平成で生まれた“YouTuber”という仕事、令和ではどのように活躍していくのか――。エキサイトニュースではこの度、UUUMに所属するクリエーターたちにインタビューを実施。人気YouTuberが誕生した経緯と、「好きなことで、生きていく」を追求する熱い想いに迫る。
第2回目のインタビューに応じてくれたのは、女性YouTuberのくまみき。「自分だけのカワイイを作ろう!」をテーマに、DIY、ビューティー、料理、着物などのライフスタイル動画をアップしている。2013年から動画投稿を始め、チャンネル登録者数は現在65万人以上。ついつい真似したくなる動画の内容はもちろん、動画から伝わってくる飾らない人柄と、落ち着いた心地良いトークで若い女性を中心に人気を集めている。
「自分が好きなものに素直に生きる」という彼女の生き方、その根源に迫った。
取材・文/ヒガキユウカ(プレスラボ) 撮影/稲澤朝博
編集/日野綾(エキサイトニュース)
スタイリスト/成田あやの
衣裳協力:CECILL McBEE
インナー\1900/ワンピース\7900/ピアス\1700/サンダル\6500(without tax)
発信しているのは「This is カワイイ」ではなく「How to カワイイ」
くまみきのルーツは、原宿のkawaii(カワイイ)カルチャーだ。学生時代からよく原宿を訪れ、当時世界的な盛り上がりを見せていたポップカルチャーや、そのファッションに触れてきた。くまみき自身もカルチャーやファッションを発信していくなかで、動画が持つ情報量の多さに可能性を感じたという。
「例えば日本語の文章だけで海外の人に伝えられることは限られていますが、動画ならビジュアルや声のトーン、表情から伝わることもあります。これなら自分も大好きなkawaiiカルチャーを世界に発信できると思いました」
初めて動画を投稿したのは、“YouTuber”という言葉が浸透していなかった2013年。やがて2014年頃から本格的に取り組み、現在も掲げる「自分だけのカワイイを作ろう!」という活動テーマが固まったのは2016年のことだ。
「YouTubeの広告に起用してもらったときに、自分の写真の横にメッセージを書く機会があって、そのときに考えた言葉でした。それまではずっとしっくりする言葉が見つからなかったんですが、初めて『これだ!』って思えたんです」
このテーマには、「カワイイ」という言葉に対する、くまみきのスタンスが込められている。
「カワイイって、いろんな意味があるじゃないですか。一般的に『可愛くなろう』と言うときって、『モテる女子になろう』という意味合いを指すことが多いですよね。私にとってのカワイイは、『自分の好きなもの、愛するもの、愛でたいもの』というような意味。だからこの活動テーマは、みんなが決めるカワイイとか、だれかが決めたカワイイじゃなくて、『自分の中のカワイイを愛して、大切にしていこうよ』というメッセージなんです。私がカワイイの作り方を動画で発信していくことで、動画を見た方が、それぞれにとってのカワイイを作ってくれたら嬉しいですね」
いわゆるYouTuberの動画というと、張りのある声でテンポよく喋り、バラエティ豊かな効果音やテロップを施した動画を想像する人もいるかもしれない。くまみきの動画は落ち着いたパステルな配色で、テロップはほとんどなく、一見するとシンプルな編集だ。凝るべきところに凝り、抜くべきを抜いた絶妙な情報量も、魅力のひとつだ。
「もともと海外の動画をたくさん見ていたから、影響を受けたのかもしれません。海外の動画はシンプルな編集が好まれていて、それに比べると日本のYouTuberさんの動画編集は、とても手が込んでいるのだと思います。私も面白く見せたいときはテロップや効果音を連続して入れたりしますが、おしゃれに見せたいときは必要最低限に抑えたりと、目的に応じて調整しています。動画全体のデザインについては、視聴者さんが『雑誌をめくる感覚で見られるように』と意識していますね」
動画投稿を始めてもう6年になるが、動画作りに対する模索は終わらないという。投稿頻度を高く保つ以上、1本の動画作りにかけられる時間は限られてくるため、ある日突然クオリティが上がるようなことはない。毎回毎回の動画で、少しずつ試行錯誤を重ねていく。YouTubeの世界にも流行や変化があり、そしてくまみき自身の成長も、動画表現を加速させている。
「なんとなく自分の“型”みたいなものはありますが、『これが正解』と思えたことはありません。バレンタインの時期にいつも特集の動画を出していて、強いていえばこれが自分にとって、特に新しい挑戦をしたくなるタイミングですね。毎回同じテーマでやっているからこそ、『去年の方がよかった』とは思われたくないし、そういう動画は出したくない。バレンタイン特集のタイミングで新しいことにチャレンジし、その年の方向性が定まってくる所はあります」
自分で着たい服は自分で作る 原点は小学生時代
「私にとってはミシンの音が1番のASMRです」と言い切るほど、服作りが好きなくまみき。初めて自分で着るための洋服を作ったのは、なんと小学生の頃だという。
