連続テレビ小説「なつぞら」
◯NHK総合 月~土 朝8時~、再放送 午後0時45分~
◯BSプレミアム 月~土 あさ7時30分~ 再放送 午後11時30分~
◯1週間まとめ放送 土曜9時30分~

第1週「なつよ、ここが十勝だ」 演出 木村隆文
「なつぞら」4話。視聴率好調3話は23%。おじいさん(草刈正雄)の言葉に泣いた

連続テレビ小説 なつぞら Part1 (NHKドラマ・ガイド)

第4回(4月4日・木)視聴記録


第3回は23%(ビデオリサーチ調べ 関東地区)。初回よりも上がった!
スピッツの主題歌「優しいあの子」がとにかく心地よく、朝が来るのが楽しみで楽しみで。
そして、3回は泣けた! 
2回でまだはっきりわからなかった登場人物の真意が明かされ、それはじつに真っ直ぐなもので、心打たれる。


第4回(4月4日・木)視聴記録


雪月、最強! 
なつは泰樹に連れられて帯広の闇市に牛乳と卵を売りにやって来た。
草刈正雄の出で立ちが西部劇みたいにかっこいいのだが、闇市を歩くとき、ブルースハープの劇伴で西部劇感が更に増す。
泰樹はまずなつに長靴を買い与える。「ブカブカです」と言っても、たくさん食べるからすぐにジャストサイズになるだろうとぶっきらぼうに対処する泰樹が可笑しい。
帯広ではまた新たな登場人物が登場。菓子屋・雪月。
菓子屋は菓子屋でも戦争の影響でまだ十分に営業ができずにいたが、店主の雪之助(安田顕)は牛乳と卵でアイスクリームを作る。
とよ役の高畑淳子は、出てきただけで「肝っ玉母さん」みたいで、開拓者の逞しさ明るさで場面の温度を上げる。
音尾琢真に続いて地元(北海道)代表・TEAM NACS安田顕は、研究熱心で朴訥な菓子職人らしさが滲んでいた。
朝ドラ絶対王者「おしん」の再放送にも出ている仙道敦子は、すてきな妻感。雪次郎も素朴。
雪月、なかなかいい布陣である。

正しい心  
なつは、盗みはしないと誓って戦後を生き抜いて来た。

雪月は、闇市で商売はしない。
最近は、生きるためには他者を損なうようなことをしても仕方ないということも物語に描かれることもあって、それも間違いではないが、なつや小畑家のようにこれはやらないという防衛線があるものは良いものだと感じる。
と、ちょっとここで「おしん」の話をさせてほしい。「おしん」の再放送まで見ていない方には申し訳ないが、「おしん」は80年代バブルの時期80代になった主人公が、明治、大正、昭和初期とがむしゃらに生きてきて、なにか大切なものを忘れてきたんじゃないかと思い返す物語で、その大切なものが「なつぞら」には描かれているようにすら思う。
初回からなつかしのアニメのオマージュがたくさんと言われているが、この大切なもの(倫理観)があの頃のアニメ(世界名作劇場とかジブリ作品とか)にあったということでもある。

アイスクリームを食べながら、泰樹はなつに言う。
「自分の力を信じて働いていればきっと誰かが助けてくれる」
「だから無理に笑うことはない。謝ることもない。
お前は堂々としてろ。堂々とここで生きろ」

生きるために、富士子に泣いてすがったり、妹が死にそうな演技をしたり、かわいそうな子、健気なかわいい子を強調していたなつに、泰樹は気づいていた。さらに、懸命に働こうとしていることは真実であることにも。だから、ちゃんとやっていれば報われるという。
もし報われなかったら、その場から去ればいいとも。
至極真っ当で清々しい。

名前に似合わず、のんきそうな婿養子・剛男(藤木直人)も、なつが来て拗ねる夕見子に語りかける。
各々の境遇は、もしかしたら逆だったかもしれないという考え方を示唆するのだ。なつのお父さんは戦争で亡くなったがもしかしたらそれは自分だったかもしれない。夕見子がなつのようになっていたかもしれない。そう思ったら助け合いたい。この考え方はとても大事だと思うし、夕見子も素直に聞くのでホッとした。
剛男と夕見子は勉強が好きな理知的な人間のようだ。

もうひとつの注目点は、泰樹ととよがなんでも言い合うところ。角をたてまいと無理して笑っているなつに対して、ふたりは感情をぶつけ合う。お互いに言いたいことを言うと言っても、からっとしていて、相手を傷つけたり、相手を否定したりするわけではけっしてない。
これもまた失われかかっている大切なことのように思う。

