小夜子「なんやそれ」
朋美「教えて。産んだの?」
2月19日(火)放送のドラマ『後妻業』(フジテレビ系)第5話。
後妻業の次なるターゲットにしていた富樫(佐藤蛾次郎)は、認知症が進んでいる。遺産を小夜子(木村佳乃)に残すための公正証書に、なかなかサインができない。富樫にばかり構っていられないと、小夜子は医師だった笹島(麿赤兒)を新たなターゲットにした。
朋美(木村多江)は、姉の紹介で偶然にも笹島の家のリフォームを担当することになる。内縁の夫・司郎(長谷川朝晴)と部下の絵美里(田中道子)が職場で浮気をしている場面を見ていた朋美。リフォームのプランで意見が割れたときに、つい浮気のことを指摘してしまった。
女性と一緒におるのは楽しいです
絵美里「朋美さんって、さばけているように見えて案外陰険なタイプですよね。当てつけであのソファ捨てたりなんかして」
朋美は、司郎と絵美里が絡み合っていた職場のソファを処分した。そりゃするでしょという感じだが、絵美里はそれを「陰険」だと言って笑う。
朋美「あなた、人の旦那寝取っておいてよくそんな平気な顔していられるわね」
絵美里「え? 旦那さんじゃないですよね。指輪なんてしてるけど、籍は入れてないんだし、内縁の妻ってだけでしょ」
慌てて司郎が絵美里を止めようとするが、言ってしまったことはもう取り消せない。朋美の「家族」の価値観が崩されていく。
大阪で笹島と話したときにも、「家族」について朋美が考えさせられるようなやり取りがあった。笹島は「高齢者がみんな若者の助けを求めてると思うてはるんやったら、それは間違いですわ」と言う。金さえあれば、家族よりもヘルパーや家政婦を頼ったほうが気が楽だと。
朋美「あの、ご家族と一緒なのは面倒でも、女性……、恋人は嬉しいんでしょうか」
笹島「そりゃそうですよ。女性と一緒におるのは楽しいです」
朋美は、家族の権利を主張して、父・耕造(泉谷しげる)の遺産を小夜子から取り返そうとしている。「家族だから」という思いが強い。耕造が最期に娘たちではなく小夜子を頼ったということが悔しく、理解できないのだ。しかし笹島もまた、こどもや孫ではなく小夜子や家政婦に支えられて生活している。
浮気がバレた司郎は、朋美を置いて、絵美里をケアしに追いかけて行ってしまった。ひとりになった朋美は、初めて探偵の本多(伊原剛志)とふたりホテルで夜を過ごす。冒頭で、朋美は本多と夜を明かすことを一度断っていた。本多との夜は、朋美の中で大きな変化があったことを示している。

壊れた朋美の家族観。博司の声のイキり感
ひとりになった朋美に心を寄せたのは、本多だけではなかった。小夜子も朋美の変化を察した。朋美に「あなた、こどもいるの?」と聞かれて茶化していた小夜子。でも、電話の向こうで朋美が泣いていることに気がついた。
朋美「あんたみたいな女が母親だなんて、不公平よ。許せない」
小夜子「余計なお世話や」
朋美「やっぱり、こどもいるんだ……」
悪態をついて電話を切ったあと、「こども……、欲しいんかいな」と小夜子はつぶやく。小夜子には、博司(葉山奬之)という息子がいる。表向きは弟ということにしているが。
妊娠することが難しいと朋美が打ち明けたとき、司郎は「もともとこどもを持つつもりはなかった」と言っていた。こどもが欲しかったのでは? と聞かれたときには「こどもを持たないから事実婚にしようと言ったのは朋美だ」と言った。
朋美が言い出せなかった「こどもを産みたい」という気持ちを初めて理解してくれたのは、司郎ではなく小夜子だった。
朋美の理想や思い込みの家族観が壊れた5話。朋美サイドからは、「家族」というテーマを描こうとしている。6話以降では、本多と寝た朋美が家族と家族観をどう再構築していくのかを見ていきたい。
そんな朋美と博司の監視役を言いつけられている博司。博司を演じている葉山奬之は、学生役や新入社員役のときはあまり口を動かさない素朴な話し方をする。博司は刑務所から出てきたチンピラという役どころ。喉に音を溜めて引っかけるようなガラガラ声で演じている。
声を喉に引っかけることで、劇中ではあまり出てこないが煙草・酒飲みの人なのだと感じられる。また、元々の素朴な発声からの引っかけ声なので、若いワルのイキり感もプラスされて良い感じだ。
葉山奬之と柏木役の高橋克典は、ドラマ『モンテ・クリスト伯─華麗なる復讐─』(フジテレビ系/2018)では全く愛のない親子役だった。今作では、悪態を吐きあいながらも楽しそうな掛け合いが続いている。今後の関わり方も楽しみだ。
富樫、笹島に続き、新たなターゲットも登場する6話は、今夜9時から放送予定。
(むらたえりか)
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ドラマ『後妻業』(フジテレビ系)
毎週火曜 よる9時〜
出演:木村佳乃、高橋克典、木村多江、葉山奨之、長谷川朝晴、篠田麻里子、平山祐介、田中道子、河本準一、濱田マリ、とよた真帆、泉谷しげる、伊原剛志、ほか
原作:黒川博行『後妻業』(文藝春秋刊)
脚本:関えり香、阿相クミコ
演出:光野道夫(共テレ)、都築淳一(共テレ)、木村弥寿彦(カンテレ)
音楽:眞鍋昭大
主題歌:宮本浩次「冬の花」
企画・プロデュース:栗原美和子
プロデュース:杉浦史明(カンテレ)、萩原 崇(カンテレ)、水野綾子(共テレ)
制作:カンテレ、共テレ