SUPER BEAVER、初のホール公演で2,200人と対峙「届く先にあなたがいてよかった」
Photo by 青木カズロー

2019年3月30日、SUPER BEAVERのライブを一緒に観ていたエキサイトニュースの編集者が終わるなり私にこう言った。「今日はこれまで以上にメンバーと目が合った気がしました」。
むろん錯覚だ(笑)。しかし私もそれには同感した。

ホールで観るライブからは、そのような感受を持つ場合が多い。逆にこれはスタンディング形式では味わえない感覚かもしれない。言うに及ばずスタンディングの方が距離感的には近く感じ、密着やむき出しのダイレクト性も手伝い、一体感は高い。しかし、観る・聴くという音楽の本質の伝達や体感はどうだろう? 私はそこにスタンディング以上の近い距離を感じ、より対峙し、一対一で、その場その席の“あなた”に向けて各曲が放たれているが故ではないか? と考えている。そしてSUPER BEAVERが3月29日、30日に行った東京・中野サンプラザ2Days後日もスタンディング以上に、より目と目を合わせて直接的に伝えられている気がした。

30日の翌々日、4月1日に結成15年目を迎えたSUPER BEAVER。現在は全国ツアー『都会のラクダ “ホール&ライブハウス” TOUR 2019~立ちと座りと、ラクダ放題~』の真っ只中だ。このツアーは彼ら自身が初挑戦となるホール公演をワンマンライブ形式で全国各地で開催。同時に、ホール公演と同じ土地にて、別日に各ライブハウスにてゲストを迎えての対バン形式のライブを行う1都市2Wayのツアーだ。彼らのライブバンドとしての気質が、観覧自由な立ちスタイルと、指定された各席で楽しむスタイルの両方が味わえ、対してアルティメットなライブバンドさも要求や必要とされてくるツアーだったりもする。

SUPER BEAVER、初のホール公演で2,200人と対峙「届く先にあなたがいてよかった」
Photo by 青木カズロー

結論からいうと、彼らのプレイや歌に「ホールだから」との意識や伝達方法、特別感はそう伺えなかった。しかし、演出やライティング、構成や会場ならではの工夫や配慮では十分なホールならでは感が味わえた。とは言え、このようなホールはライブバンドという確固たる自負や自信がないと成立しないのも事実。真価も問われる。だが、彼らはそこもきちんと心得え、背負い、自信があっての挑みと私の眼には映った。

中野サンプラザに入ると、ホールならではのセットを期待するも、ステージバックにゴージャスなビロードの幕はあれど、ステージ上はいたってシンプル。あえてライブハウスサイズのセッテイングのように映る。しかしこれらはこの後、各所でホールならではの最大限の演出が所々で施され、それらが我々を魅了していく。

場内が暗転し、真っ暗な中ステージがオレンジに浮かび上がる。そこに登場した4人のメンバー。藤原”30才”広明のドラムセットの前でメンバーが拳を合わせスタンバイ。柳沢亮太のギターのサスティーンのなか、ピンスポットの当たった渋谷龍太の歌い出しからライブは開始された。
1曲目から生命力たっぷりの楽曲がまさにフロアに溢れ出していくように広がっていく。
SUPER BEAVER、初のホール公演で2,200人と対峙「届く先にあなたがいてよかった」
Photo by 青木カズロー

「俺たちが東京のバンド、SUPER BEAVERです」とライブ開始宣言の後、前半はライブハウスと変わらない放出力に満ちた楽曲が連射された。<本当はスーパービーバーが笑わせたいんだよ/大切な場所はどこですか/大切な場所は中野サンプラザ>など、歌詞もこの会場ならではのものに差換えて歌われ、この日を特別な日へとすべく魔法をかけていく。

「俺たちは本日めちゃくちゃ前のめりでやってきました」と渋谷。MCを経たブロックからは彼らの多彩さが楽しめた。ブルースロック的なフレーズも印象的な楽曲や、あなたが幸せになって欲しいと願い放たれた楽曲、仕掛けられたカラフルなライトが回るなか、躍動感あふれる上杉研太のグルーヴィーなベースラインが作る躍動感が楽しい雰囲気を広げた曲。会場各人もその席の場で踊った楽曲の際には、柳沢もステージ中央のステップでギターソロをキメたり、はたまた上杉と渋谷がステージ上でじゃれ合う珍しいシーンも現れ、魅せる場面も多々あった。このようなフレンドリーな演出や効果もスタンディングでの対峙は真剣勝負一辺倒からでは味わえない雰囲気や光景であった。
SUPER BEAVER、初のホール公演で2,200人と対峙「届く先にあなたがいてよかった」
Photo by 青木カズロー

おおらかで、かつ一回り大きく映える佇まいとともに、彼らはライブを進行していく。ホールになるとステージからの目線も変わる。2階席の奥にまで歌はもとより、楽曲の熱量や視線もきちんと届けなくてはいいライブとしては成立しないからだ。彼らはその辺りも万全であった。
楽曲に込められた熱量そのままに2階席で観ていた我々にもしっかりと届いてきたし、上述の通り何度も目があった気にさせてくれた。

「昨日このステージに立ってみて分かった。いつもより大きい声じゃないと伝わらないことが(渋谷)」とコール&レスポンスで場内の隅々にまでウォーミングアップを済ませると、“一緒に行こうぜ!”とグイッと腕を掴むように引っ張ってくれた楽曲の際には、会場の声で楽曲を成立させた部分を交え、そのハミングが誇らしく大会場に響き渡るのを体感した。