エノケンを歌い踊る子咲太郎 
回想で、咲太郎が闇市でタップを踊るところ、西郷吉之助(鈴木亮平)の子役を演じていた渡邉蒼のタップが流麗ですてきだ。
エノケンとは喜劇を得意とする俳優・榎本健一。歌よし笑いよし芝居よし。
昭和4年(1929年)、浅草で劇団「カジノ・フォーリー」を結成し人気を博す。川端康成「浅草紅団」によると、“東京にただ一つ舶来「モダアン」のレヴュウ専門に旗揚げしたカジノ・フォウリィは、地下鉄食堂の尖塔と共に、一九三◯年型の浅草かもしれない。
 エロチシズムと、ナンセンスと、スピイドと、時事漫画風なユウモアと、ジャズ・ソングと、女の足とーー。“
と書いてある。「洒落男」はその1930年にエノケンが歌ってヒットした。

雪月のモチーフになった柳月 
「なつぞら」は脚本作成に当たって、柳月に取材をしている。帯広の菓子店・柳月は昭和22年に創業した、北海道の原材料のみを使用して菓子を作る地元に根ざした菓子製造業社。ビートや小豆の産地である帯広は戦前から菓子激戦区で、この時代も業者が70件を越えており、そこに後進で参入した柳月は苦戦を強いられたが、初夏、アイスキャンディーを作ることで、乗り切った。
夏はアイス、冬は季節の菓子の二毛作戦略は「柳月の夏の陣、冬の陣」と呼ばれた。と、社史「柳月歴70年」に書いてあった(この社史の出来がかなり良い)。
とよと泰樹が「真田丸」で夫婦だったことがドラマの楽しみのひとつでもあるが、
「夏の陣、冬の陣」と、ここにも「真田丸」風味が…。
雪月ではアイスクリームを作ったけれど、柳月はアイスキャンディーだったのだ。
「なつぞら」4話。視聴率好調3話は23%。おじいさん(草刈正雄)の言葉に泣いた
社史「柳月歴70年」、敷いてあるのは、北海道150年記念の風呂敷。北海道のアイテムを散らしたかわいいデザイン

第一週 あらすじ


どこまでも続く草原の丘で、北海道・十勝の風景を描く奥原なつ(広瀬すず)。昭和21 年初夏、なつ(粟野咲莉)は9 歳の時、亡き父の戦友だった柴田剛男(藤木直人)に引き取られて十勝にやってきた。妻・富士子(松嶋菜々子)は我が子としてなつを受け入れようする一方、富士子の父でガンコ者の泰樹(草刈正雄)は働き手にもならないとなつに冷たくあたる。しかし、子供ながらにここで生きると覚悟を決めたなつは、牛馬の世話や乳搾りを必死に手伝い、次第に泰樹の心を溶かしていく。


登場人物とキャスト 登場順


奥原なつ 広瀬すず 幼少期 粟野咲莉…主人公。戦争で父母を亡くす。
佐々岡信哉 工藤阿須加 幼少期 三谷麟太郎…空襲のとき、なつを助ける。
柴田剛男 藤木直人…柴田家の婿養子。なつの父の戦友。
なつを十勝に連れて来た。
        妻を「ふじこちゃん」と呼ぶときがある。
柴田富士子 松嶋菜々子…剛男の妻。開拓で苦労している。
柴田照男 幼少期 岡島遼太郎…柴田家長男。搾乳をさせてもらえず、薪割りを頑張っている。
柴田夕見子 幼少期 荒川梨杏…柴田家長女。勉強が好き。
柴田明美 幼少期 吉田萌果…柴田家次女。
柴田泰樹 草刈正雄…柴田家当主。頑固者。
奥原咲太郎 幼少期 渡邉蒼…なつの兄。
タップダンスが得意。
奥原千遥 幼少期 田中乃愛…なつの妹。

2回
焼け跡にいたおばあさん北林早苗…情にほだされなつたちに食べ物を分ける。演じているのは朝ドラ第1作め「娘と私」の娘・麻里の少女時代役を演じた。
戸村悠吉小林隆…柴田牧場で働いている。
戸村菊介音尾琢真…悠吉の息子。嫁募集中。

3回
小畑とよ 高畑淳子…帯広在住。泰樹の昔なじみ。口の減らない元気な人。
小畑雪之助 安田顕…とよの息子。菓子店・雪月の店主。菓子作りに情熱を注ぐ。
小畑妙子 仙道敦子…雪之助の妻。
小畑雪次郎 幼少期 吉成翔太郎…雪之助、妙子の長男。


脚本:大森寿美男
演出:木村隆文 田中正ほか
音楽:橋本由香利
キャスト:広瀬すず 松嶋菜々子 藤木直人 岡田将生 比嘉愛未 工藤阿須加 吉沢亮 安田顕 仙道敦子 音尾琢真 戸次重幸 山口智子 柄本佑 小林綾子 高畑淳子 草刈正雄ほか
語り:内村光良
主題歌:スピッツ「優しいあの子」
題字:刈谷仁美
タイトルバック:刈谷仁美  舘野仁美 藤野真里 秋山健太郎 今泉ひろみ 泉津井陽一
アニメーション時代考証:小田部羊一 
アニメーション監修:舘野仁美
アニメーション制作:ササユリ 東映アニメーション

制作統括:磯智明 福岡利武
「木俣冬)
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