朋美「どうして」
小夜子「あんたのイヤリング、柏木のところにあったで」
3月12日(火)放送のドラマ『後妻業』(フジテレビ系)第8話。原作は黒川博行の同名小説だ。
内縁の夫との離婚で弱り切った朋美(木村多江)は、ホテルのバーで偶然に再会した柏木(高橋克典)の前で酔いつぶれてしまう。自分が取っていたホテルの部屋に、朋美を連れて行く柏木。それを見ていた探偵の本多(伊原剛志)。
小夜子(木村佳乃)は、紳士なイケメンじいさん・舟山(中条きよし)に熱をあげていた。しかし、舟山が結婚相談所に申告した財産はすべて嘘だった。舟山が詐欺師であることを小夜子が指摘すると、舟山は怒り小夜子に暴力を振るった。
嫉妬でチャーミングになる小夜子、ちょい悪になる朋美
小夜子「舟山さんは、特別や」
柏木「たかがカモに入れ込みすぎやぞ」
今回は、小夜子が舟山に惚れ、朋美が柏木のホテルの部屋に泊まったことで、小夜子、朋美、柏木、本多の4人の間に嫉妬心が生まれた。
昔なら、40代の男と女の間に渦巻く嫉妬は見苦しく「ドロドロ」とはやし立てられるために描かれたかもしれない。しかし、小夜子たちの嫉妬心は、それぞれのパーソナルの愛らしい面や人間らしい振る舞いを引き出す着火剤となっていた。
朋美のイヤリングを柏木が持っていることに気づき、小夜子はわざわざ東京まで「柏木と寝たん?」と確かめに来る。朋美のほうは、心療内科で薬を処方されるほど疲れているからか、それとも柏木と一晩過ごした余裕からか、いつものように口ゲンカに乗ってこない。
小夜子「なんや、あんたが元気ないとつまらんわ……」
お酒をこぼして「コボシタ……。ツメタイ……、コッチモ……」と朋美に甘え、服を拭いてもらう小夜子。
薬の袋にお土産のビリケンさんストラップを忍ばせて帰った小夜子。それを見つけた朋美は、「いらないって言ったのに。バカみたい」と悪態を吐きながら薄く微笑む。柏木とのことで嫉妬している小夜子をからかったり悪態をついたり。45年仕事に家庭に真面目に生きてきた女の、可愛らしい悪さが引き出される。

柏木、本多、男の嫉妬心の表し方
嫉妬によって、柏木は"男らしさ"の良い面を引き出され、本多は悪い面を引き出された。
小夜子「あんたの言うとおりやった。あいつ、正真正銘の詐欺師やった」
柏木「すまんかった。俺があんな男、紹介したせいや」
舟山に暴力を受け傷つけられた小夜子に、柏木は潔く謝る。傷の手当てをしてやり、舟山が盗んでいった小夜子のキャッシュカードと現金25万円をきっちりと取り返してくる。
そんな男気を見せる一方で、初めて小夜子の部屋に入れてもらえた喜びがいつもより少し弾んだ声に表れている。柏木の憎めなさ、チャーミングさを、ここで一気に出してきた。
朋美を連れてホテルに入っていった柏木を見ていた本多は、ブライダル微祥の経理から50万円で柏木の使った経費のレシートを買う。その費用を出すのは朋美のはずだ。朋美に相談もせずその場で50万の支払いを決めてしまった。
冷静さを欠いた本多。いつも力ない目をしているのに、今回はやけに目力があった。眉間やら眉やら目の周りにやけに力が入っている感じ。柏木を懲らしめてやりたいという私情が、本多を突き動かす。
悪党はチャーミングに描き、正義は一枚岩ではないことを描く。木村佳乃、木村多江、高橋克典、伊原剛志というメインキャストの4人がそれをパワフルに演じていく。
小夜子「柏木でも探偵でも何度でも恋したらええんやん!」
40代、小夜子たちのようにパワフルに生きてもいいんだ! と、なんだか励まされた気持ちになる。
最終話は、今夜9時から放送。小夜子が死んでしまう原作とも、小夜子が生き返る映画とも違う結末だという。ドラマ版の小夜子の行く道が楽しみだ。
(むらたえりか)
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・チェインストーリー(GYAO!)
ドラマ『後妻業』(フジテレビ系)
毎週火曜 よる9時~
出演:木村佳乃、高橋克典、木村多江、葉山奨之、長谷川朝晴、篠田麻里子、平山祐介、田中道子、河本準一、濱田マリ、とよた真帆、泉谷しげる、伊原剛志、ほか
原作:黒川博行『後妻業』(文藝春秋刊)
脚本:関えり香、阿相クミコ
演出:光野道夫(共テレ)、都築淳一(共テレ)、木村弥寿彦(カンテレ)
音楽:眞鍋昭大
主題歌:宮本浩次「冬の花」
企画・プロデュース:栗原美和子
プロデュース:杉浦史明(カンテレ)、萩原 崇(カンテレ)、水野綾子(共テレ)
制作:カンテレ、共テレ