「ホールらしからぬ熱気ありがとうございます」と渋谷。「ライブハウスでずっとやっていたいが、そこに固執してはいない。あなたに新しい素晴らしい光景を見せてあげたくてここでやっている帰来もある。また立っても良し、座っても良し、あなたが見たい方法で楽しんでもらいたく、今回のホール公演をすることにした。それからホールはライブハウスよりは来やすい。あなたが好きな人を誘っても、気楽に足を運べる機会も作りたかった」的な言葉を続けて告げる。
SUPER BEAVER、初のホール公演で2,200人と対峙「届く先にあなたがいてよかった」
Photo by 青木カズロー

中盤は座って浸るべく歌が続けて歌われた。「俺たちの心の真ん中の歌です」と紹介され歌われた楽曲やシンプルでウォームな演奏と包み込むコーラスも堪能。より優しく穏やかな気持ちにさせてくれ、会場も座って聴き浸る。
この辺りもデリケートさも感受可能なホールという環境ならでは感があった。「歌っててめちゃくちゃ気持ちいい。俺、歌ってますって感じがする」とは渋谷。合わせてライブハウスでも耳なじみのある曲たちもホール仕様のアレンジされたものもあり、それらはより柔らかく暖かく響いてきた。
SUPER BEAVER、初のホール公演で2,200人と対峙「届く先にあなたがいてよかった」
Photo by 青木カズロー

この日はメンバー全員が喋るコーナーもあった。「前半の時点で昨日より暑い。今日はよりいい日になる確信がある」と柳沢が語れば、「リリースツアーじゃないからできるセットリストを考えた」と上杉が続け、「ライブハウスみたいに暑い。すごいバンドになった気分」と藤原も語る。

中盤以降はホールをライブハウスに変えるべく、彼らの楽曲が生き生きと発揮される。同時にライティングもライブハウス仕様へ。会場も再び立ち上がり、場がライブハウスへと変貌していく。サビのストレートになる箇所がたまらない楽曲や、あえて無音状態を作り出し、そこで生まれた静寂と緊張感が逆にその後の起爆のトリガーを作った曲で、この日のハイライトを作り出していく。

SUPER BEAVER、初のホール公演で2,200人と対峙「届く先にあなたがいてよかった」
Photo by 青木カズロー
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Photo by 青木カズロー
SUPER BEAVER、初のホール公演で2,200人と対峙「届く先にあなたがいてよかった」
Photo by 青木カズロー

ラストスパートは、ファンキーなカッティングやパットも交えたドラムも印象的だった楽曲が楽しい予感へと誘えば、「本日の中野サンプラザ、とても楽しかったです。届く先にあなたがいてよかった。真っ向からのエネルギーを倍にして返してくれるあなたが好きです」と深々としたお辞儀と、「この感じを持ってツアーに出れるのが嬉しい。椅子はバシッと用意してあるのでまたぜひ足を運んで会いにきて下さい。ツアー行ってきます!」の渋谷からの言葉を残し彼らはステージを去った。
SUPER BEAVER、初のホール公演で2,200人と対峙「届く先にあなたがいてよかった」
Photo by 青木カズロー

終演後、この日の感想をメンバーに訊いたところ「思ったよりも全然お客さんが近くに感じられた」「一人ひとりまで見えるようだった」と話してくれた。もちろんそれにはホールの構造上の関係もあるだろう。しかし、私はそれだけではない気がする。それこそが心の近さとスタンディングより更に魅入る観者の意識だったのではないだろうか?同じ対峙ながらも各席ならではの一対一感の増加が、各人のその場所に各ダイレクトに届いたとの感受に繋がっていたように思える。
SUPER BEAVER、初のホール公演で2,200人と対峙「届く先にあなたがいてよかった」
Photo by 青木カズロー

この2Wayのツアーは10月まで続く。まだまだ彼らをホールで経験する機会はたくさんある。ぜひ一度ホールでの彼らも体感して欲しい。
椅子席で大きなキャパシティーながらも、不思議とスタンディングより身近で一対一、真摯で親近感のあるステージが味わえるはずだから。それらは彼らが各曲の本質的に込めて、想い、歌い続けてきた「あなた」に向けての歌が、よりダイレクトに伝わり、響いてくる最良の感受環境かもしれない。だって彼らはいつも「あなた」に向けて歌を届け放っている「ライブバンド」なのだから。

取材・文/池田スカオ和宏

ツアー情報


都会のラクダ ″ホール&ライブハウス″ TOUR 2019〜立ちと座りと、ラクダ放題〜
4月17日(水) 日本特殊陶業市民会館フォレストホール
4月18日(木) オリックス劇場
5月17日(金) BLUE LIVE 広島
5月19日(日) 広島上野学園ホール
5月23日(木) 新潟LOTS
5月25日(土) 新潟県民会館 大ホール
6月7日(金) 仙台GIGS
6月9日(日) 東京エレクトロンホール宮城
6月14日(金) 札幌 PENNY LANE24
6月16日(日) 札幌市教育文化会館大ホール
9月19日(木) 高松 festhalle
9月21日(土) サンポートホール高松 大ホール
9月23日(月/祝) 名古屋国際会議場 センチュリーホール
9月25日(水) Zepp NAGOYA
10月10日(木) 福岡DRUM LOGOS
10月13日(日) 福岡サンパレス

※ホール公演は、ワンマンライブ。ライブハウス公演は、GUEST有り。

SUPER BEAVER official web site


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