新しいドラマが始まる際、初回……ギリで2話まで観れば、作品全体の出来をある程度判定してしまっていいと思っていた。
明らかにイマイチだった1〜2話からワープして、今の『イノセンス 冤罪弁護士』(日本テレビ系)は驚くほど良質だ。
3話以降は、クオリティが毎回保証付き。じっくり観せるドラマになっていると思う。脱落した人はもったいない。
坂口健太郎「イノセンス」弁護士は悪者の味方か「本当のことを知りたい」が行き着いたやり切れない真実6話
ドラマ「イノセンス 冤罪弁護士」 オリジナル・サウンドトラック/バップ

第6話あらすじ


2月23日に『イノセンス』の第6話が放送された。

大学時代からの悪友・新島彰を射殺した罪で逮捕された樽前物産の社長の息子・樽前裕也(須賀健太)の弁護を、黒川拓(坂口健太郎)は担当することになった。
事件当日は部屋で一日中ベースを弾いていたと裕也は犯行を否認。住み込みの使用人の有珠田(吹越満)も、裕也は部屋にこもって楽器を弾いていたと証言した。

その頃、被害者・彰の母を名乗る女性(山下容莉枝)が「裕也の弁護をやめてほしい」と事務所へ頼みにやって来た。その後、城崎穂香(趣里)の息子・晴斗が誘拐され、さらに事件の弁護をやめなければ子どもが死ぬという脅迫メールが事務所に送り付けられた。拓は事務所にやって来た女性の犯行だと直感する。

公判当日、科学者・秋保恭一郎(藤木直人)の実験で、事件当日は工事の音によってベースの音がかき消されていたことが判明。被告人のアリバイは証明され、裕也は無罪となった。
彰を殺害したのは有珠田だった。
有珠田と、事務所にやって来た女性・丸山依子は元夫婦。2人の娘のユキは大学時代に彰と裕也から性的暴行を受け、それを苦に自殺していた。以来、有珠田と依子は復讐の機会を狙っていた。事件当日、買い物を口実に外出した有珠田は彰を殺害。裕也に罪を着せるため、有珠田がエアガンや足跡などの状況証拠を揃えて現場を去ったのが真相だ。

暴行事件が司法できちんと裁かれなかったことについて、拓は有珠田と依子へ「申し訳ありません」と涙ながらに頭を下げた。

「本当のことを知りたいだけ」(拓)の危うさ


被告人・裕也の殺人容疑は無罪だった。でも、被告人が暴行した女性は自殺、その両親は殺人や誘拐などの罪を犯した。性的暴行の過去がある彰はお咎めなしで、その両親は重い罪を背負っている。誰がどう見ても納得いかない現実がここにある。

裕也 てめえの娘は勝手に死んで、俺に迷惑掛けてんだろうが! このクソ野郎が!!
有珠田 こういう人間です! 黒川先生は……こんな男を助けるために弁護士になったんですか(泣)!?

裕也の非道な間性。でも、弁護人は真実を突き止めなければならない。
突き止めた結果いかんでは、ハッピーエンドにならないこともある。どんなに悪人でも、殺人容疑は無罪。それが事実なら、冤罪を晴らすのが弁護士の役目だ。
「申し訳ありません。……ご両親の無念は、想像に難くありません。もし、大学の事件が、お嬢さんの受けた被害が……しっかりと司法で裁かれているのであれば……お2人をここまで追い詰めることはなかったのかもしれない。でも、それでも……彼は被害者を殺していない。それが、この事件の本当の姿です。被告人! それでもあなたに罪がないとは言えない。……以上のことから、弁護人は被告人・樽前裕也の……殺人の公訴事実についてのみ……無罪を主張します」(拓)

拓はかつて、晴斗から「弁護士は悪者の味方なんでしょ?」と問われたことがある。
「う〜ん……、悪者の味方ではないなあ。弁護士は、その人が本当に悪いことをした人かどうか調べる仕事だよ。
〈本当のこと〉の味方かな」(拓)

有珠田の娘は自殺で命を絶ったが、裕也たちに殺されたも同然だ。有珠田夫妻が抱いた復讐心に共感する思いが、筆者にはある。
弁護士は世の中に必要な職業のはず。なのに、存在意義を問われる事例も存在する。「弁護士は悪い人の味方」という言葉に考えさせられる。

拓は「本当のことを知りたいだけ」と頻繁に口にする。彼の弁護士としての在り方だろう。でも、その姿勢を貫いた結果がこれだ。真実を探し出したのに、誰も救われていない。

真実のみを追求する拓の姿勢も、実は危うさを孕んでいる。それを躊躇なく示す、印象的な回だった。
(寺西ジャジューカ)

『イノセンス 冤罪弁護士』
脚本:古家和尚
音楽:UTAMARO Movement
音楽プロデュース:岩代太郎
主題歌:King Gnu「白日」(アリオラジャパン)
参考資料:「冤罪弁護士」今村核(旬報社)
チーフプロデューサー:池田健司
プロデューサー:荻野哲弘、尾上貴洋、本多繁勝(AXON)
演出:南雲聖一、丸谷俊平
制作協力:AXON
製作著作:日本テレビ
※各話、放送後にHuluにて配信中
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