2月22日(金)深夜放送のドラマ24『フルーツ宅配便』(テレビ東京)第7話。今回の監督は、映画『寝ても覚めても』、『リバーズ・エッジ』(ともに2018)などで助監督を務めた是安祐だ。

送迎者のカメラワークが切り取ったコミュニケーションの断絶
咲田(濱田岳)が店長見習いをしているデリバリーヘルス店「フルーツ宅配便」に、新人デリヘル嬢・サクランボ(筧美和子)が入店してきた。他店でナンバーワンになったこともあるというサクランボ。人懐っこさや営業メールで、指名をどんどん獲得していった。
ある日、サクランボは市議会議員・吉田(村杉蝉之介)への接客で、本番をチラつかせてツーショット写真を撮った。そして、後になって「本番は違法好意だから」と脅して吉田に100万円の慰謝料を請求。吉田も黙っておらず、写真を取り返すために反撃に出る。
1話から3話までは白石和彌、4話から6話までは沖田修一が監督だった本作。今回、監督が是安祐になり、気になったのが送迎のシーンだ。
これまでの送迎シーンでは、運転席にいる咲田やマサカネが後部座席に乗る女の子と会話するとき、フロントガラスのほうから撮ることで会話中のふたりの反応がわかるようになっていた。しかし、今回サクランボと咲田が車の中で話すシーンでは、会話中もソロカットが多かった。
ユズ(内山理名)、モモ(成海璃子)、みかん(徳永えり)、レモン(北原里英)など、これまで登場したデリヘル嬢たちとは、咲田は人間関係を築こうとしていた。送迎の車の中は、スタッフと女の子が一対一で話すことができる、心許せる空間として登場していた。
サクランボは違う。
サクランボ「だってー、人って結局お金がすべてじゃないですか。違います?」
事務所でも、サクランボは他のスタッフや女の子たちと会話するときにあまり相手を見ていなかった。返事をしながら待機場所に消えて行ったり、雑誌を読み続けながら返事をしたりしている。
サクランボは「フルーツ宅配便」に馴染むことはない女の子。そのコミュニケーションの断絶が、送迎の車中のカメラワークに表れていた。
誰の関心も引かないサクランボという女の子

もう一つ違いを感じたのは、一瞬の引きで状況を伝えることだ。サクランボが攫われてしまい、追いかけた咲田が殴られ、そこにマサカネが登場。ミスジ(松尾スズキ)からマサカネに電話がかかってくる。
ミスジ「マサカネ、状況は?」
マサカネ「もうすぐ終わります」
このやりとりの間に、その場の登場人物全員が、引きで一瞬写される。棒立ちで電話しているマサカネ、口から血を流して転がる咲田、マサカネに銃を向ける男、腹を押さえながらマサカネのそばを離れる男、そして、その隙に逃げようとするサクランボ。
他にも、7話の冒頭では咲田から事務所全体を写し、流れるように移動して待機所の様子を撮影していた。6話では、待機所と事務所を繋ぐ小窓や、ラブホテルの仕切りの壁の窓越しに登場人物たちが会話していたのとはだいぶ様子が違っている。
小窓などの隔てるものを通して会話していた人たちが、送迎車やベッドの上でどこか心が繋がる。そんな演出が6話だった。7話は、隔てるものがなく同じ場所にいるのに、特別な感情を抱くことなくすれ違っていく人々の様子が描かれている。
咲田はサクランボを助けようとしたが、お礼も言われない。ただ、盾にされただけだ。マサカネもわざわざついてきてくれたのに。
サクランボ「ばーか! ばーか!」
サクランボは、誰に言うでもなくこう叫んで走って逃げていく。誰も彼女を追わない。吉田とのツーショット写真が入ったスマホを回収したから、男たちもサクランボ自身に用はないのだ。
サクランボ「私あんまり可愛くないんでー、こうやってお客さん獲得するしかないんですよねー」
2月13日放送の『家売るオンナの逆襲』(日本テレビ系)第6話でも、ふわふわとした話し方の甘くて可愛い女を演じていた筧美和子。
第8話は、今夜0時12分から放送予定。
(むらたえりか)
▼配信サイト
・Amazonプライムビデオ(テレビ東京オンデマンド)
・ひかりTV(テレビ東京オンデマンド)
ドラマ24『フルーツ宅配便』(テレビ東京)
毎週金曜 深夜0時12分から放送
出演 濱田岳、仲里依紗、前野朋哉、徳永えり、山下リオ、北原里英、原扶貴子、荒川良々松尾スズキ、ほか
原作 鈴木良雄『フルーツ宅配便』(小学館・ビッグコミックス)
脚本 根本ノンジ
監督 白石和彌、沖田修一、是安祐
楽曲制作 高田漣
主題歌 EGO-WRAPPIN’「裸足の果実」(NOFRAMES / TOY’S FACTORY)
エンディングテーマ 超特急「ソレイユ」(SDR)
チーフプロデューサー 浅野太(テレビ東京)
プロデューサー 濱谷晃一(テレビ東京)、木下真梨子(テレビ東京)、赤城聡(フラミンゴ)、押田興将(オフィス・シロウズ)
制作 テレビ東京 オフィス・シロウズ
製作著作 「フルーツ宅配便」製作委員会