Mr.Childrenがキャリア初となる海外での単独公演【Mr.Children Tour 2018-19 重力と呼吸】を、2月1、2日の2日間、台湾の台北アリーナにて開催した。

台湾でも絶大な人気を誇る


Mr.Children、初の台湾ワンマン公演で魅せた圧巻のパフォーマンス/レポート
撮影:薮田修身(W)

台湾では1990年代~2000年代前半にかけてJ-POPブームが起こり、その立役者の一人でもあったMr.Childrenの存在は大きい。また、日本のドラマも数多く放送されているため、主題歌という形で耳にする機会もあり、歌を口ずさめる人も多いという。
それゆえにこれまでも公演の機会はあったと想像できるのだが、なぜここに来て初の海外公演に挑んだのか。それは純粋な音楽的欲求――自分たちの音楽の可能性を感じてみたかったのではないだろうか? 台北アリーナには、日本で何十回と見てきたMr.Childrenのライブとはまた違う景色が広がっていた。

台北アリーナは1万人を超える観客を収容することができ、台湾の中でも最大規模の動員数を誇る。国際的なスポーツ大会や、国内外の人気アーティストの公演などが行われていて、2018年にはGLAY、安室奈美恵、関ジャニ∞らもライブを行った。今回、Mr.Childrenは【Mr.Children Tour 2018-19 重力と呼吸】の1公演として台湾公演を行っており、基本セットは一部を除き国内公演とおなじものを使用。メインステージと、その中央部分からアリーナ席中央付近まで続く花道があり、印象的だったステージ床までを一体化してトランスフォームさせるような巨大ビジョンや照明の動きもそのまま行われていた。ただアリーナ席には椅子はなく完全にスタンディグの状態で、どこか日本武道館を彷彿とさせるステージ正面のせり上がるようなスタンド席の観客は立ち上がらずに座って鑑賞するスタイルだった(一部、立ち上がっている観客もいたが)。みんな一緒にというより、それぞれ自分なりのスタイルで音楽を楽しみたいという感覚の方が強く見て取れて、そこは日本との違いを感じる部分でもあった。

日本とは違う、台湾ならではのリアクション


Mr.Children、初の台湾ワンマン公演で魅せた圧巻のパフォーマンス/レポート
撮影:薮田修身(W)

開演時間が近づき客席の明かりが落とされると、それだけで大きな歓声が湧き、手拍子が起こる。「Your Song」のメロディを使ったSEが流れ、ステージにメンバーが集まりだすとさらに歓声は大きくなっていく。1曲目は日本公演とおなじく「SINGLES」。ステージ上の桜井(Vo)が少し移動するだけで、その近くの観客がワーという歓声をあげる熱狂ぶり。間奏とか関係なく、桜井が歌っている途中でも、少しでも自分にグッと来る瞬間があれば声を上げる。
2曲目「Monster」では、手拍子をしながらその場でジャンプしている人たちもいる。

3曲を終え、桜井は「ダージャーハオ! ウォメーシーMr.Children!(皆さんこんにちは。僕たちはMr.Childrenです)」と、中国語で挨拶。観客も大きな歓声と拍手で応える。とにかく、一つひとつのリアクションが大きい。続けて「ありがとう。この台北でライブができてとっても嬉しいです!」と喜びを口にする。

台湾公演だけのスペシャルな楽曲も披露


Mr.Children、初の台湾ワンマン公演で魅せた圧巻のパフォーマンス/レポート
撮影:薮田修身(W)

4曲目。日本公演では「幻聴」を演奏していたが、この日は「Tomorrow never knows」をセレクト。先にも記した通り、今回は“重力と呼吸ツアー”の1公演として行われているので、基本的にはセットリストもおなじなのだが、公演全体の流れを変えない程度に、数曲ほど現地でも人気の曲が織り交ぜられていた。この曲もイントロが数秒鳴っただけで大きな歓声が上がり、歌が始まると現地の人たちも口ずさんでいるのがわかる。桜井が促すと“ウォーウォー!”と声を揃え、海外とは思えないほどの一体感が生まれる。歌唱後の桜井もそれを肌で感じたのか「シェイシェイ(ありがとう)」とお礼を言い、クライマックスかと思うほどの大きな拍手が起こった。


「この曲を台北の皆さんに送ります。Special present for TAIPEI」。そう言って演奏されたのは、「抱きしめたい」。時折、笑顔を浮かべながら優しく歌う桜井に見入りながらも、歌を口ずさんでいる人がたくさんいる。ステージから放たれる光の演出も相まって、会場全体が大きな一つの光になったような心地になる。

Mr.Children、初の台湾ワンマン公演で魅せた圧巻のパフォーマンス/レポート
撮影:薮田修身(W)

