そして、ファン待望の完全新作劇場版『ICE ADOLESCENCE(アイス アドレセンス)』(2019年公開予定)の特報が1月に一挙劇場上映で限定公開された。
一般公開を待って記事を出そうとしていたものの、なんかもう待てなくなった。大丈夫、観てない人がこの記事読んだからって実際の特報映像の価値は揺らいだりしない!
とはいえ、事前情報を入れたくない人はスルーしてください。
劇場で数回観た記憶を元に書くため、認識違いがある可能性があります。ご了承ください。
劇場版の制作については2017年4月のイベントで発表、2018年7月にはティザーヴィジュアルが公開されたが、この冬の海岸のヴィジュアル以外の情報は全く公開されていなかった。

映像と音楽の圧倒的なクオリティは公開後見てもらうとして、この特報からわかることを考えていきたい。
オリンピックシーズン!オリンピックシーズン?
まずこの一文。
「すべてが初体験 17歳で迎えるオリンピックシーズン」
オリンピックシーズン!
映像に出てくるのは、17歳のヴィクトル・ニキフォロフだろうか。仮にテレビシリーズで描かれているのが放送当時の2016年で、作中世界でも五輪開催時期が同じだとすると、ヴィクトルが17歳でオリンピックを迎えるのは2005〜2006年シーズン。これはリアルのフィギュア界ではトリノ五輪に当たる。男子シングルはエフゲニー・プルシェンコ、女子シングルは荒川静香が金メダルを獲った年だ。
とはいえ、17歳のヴィクトル(ととりあえず仮定)がロシア代表としてコールされ、滑り出しているリンクはトリノではなく、フランス・パリのベルシーアリーナ(以前の名称はパレ・オムニスポール・ド・パリ・ベルシー)のようだ。
リンク壁に広告があることから、この映像自体はオリンピックではなさそうだ。このベルシーは2005年当時、グランプリシリーズのフランス大会であるエリック・ボンパール杯の会場なので、ヴィクトルがグランプリシリーズで演技する直前なのかもしれない。
なお、実際のエリック・ボンパール杯はリンク壁の広告が青で統一されていたが、映像に映る広告は一般的なもので当時を踏襲してはいない。現在のフランス大会はエリック・ボンパール社がスポンサーを降り、大会名も変わってしまったことから、混同を防ぐためだろうか。あるいは、会場はベルシーをモデルとしていても、別な大会である可能性もある。
ちなみに2005年のエリック・ボンパール杯の結果はこちら。女子シングルはトリノのメダリスト達を抑えて浅田真央が優勝、男子シングルは現在羽生結弦選手のプログラムも手掛ける振付師、ジェフリー・バトルが優勝している。TVシリーズで解説者として登場している織田信成はこの頃本格シニアデビュー。そりゃあ「ノブくん」「ニキちゃん」って呼び合うわけだ!
ついに観られる?過去のプログラム
羽生結弦選手といえば今季、ずっと憧れてきたジョニー・ウィアーとエフゲニー・プルシェンコがかつて使用していた曲でプログラムを構成している。

ウィアーやプルシェンコの現役時代を知らなくても、羽生選手がそんなにリスペクトしている選手の演技ならと、ネットで動画を探した人は多いはずだ。
羽生選手ほど真正面からのトリビュートは珍しいが、ファンはスケーターの演技が素晴らしいほど、影響を受けた演技も知りたくなる。そしてルーツを知ることで演技の魅力を一層深く知ることができる。
その楽しみを知っていると「ユーリ!!!」で出てくるスケーター達について「どんなに検索しても彼らの過去プログラム動画は出てこない」ことが非常にもどかしい。フィギュアスケート愛に溢れる制作陣、特に山本沙代監督(※)はその渇望を絶対にわかっている。監督自身が、今回の劇場版で、ユーリファンにも「過去のプログラムを観る醍醐味」を味わってほしいと考えているんじゃないだろうか。
きっと「ユーリ!!!」作中世界で伝説になっているような名プログラムが観られるはず!
過去の描写は?他のキャラは?新キャラが出る?
期待が高まる中、気になることもある。
「オリンピック」という単語が堂々と出てきたことに驚かされた。創作で用いるのに、何かと制限があり許諾が必要になる「オリンピック」。世界中にファンがいることから、海外での上映も視野に入れているだろう。一体どこまで描けるのだろうか?
もし2005年〜2006年シーズンを描くとしたら、当時は今のフィギュアスケートとルールや採点方法が異なり、競技のレベルも違う。そして何より、テレビシリーズの「リビング・レジェンド」ヴィクトルより未熟なスケーターの演技を描かなくてはならない。リアリティを保ちつつ、観客を魅了する演技を描けるのか?
振付には宮本賢二&Living Legends(!)が参加しているようだが、さすがに当時のルールで作るのは難しいかもしれない。でも勝手な願望を言っちゃうなら、ストレートラインステップは見たい!
そして今回の特報に出てくるのはヴィクトルだけだ。ヴィクトルが17歳で迎えるオリンピックシーズンには、テレビシリーズ主人公である勝生勇利(4歳下)をはじめ、ほとんどのキャラクターはまだシニア競技年齢に達していない。
本物の試合を観ているかのような競技シーンは「ユーリ!!!」の大きな魅力だった。劇場版でも試合が観られそうだが、そうなるとライバルとなる選手が不可欠だ。新キャラとして登場させるのだろうか?
こうした疑問が、どんな形になるのかは特報からはわからない。
ただ「ユーリ!!!」のチームが作るのなら、途方もない情熱で、きっと描ききるだろう。
そして、フィギュアスケートの本格っぷりがクローズアップされがちな本作だが、テレビシリーズでのサプライズの連続を忘れてはならない。
この情報量の少なさの裏には、きっと大きな驚きが待ち構えている。
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※ファンには説明するまでもないが、山本監督は熱狂的ともいえるフィギュアスケートファン。ハマりだした頃の選手としてプルシェンコ、ランビエール、ウィアー、バトル、高橋大輔を挙げている(『Febri vol.41』他より)
アニメ『ユーリ!!! on ICE』
公式サイト/劇場版『ICE ADOLESCENCE(アイス アドレセンス)』公式サイト
2019年4月3日よりCS「テレ朝チャンネル1(公式サイト)」でTVシリーズが再放送予定(毎週水曜日 深夜0:00〜 他)。
作中のスケートソングを中心に圧巻の演奏が披露された 「ユーリ!!! on CONCERT」Live CDが発売中。

(冴西理央)