少ない人数で回すか、客を満足させるかのほうが先の課題となるようだ。
「人のサポートが必要なことは必ずありますし、今の業態から無理なく変化できる理想の形は何なのかを店舗の皆さんと話し合いしながら追求していきたいです。日本では人口減少に伴い、働く人を確保できず開店すらできないお店も多いと聞きます。
省人化に向けた具体的な施策とは
まずは、客も店舗もモバイルオーダーのメリットを享受するフェーズなのだろう。
高堂さんによると、モバイルオーダーのほかに、セルフ注文端末を店頭に設置することができれば、レジの必然性が下がり、省人化が一層可能になるという。
待たずに注文できること以外のモバイルオーダーのメリットと共に、セルフ注文端末の海外事例を紹介してもらった。
モバイルオーダーのメリット
・あらかじめお客様自身の決済情報を登録しておくことでキャッシュレスに決済ができる。
・お客様のタイミングでゆっくり商品を選び、注文することができる。
・来店した店舗で自動的にスタンプが付与され、貯まるとお得なクーポンがもらえる。紙のスタンプカードを持ち歩く必要がない。(モバイルオーダーアプリ「O:der」の機能)
・お気に入り店舗のキャンペーン情報がプッシュ通知でお知らせされるため、お得に店舗を利用できる。(「O:der」の機能)
セルフ注文端末の海外事例
「アメリカに、2,000店舗を展開する『パネラブレッド』というベーカリーカフェがあります。ここの店舗では、モバイルアプリによるモバイルオーダーとセルフ注文端末を併用しており、有人レジの通過率が25%、セルフ注文端末(キオスク端末)とモバイルアプリで残りの75%を占めています。レジに行かないことが当たり前になると、店舗内のスタッフも少なくできます」
効率化、時短が求められ、さらに人手不足による省人化が求められるが、日本の現場でできていない解決策はまだまだたくさんありそうだ。ひとまず、身近なお店のデジタル施策を体験して、未来の店舗像を予測してみるのもいいかもしれない。
【取材協力・画像提供】
株式会社Showcase Gig
オムニチャネル・モバイルペイメント領域に数多くの実績とノウハウを持ち、企業のデジタル戦略支援やモバイルオーダー&ペイプラットフォーム「O:der(読み:オーダー)」を提供している。その他、IoTを駆使したデジタルプラットフォームも提供。
・「JR東日本グループ×O:der」紹介ムービー
・モバイルオーダーアプリ「O:der」サービス紹介ムービー
(石原亜香利)