メンバー紹介の場面では、桜井が日本語と英語と中国語を交えて行いつつ、田原(G)、中川(B)、鈴木(Dr)の3人もそれぞれに中国語で自己紹介をする。そのたびに大歓声が沸き起こり、メンバーの顔にも笑みがこぼれる。そして「もっと皆さんの近くで演奏させてください」(桜井)と言うと、4人は花道へ向かい、そこで演奏を始める。この「花 -Memento-Mori-」(※)から、13曲目の「しるし」までは、日本公演と全くおなじ曲目で行われたのだが、観客の反応が違うと、ライブ全体の景色が変わってくるのが面白い。アリーナの縦位置に紗幕を使った日本でも観客を圧倒していた演出には、その驚きを都度声に出して反応する。大量のレーザー光線を客席に放った「Dance Dance Dance」は、日本でも相当盛り上がっていたが、同様に、あるいはそれ以上に盛り上がる。あくまで主観なのだが、ステージ上のメンバーもその反応に乗せられて、いつも以上にテンションが上がっている感じがする。
「and I love you」では、一瞬で会場の隅まで届くような桜井の第一声に、“フゥー”という歓声が上がる。観客のリアクションのアップダウンがいつも以上にあるせいか、いつも通りに演奏されているはずの「しるし」の浸透力が半端ない。ライブは生き物とよく言うが、体感する環境が違うだけでこんなにも響き方が違ってくるものなのだなと思い、Mr.Childrenの音楽の可能性はまだまだ無限なのだと思ったりもした。

今まで見たことないMr.Children


Mr.Children、初の台湾ワンマン公演で魅せた圧巻のパフォーマンス/レポート
撮影:薮田修身(W)

「皆さん、幸せ? 一緒に幸せになろう!」と中国語で桜井が呼びかけると、ついにライブも後半戦。「海にて、心は裸になりたがる」は、最新アルバムの楽曲にもかかわらず、ここは日本? と思うくらいの息の合い方。観客は“オーオーオー”というコーラスを入れ、アウトロでは拳を突き上げる。そのまま台湾公演用に用意された「innocent world」へとつなぎ、盛り上がりも最高潮に。このメロディは全世界の人たちを笑顔にするのかも? と思ってしまうくらい、全員が笑顔だ。正直“物憂げな6月の雨に打たれて”なんて歌詞は、四季があり、梅雨がある日本人だからこそ響く言葉だと思う。そんな歌が海外の地でこんなにも多くの人たちに多幸感を与えているなんて。「Worlds end」では、最後の観客と桜井の“オーオー”という声の応酬と、そのお礼のような桜井の長い“ワァーーーー”という叫び声に鳥肌がたった。

「最後の曲です」と桜井が告げると、本当に残念そうな声をあげる観客たち。
本編ラストは日本公演と同様、「皮膚呼吸」で締める。日本公演のときは、その歌詞が胸に迫る想いがしたが、この日は曲全体の持つ温かみのようなものが伝わってきた。

Mr.Children、初の台湾ワンマン公演で魅せた圧巻のパフォーマンス/レポート
撮影:薮田修身(W)

メンバーがステージから去ると、拍手をしたり、声をあげたり、指笛を鳴らしたりしながら盛り上がり続ける観客たち。それが波音のように大きくなったり、小さくなったりしながらアンコールを待つ。再びステージに戻ってきたメンバーは、「here comes my love」、「風と星とメビウスの輪」を届け、続いて、チッチッチッというカウントのあとに鳴り出したピアノの音――「Sign」だ。歌唱中はじっくりと聴き入っていた観客が、終わったあとに起こした大歓声。表現するのが難しいのだが、野球の試合で9回裏に逆転ホームランが放たれたときのようだった。

日本公演の締めに演奏されていた「Your Song」を披露し、これで終わりかなと思ったとき、「また台北に戻ってきたいです。皆さんが僕らを待っていてくれるなら」と英語で桜井が想いを伝えると「終わりなき旅」が始まる。歌詞を“どこかにあなたを必要としている人がいる”と、“自分”を“あなた”と変えると、“オ~”という声が上がり、歌詞も届いていることがわかる。そんな中で迎えたラスト――これがもう圧巻だった。桜井が“終わりなき旅”という最後の歌詞を歌いきると、観客が大きな声で“終わりなき旅”とリフレインする。
すると、ものすごい熱量で桜井が“ワァーーーー”という声を上げ、演奏が止まる。一瞬の間があって、観客から会場が揺れるんじゃないかというくらいの大きな拍手と歓声。それを合図に演奏が再開されると、本当に鳥肌が立つくらいの最高のグルーブをもってアウトロが鳴らされる。Mr.Childrenのバンドをしての生き様をみるような瞬間を経て、この日のライブは終わった。

Mr.Children、初の台湾ワンマン公演で魅せた圧巻のパフォーマンス/レポート
撮影:薮田修身(W)

初の海外公演ってどんな感じなんだろう?とは思っていたが、確実に今まで見たことのないMr.Childrenの一面を感じるものだった。きっとそれはメンバーにも何らかの刺激を与えたに違いない。4月からは国内でのドームツアー【Mr.Children Dome Tour 2019 “Against All GRAVITY”】が開催される。“重力と呼吸”をしたあとに、“重力に逆らう”とは、一体どんなものになるのだろうか? 常に先頭を走りながら、次々と自分たちを超えて行くMr.Children――日本にこんなバンドがいることが誇らしい。

取材・文/瀧本幸恵

※花 -Memento-Mori-は1つ目eの上に'

<セットリスト>
1. SINGLES
2. Monster
3. himawari
4. Tomorrow never knows
5. HANABI
6. NOT FOUND
7. 抱きしめたい
8. 花 -Memento-Mori-
9. addiction
10. Dance Dance Dance
11. ハル
12. and I love you
13. しるし
14. 海にて、心は裸になりたがる
15. innocent world
16. Worlds end
17. 皮膚呼吸
EN.1 here comes my love
EN.2風と星とメビウスの輪
EN.3 Sign
EN.4 Your Song
EN.5終わりなき旅

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