昨日、『家売るオンナの逆襲』(日本テレビ系)の最終話が放送された。

優しさを捨てた留守堂


住人の高齢化が進む新宿の集合住宅群「新宿ガーデンハイツ」の部屋を、競合のリッチブラスト不動産が相場より高値で次々買い占めている。そんな不穏な噂がテーコー不動産に入ってきた。


新宿ガーデンハイツはゴーストタウン化している。しかし、同地にはリッチブラストの立ち退き要求を断る老兄弟・藤見明(笹野高史)と譲(本田博太郎)がまだ住んでいた。
三軒家万智(北川景子)は、新宿ガーデンハイツ1階の廃園になった保育園を復活させるプランを考えた。保育時間外はハイツに暮らすシニア世代が子どもを預かる“現代の理想郷”構想である。

毎回、社会的な問題をテーマにしてきたこのドラマ。最終話のテーマは「少子高齢化」だった。……と言えなくもないが、それより“不動産屋の信念”にフォーカスする最終話だと言い切ってしまいたい。1つ1つの家が環境を作り、社会を作る。そこに住む人の幸せを願って家を売れば、より良い未来につながる。要するに、「優しさ」が今回のテーマだった。

最終話あらすじ


母校の校舎で「餃子を届けたのも人工呼吸したのも私ではない」と三軒家から言われた留守堂謙治(松田翔太)。一年後、彼はリッチブラスト不動産のCOOになっていた。

留守堂は明と譲の部屋を大金で買い叩こうとする。
さらに、三軒家のやり方を踏襲する“AI三軒家万智”を開発したのも留守堂だ。彼は、かつてとまるで人が変わってしまっていた。

足立 謙治はあんなに優しい人だったのに、なんでそんな……
留守堂 僕はもう、あの頃の謙治ではありません。

しかし、いつしか留守堂は揺れる。

新宿ガーデンハイツを買い取り、同地で往年のスターグループ「マジック7」のイベントを開催、“新宿ガーデンハイツ再生”の起爆剤にしたいと考えた三軒家。リッチプラストは対抗策として「新宿ガーデンハイツは危ない」というデマ情報をSNSで拡散した。
「このやり方は……。これは一体どういうことだ?」(留守堂)
いくら変わったとは言え、留守堂もここまで堕ちてない。そんなとき、三軒家が彼の前に現れる。
「私はあなたに負けません。あなたは顔を変え、名前を変えました。でも、あなたの中身は変わっていなかった。
あなたは昔のままの心優しい三瓶良雄ちゃんでした。だから、家が売れたのです。しかし、今のあなたは違います」(三軒家)

三軒家の「GO!」の由来


最終話は、怒涛の伏線回収祭りでもあった。

●三軒家の手品好き
小学校時代は頭にハトを乗せ、口から万国旗を出していた三軒家。昔から、彼女は手品が大好きだ。そんな彼女は、「マジック7」のメンバーだった明と譲を前にし、極度の緊張でしゃっくりが止まらなくなってしまった。
「大大大ファンでしたので!」(三軒家)

●三軒家の口ぐせ「GO!」
三軒家が事あるごとに発する口ぐせは「GO!」。マジック7はイベントで、世紀の脱出ショー「ハリケーンボックス」を行った。ボックスにサーベルを刺す際、譲が上げる掛け声も「GO!」である。つまり、「GO!」の本家はマジック7なのだ。決めゼリフにも歴史あり。

●留守堂と足立の趣味がフェンシング
三軒家から「変わった」と言われた留守堂。その言葉で、留守道は我に返ったのかもしれない。


リハーサルで転倒し、譲は腕を骨折してしまう。イベント開催まで時間がない。グループ最大の見せ場「ハリケーンボックス」を行うには、譲の代役を立てなければならない。三軒家が代役を買って出たが、出番を前に彼女は極度の緊張に陥った。そこに、留守堂が現れた。譲の代わりは、商売敵であるはずの留守堂だ。
仮面を付けて舞台に出た留守堂。サーベルを刺す動きが堂に入っている。それを、客席からフェンシング仲間の足立聡(千葉雄大)が観ている。舞台の男は、足立が見覚えのある動きをしていた。
北川景子「家売るオンナの逆襲」伏線全回収最終話「あなたは変わった」優しさ取り戻す留守堂は幸せにGO!
イラスト/まつもとりえこ

珍しいくらいのハッピーエンド


正直、留守堂と足立によるBL展開がずっと邪魔に思えて仕方なかった。でも、最後の最後で2人の関係性は不可欠なものだったと気付かされる。


代役を全うし、姿を消した留守道を足立が追った。そして、足立は留守堂の姿を見つけた。どこかに向かって歩き続ける留守堂は足立の存在に気付き、振り向いた。足立は留守堂に向かい、必死に訴えた。

足立 ケンジーっ! 駅、こっち!!
留守堂 ……! ありがとう(笑)。

足立による渾身の一言だったと思う。帰り道を教えただけ。それ以上、言わない。彼は留守堂への恋心を吹っ切ろうとしてる。こんな、切なくて泣ける道案内は初めてである。
そして、留守堂はドジスケを取り戻した。お礼を言うときの笑顔は昔の優しい表情だった。


後日、テーコー不動産に留守堂から手紙が届いた。彼は海辺の街で不動産屋を開いているらしい。その名は「サンペー不動産」。前シリーズのラスト、海辺の街で三軒家が「サンチー不動産」を開いていたのと同じオチ! しかも、留守堂は山田和子ちゃんと結婚していた。小学生の頃、家に餃子を届けてくれ、溺れた自分に人工呼吸をしてくれた女神である。

三軒家に「変わった」と言われた留守堂。それをきっかけに、彼は自分と優しさを取り戻した。そして、本物の“餃子の君”のことも思い出したようだ。ようやく、留守道はマンチッチを卒業した。
「色々あったけど、今はあなたに感謝しています。人の幸せのために家を売る不動産屋の仕事に導いてくれてありがとう」(留守堂)
一方の三軒家も屋代大(仲村トオル)との間に子をもうけ、そして社長に昇進した。三軒家にも留守堂にも、お互い別々の幸せが訪れたのだ。


てっきり、最終話は三軒家と留守堂の間で壮絶なバトルが繰り広げられると思っていた。これほど、全員が綺麗に幸せを掴む終わり方になるとは。こんなにもハッピーエンドな最終話は、ちょっと記憶にないくらいだ。
(寺西ジャジューカ)

『家売るオンナの逆襲』
脚本:大石静
主題歌:斉藤和義「アレ」(スピードスターレコーズ)
音楽:得田真裕
チーフプロデューサー:西憲彦
プロデューサー:小田玲奈、柳内久仁子(AXON)
協力プロデューサー:水野葉子
演出:猪股隆一、久保田充 他
制作協力:AXON
製作著作:日本テレビ
※各話、放送後にHuluにて配信中
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