cali≠gari “燃え尽きるまで狂いあらがった”ツアー『14』ファイナル公演
撮影/柴田恵理

cali≠gariが3月23日(土)東京・中野サンプラザでアルバム『14』を携えた全国ツアーのファイナル公演『cali≠gari 25th Caliversary“1993-2019” TOUR 14 FINAL -I've come a long way since those old days-』を開催。各地のライブハウスを揺らしてきた熱量はそのままに、映像や照明、サポートメンバーとしてツアーを共にした中西祐二(Dr)に、秦野猛行(key)、yukarie(Sax)が加わり、ホールならではの演出とバンド構成で『14』の世界を再現した。
そのステージで、6月23日(日)東京・豊洲PITでのワンマンライブをはじめ、8月末から9月にかけて行われる2マンライブ4公演など、2020年夏までのcali≠gariの予定を一気に発表した。

そろそろ客入れが完了するという頃、このツアーで一度も披露されなかった『14』収録曲「月白」のイントロが流れ始めた。そのうち石井秀仁(Vo)の歌が始まると、観客は周囲を見渡しその声の主を探すのだが、姿は見えないまま。実はステージ袖で石井が歌っているという演出だった。

たゆたうような澄んだファルセットを聴かせた後、ゆっくりと客電が落ちると、ステージに設置されていた白銀のストリングスカーテンにサイケデリックな映像が映し出され、メンバーが登場。「動くな!死ね!甦れ!」を皮切りに、「カメラ オブスキュラ」「ゼロサムゲーム」をグルーヴィーに聴かせたかと思うと、電光石火のごとく音を撃ち込む「マシンガンララバイ」、憤怒を撒き散らす「火葬遊戯」など、『14』の楽曲を中心に、あらゆる感情と情景を石井の艶やかな声と、桜井青(Gt)のバッキバキのギタープレイ、村井研次郎(Ba)の粒立ちのよいベースサウンドで描いていく。

cali≠gari “燃え尽きるまで狂いあらがった”ツアー『14』ファイナル公演
撮影/柴田恵理

cali≠gari “燃え尽きるまで狂いあらがった”ツアー『14』ファイナル公演
撮影/柴田恵理

cali≠gari “燃え尽きるまで狂いあらがった”ツアー『14』ファイナル公演
撮影/柴田恵理


中盤では「早いですね。(ツアーが始まって)2カ月ちょっと、一瞬で終わっちゃいましたね」とMCをしていた桜井が、「皆さん、シットダウン、プリーズ」と観客を座らせ、「私も座っていい?」とモニターに腰掛けると、バラードナンバー「春の日」へ。春になると思い出す別れのシーンを切り取った切ないナンバーをじっくりと聴かせたのだが、余韻に浸る観客に向かって「いつまで座ってんのよ」と悪態をつく桜井。これは、歌の途中、石井の歌と桜井のギターのみになる直前に、石井が桜井の顔を見ながら「いくよ」と声を掛けるという珍しい事態に対しての照れ隠しだったんじゃないかと勝手に思っている。

「今日でようやくあなたたちと一緒に『14』を完成することができました。ここが天国。
天国に来ちゃったよね」というフリからアッパーチューン「天国で待ってる」がプレイされると、ステージ後方に大きな“14”の文字が降りて来た。以降「拝啓=BGM」からは怒涛のダンスチューンが繰り出され、「淫美まるでカオスな」ではステージのみならず赤や青、緑の照明が客席までも華やかに照らし、ディスコさながらの様相。

「マッキーナ」ではジュリ扇が乱舞する会場の中、桜井がジュリ扇を翻しながら練り歩くシーンも。会場のボルテージは上がったまま「アレガ★パラダイス」を披露。「なんだかんだで25周年、天国への階段を昇ってきたのではないかと思います。ありがとうございました」と感謝の思いを告げると、客電のついた明るい会場で本編ラストの「いつか花は咲くだろう」へ。cali≠gariのステージで、こんなに感動的なシンガロングが湧き上がったことが、かつてあっただろうか。それはエンディングらしい光景だった。

アンコールの前半は、スモークが床を這うように流れる中、「深夜、貨物ヤード裏の埠頭からコンビナートを眺めていた」「死は眠りを散歩する」のミディアムナンバー2曲をシリアスに聴かせた後、告知を挟み、狂気の2曲「サイレン」「クソバカゴミゲロ」で会場をかき回すcali≠gariらしいラストで『14』のツアーを締めくくった。

かつて“僕の前に続く道はない”“これは道無き道の旅。”(「青春狂騒曲」)と歌ったcali≠gariは、茨の道や獣道、紆余曲折の道程を、3歩進んで2歩下がったり、道草したりしながら歩んできた。生と死について、嫌悪感や憧憬、恐怖や希望をもって向き合ってきたcali≠gariが、「この作品はいわゆる終活です」と語っていた『14』を作り上げ、“燃え尽きるまで狂いあらがえ/終わる未来に“(「いつか花は咲くだろう」)と歌ったこのステージは、結成25周年の集大成でもあり、彼らが歩んできた道の一つの到達点であったように思う。


cali≠gari “燃え尽きるまで狂いあらがった”ツアー『14』ファイナル公演
撮影/柴田恵理


そして、終わりは始まりであるように、アンコールの最中、cali≠gariが描く未来計画の一部を発表した。まずは6月23日(日)東京・豊洲PITで活動休止十六周年を記念するワンマンライブを、近年恒例の6月28日(金)東京・新宿LOFTでは桜井青の生誕祭を、そして8~9月にはベッド・イン、メトロノーム、ACID ANDROID、メリーと合間見える2マンイベントを開催。さらに詳細は発表されなかったが、9月28日(土)という日付と、12月詳細未定という文字、そして2020年夏“東京カリ≠ガリンピック”の開催が告知された。まだまだ謎に包まれているが、楽しい知らせであることには違いない。カウントダウンは始まった。この“ノリ一発”を良くも悪くも形にしてきたcali≠gariの未来はまだまだ賑やかで、まだまだ夢中にさせてくれそうだ。
(取材・文/大窪由香)

■cali≠gari オフィシャルサイト
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