「小学4〜5年生ぐらいの頃から、『お母さんが選んだ服じゃなく自分で選んだ服を着たい』と思うようになりました。6年生のときには、タレントの千秋さんへの憧れから、自分でTシャツをリメイクしてみたんです。百均でTシャツやフェルトを買って、それこそ今の動画でやってることと似たような形で。ただ、デザインがガイコツだったので、学校に着て行ったらみんなに『怖い!』って言われてしまいました(笑)」
当時の周囲の評判はともかく、今の動画活動にもつながるエピソードだ。このエピソードにはさらにもうひとつ、くまみきの創作意欲の原点が隠されていた。
「親にも『それ、本当に着て行くの?』と言われたぐらい不評だったんですけど、私としてはすごくこだわって作ったものなので、譲れませんでしたね。それ以降、自分で着たい服は自分で作るようになりました。まだ子供で、好きな洋服を買えるようなお金がなかったからというのもあるんですけど」
身に付けたいものは、自分で作る。それは、後にくまみきが動画を通して世界へと発信していくことと共通する部分がある。そんな子供時代を過ごした彼女は高校卒業後、文化服装学院に進学する。筋金入りの洋服好きが集まってくる名門校だ。
「服飾系の高校から入学してくる子もいるので、そうでない私はついていくのに必死でした。課題も多くて、3時間寝られたら良いぐらい。周りとの戦いというよりは、ハードな状況の中でどこまで作品にこだわれるかという、自分との戦いでしたね」
専門学校を卒業した後、就職はしなかった。
「好きな服を着ていたいし、好きなことしかしたくなくって。会社に就職したら、そういうことができなくなると思っていたんです。学生の頃から舞台の衣装製作を手伝ったり、ショーガールをしたりしていたんですが、そういう現場で“好きなことをして生きてる人たち”を間近で見ていたのが大きかったです」
たとえクリエイティブな業界であっても、就職すれば企業の中で生きていかなければならないのは同じ。しかし、学生時代に現場で出会った大人たちは、明らかに会社員ではないように見えた。「どうしたらあんな風に生きられるのだろう」。そんな疑問が起点となり、漠然と「くまみき」として生きていくことを志すようになっていった。
「当時は東京オリンピックが決まるかどうかの頃で、日本のkawaiiブームが世界からも注目されていました。私は派手な格好をしてよく原宿を歩き回っていたこともあって、メディア向けに東京を案内するコーディネーター的な仕事や番組出演など、ファッションやカルチャーについての仕事をもらえるようになっていたんです。そんな中で知人にYouTubeを勧められて、『プロフィール代わりになるかも』と思ったのが、動画投稿を始めたきっかけでした」
大切なのは“YouTubeという場を使って何がしたいのか”
「くまみきとして生きていく」という軸は、これからも変わらない。それを叶えるためならいつかYouTuberでなくなるときがくるのかと、あえて聞いてみた。
「この先もずっとYouTuberでいるのかはわかりません。また未知なる何かが出てきたとして、そっちの方が自分にとって良いものであれば、そちらに行くかもしれない。なぜなら私にとってYouTubeは、あくまで発信するためのツール。後から『YouTuber』と呼ばれるようになっただけなので、むしろ不思議な感覚なんですよね」
平成元年生まれのくまみきにとって、平成の30年間は、これまでの人生そのものだ。彼女の目に、平成はどんな時代として映っていたのだろうか。
平成はアナログとデジタルの両方を体験できる良い時代でしたよね。どちらの良さも知ることができて、かつデジタルが加速していった時代でした。令和は、状況に応じてそれらをチョイスしていく時代になると思います。YouTuberをやっている以上デジタルはなくてはならないものですが、一方で、ネットから離れたアナログの時間も、今の私にとってはすごく大切なんです」
「SNSで流れてくる情報に引っ張られるのではなく、リアルな自分が良いと思ったものを取り入れていきたい」と、凛とした姿勢で話すくまみき。彼女は近頃、“デジタルデトックス”の時間を大切にしているという。動画投稿がライフワークとなっている彼女にとって、YouTuberである自分とちょうど良い距離感を保つために大切な習慣だ。同時に、自分が本当に好きなものは何なのか、見つめ直す時間でもある。
「私にとって動画投稿は、仕事か趣味かわからないくらい身近なものになっています。普通に生活していても、ついつい『これ動画に使えるかも!』とか考えちゃう。それでも、その生活から離れたくなるときもあるんですよね。そういうときのために、自然に触れるとか、手書きでものを描くとか、アナログなことも大切にしています。最近は動画にしない趣味として、お茶を始めました。もし人に発信できるだけの知識がついてきたら動画にするのかもしれませんが、今は自分のリフレッシュのために、動画にしない趣味として“取っておいてる”感覚です」
最後に今後の目標を聞いたところ、間髪入れずにとても彼女らしい答えが返ってきた。
「目標ですか? 素直でいたいです! そのときそのときの自分の感情に素直に生き、自分が好きなことを発信していきたいと思います」
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— エキサイトニュース (@ExciteJapan) July 25, 2019
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